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元タカラジェンヌ 食と美のトビラ

元宝塚歌劇団 星組娘役・有沙 瞳さん「あずきへのこだわりはだれにも負けません」【食のトビラ】

元タカラジェンヌ 食と美のトビラ
華やかで気品ある夢のようなキラキラのステージ、宝塚歌劇。約3時間のステージを彩るタカラジェンヌたちは清く正しく美しく、そして心身ともにパワフル! その生き生きとした魅力の源である「食」と「美」のこだわりを、宝塚歌劇OGのかたがたに現役時代を振り返りながら教えていただく連載です。

退団して大切な仲間と離れても、思いやる心や思い出があるから強く生きていける

今回ご登場いただいたのは、元星組娘役の有沙瞳(ありさ・ひとみ)さん。8月27日に宝塚歌劇団を退団されて約2カ月。先日はこれからの所属先も発表されました。新たな道を一歩ずつ着実に歩みはじめている有沙さんですが、在団中の思い出や退団を決められたときのことをうかがいました。

「正直、宝塚歌劇団にこんなに長くいるとは思っていなかったんです(笑)。組替え(雪組から星組へ)を経験させていただき、たくさんのかた、たくさんの男役さんとごいっしょさせていただけて、自分一人では成し得えなかったいろいろなことをかなえさせていただき……本当にやりきったという思いでいっぱいでした

自分に自信がなく、だからこそみんなといっしょならできるということが心強かったけれど、これからは枠にとらわれないさまざまなことに挑戦していきたいと語る有沙さん。卒業後の初のステージは、同期の飛龍つかささんのディナーショー『Thankfull−愛を込めて−』でした。

 「同期の茉玲さや那と1期下の若草萌香ちゃんと出演させていただき、OG仲間として組を超えてかかわれたことがうれしかったです。新鮮だけど、懐かしくて。お客さまの反応を間近で受け取れたことも楽しかったですね。やっぱり生のふれあいっていいなぁと」

有沙さんといえば圧巻の歌声。特にお芝居の中での歌に心をつかまれた人もいたのではないでしょうか。

「たくさんの歌を経験させていただきました。大劇場の空間てすごく特別なんです。『ロミオとジュリエット』の乳母役のとき、その空間に初めて一人で立たせていただきました。一人で頑張らなきゃと思うとしんどいですけど、お客さまがともにいてくださると思うと心細くなくて。パワーをいただきました」

乳母をはじめ、さまざまな役で舞台に彩りと存在感を添えてくれた有沙さん。いちばん印象的だった役をうかがうと、「『今のお役がいちばん』と思って大切に演じてきたので、いちばんは決められないんですけれど……、逆にみなさんはどのお役がお好きなのかおききしてみたい」とのこと。(ぜひオレンジページ編集部のXなどに声を寄せてください!)

「うーん、雪組時代の『ドン・ジュアン』のエルヴィラ、星組に組替えしてからの『THE SCARLET PIMPERNEL』のマリーや新人公演のマルグリット、『阿弖流為 –ATERUI–』の佳奈、『ドクトル・ジバゴ』のラーラ、『龍の宮物語』の玉姫、『王家に捧ぐ歌』のアムネリス、ロミジュリの乳母も。なんだろうなー」

 悩みながらお答えいただいたのは、『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』のルイーズ(レナール夫人)。生き方のナチュラルさ、聡明で誠実な女性像に共感を覚えたそう。

「真っ黒な服を身につけながらも、赤いバラが象徴しているように内には赤いものを秘めている。紫門(ゆりや、花組副組長)さん演じるレナールさんの貞淑な妻として存在しながらも自分の思いにうそをつかない。私も一人の女性として重なる思いもありましたし、学年を重ねてこういう大人の女性を気負わず演じることができ、本当によかったなと思いました

『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』では、ご自身のタカラジェンヌ人生の終わりを考えた時期でもあり、さまざまな気持ちが交錯したそう。

「自分の中で卒業の意思を固めていたころで、礼(真琴、星組トップスター)さんともう一度だけ何かでかかわらせていただけたらと思っていたときにごいっしょできたので、すべての時間が貴重でした。ルイーズのあり方としても、悲恋で終わるだけじゃなく幸せも感じていたと思うんです。それは、離れていてもずっと心の中に(礼さん演じる)ジュリアンがいたからで、人は距離があっても愛に支えられるということを学びました。

そしてそれはたぶん、卒業にも重なるんです。大事な仲間と離れても、お互いに思いやる心や共有した思い出があるから強く生きていけるんだなと」

舞台の上で輝く、そんな有沙さんをつくる要素である「食」と「美」。1回目では「食」のこだわりについて深くお話をうかがいます。

自分の体と向き合うことで無理のない食生活を送れるように。体と相談して食べたいものを決めます


――まず、有沙さんにとって「食べること」とはどんなことを意味しますか?

体へのごほうびだと思っています。雪組の下級生時代は「節制しないと」と強く思っていて、「食べちゃダメだ」と食をおろそかにしていたことがあったんです。今は亡くなられてしまいましたが当時とてもお世話になった振付の羽山(紀代美)先生に「あなたのよさはエネルギーがあることなのに、いろんなことを節制していてエネルギーが飛んでいないからよさが出ていない」と言っていただいたことがきっかけで、食に対する意識がガラッと変わりました。「節制することがいいと思っていたのに、私がいる意味はそこにはないんだ」と。羽山先生に目覚めさせていただき、無理にガマンすることなく自分の体と食欲にきちんと向き合うようになったんです。だから、頑張ったときには『今日は何を食べたいかな?』。それがごほうび(笑)。

――体のことを考えつつ食も大事にするようになったんですね。

はい。公演期間の朝食は体に負担をかけにくく、でも体を目覚めさせてエネルギーになるようなもの。ごほうび食はおもに夜ですね。

朝はおなかがいっぱいになるとそちらに意識がいって集中できなくなってしまうので、きのこや海草類、サラダチキンが多いです。私だけかもしれないのですが、たんぱく質を摂るとおなかがすきにくい気がするんです。

――今日も、お気に入りの食材ということで、きのこと撮影させていただきました。

しめじもエリンギもまいたけもしいたけも、どんなきのこも好き! 秋の食材のイメージがありますがいつでも手に入るから、手軽なきのこソテーはよく作ります。おしょうゆとお砂糖で味つけして。素材を生かしたシンプルな味が好きなんです。味がしっかりしているケチャップやマヨネーズはそんなに大量に使わないかも。

――ご実家の料理も薄味なんですか?

実家の味はけっこうしっかりしてるんですよ。父はマヨネーズやソースが好きでよくかけるので、昔は私もそういうのが好きだったのですが、体と向き合うようになってから薄味派に。たまにジャンクなものを食べるときもありますよ、フライドポテトも好きなので(笑)。薄味派になって塩分が少なくなったせいか、むくまなくなりましたね。

今まで走りつづけていたものがコロナで止まってしまったとき、家族に連絡したいと思ったんです。家族はそれまで、あまり連絡が来ないことが頑張っている証拠だと思って遠くから見守ってくれていたんですけれど、コロナを機に密に連絡を取るようになりました。それで、親や親戚が手料理を作って送ってくれるようになりました。『宝塚おとめ』(生徒名鑑)の「好きな食べ物」の欄には「母と親戚の料理」って書いていたんですよ。

――やはり昔からめしあがっていたものはおいしいですよね。ちなみに、和食と洋食だとどちらがお好きですか?

断然和食派、だったんです。ところが『Le Rouge et le Noir ~赤と黒~』『1789 -バスティーユの恋人たち-』とフランスが舞台の作品が続いたせいか洋食にしか目がいかなくなってしまいまして(笑)。フランスのかたって朝カフェするじゃないですか。それまでは「朝から時間をつくってカフェで過ごすっておしゃれだな、すごいな」と思っていたのに、まんまとハマってしまいました。今はやっと外食ができるようになりましたし。クロワッサンとか、本当においしいですよね。カフェで優雅にモーニングする時間がすごく素敵。海外にいるような気分で、朝から幸せな気持ちになれます。自炊するなら和が多いんですけどね。

――自炊はよくされるんですか?

なかなか忙しくてきちんとはできず、炒めものくらいですね。自分のためにはなかなかしないですけど、コロナ前には男役さんに手作りのものをお渡しするのが好きでした。バレンタインにはチョコやお菓子を必ず。『龍の宮物語』のとき、相手役さんにお弁当をお渡ししたこともあります。「明日は一日じゅう大変なスケジュールだな」とか「お稽古も毎日大変でお疲れじゃないかな」と思って「めしあがってください」と。みなさんやさしいから、本当に食べてくださって。

バレンタインなどのラッピングも好きで、プレゼントの袋やシール、レターセットなどをすごく買っちゃうんです。「このかたにはこれがいいな」と気分でちゃんと選びたいから、気になったらとりあえず買っておく。だから家にはラッピング用品のストックがいっぱいあるんです(笑)。

――ごほうび食は夜が多いとのことで、どんなものが多いですか?

お肉とおすしです。エネルギーをチャージしたいときはやっぱり牛肉。翌日、本当に元気が出ます。脂が多いと胃に負担がかかるため、焼き肉ならタンが好きです。レモンでさっぱりとね。元気はあるけれどごほうびが欲しいときはおすしですね。回らないおすし屋さんは、何もしなくてもおいしい(笑)。「幸せ……♡」と思いながら、大好きなサーモンやイクラ、うにをいただきます。

――いいですねー! 有沙さんといえば歌、というイメージがありまして、例えば喉のためにめしあがっているものはあるんですか?

うーん、のどのためにははちみつかな。逆にかんきつ系はあまりとらないようにしています。果物大好きでかんきつ系も大好なのですが、酵素が私には強すぎるのかも。体がデトックスされすぎてうるおいがなくなるような気がして、公演中は控えめにしています。

のどあめでは天飛華音くん(星組男役)に教えてもらった、柴田飴本舗の「大根生姜飴」がすごくいいんです。東京では見かけなくて、関西ではいかりスーパーマーケットで売っています。シンプルな素材でできていて、おいしいんですよ。マヌカハニーののどあめも必需品ですが口の中が甘くなるので、開演前や集中したいときはさっぱり味のこちらが最高。

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大根生姜飴 210g入り 518円(税込み)/柴田飴本舗 オンラインショップ

――(ちょっと調べて)あ、東京だと新丸ビルにあるみたいですよ。

えー、やったー! ネットでは買ったことがあるのですが、東京でも買えるんですね。それはうれしいかも(笑)。

――テンション上がったつながりで、「このお店のこれを食べるとテンションが上がる」というのはありますか?

私、オムライスが大好きなんです。何を食べに行こうか迷ったときはとりあえずオムライス。薄焼き卵に包まれたクラシカルなタイプより、ふわトロの卵がのっているのが好みです。母が作ってくれる卵焼きが中が半熟ぎみで柔らかく、それが好きだからかも。

以前は「ポムの樹」に行っていましたが、今のお気に入りは東銀座の「YOU」。とってもおいしいです。いつもテイクアウトで、時間がたってもおいしい。チキンライスの上にふんわりしたオムレツがのっていて、端っこにケチャップが添えてあります。本当に好き。

――時間がたってもおいしさが変わらないのはうれしいですね。ほかに好きなものやよく食べるものがありましたら教えてください。

あずきと栗! あずきは、あんこのパックとか缶詰をそのまま食べるので、同期にドン引かれていました(笑)。

基本はつぶあん派なのですが、地元の「伊勢名物 赤福」はこしあん。それから、熱田神宮の近くで売っているきよめ餅総本家の「きよめぱん」。ふわふわの生地の中につぶあんが入っている、小ぶりのパン。これも本当においしいです。

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「しっとりふわふわでおいしい!  本当に『パンのようなおまんじゅう』です」(有沙さん)
きよめパン 594円(税込み)※2023年12月1日より価格変更予定/きよめ餅総本家 メール注文で全国発送可

あと、インスタにも載せたことのある、奈良の大神神社近くの白玉屋榮壽の「名物みむろ」というもなか。もなかって日にちがたつと皮が乾燥してパリパリになることがあるのですが、これはずっとおいしい味と食感。あんこが好きだから、ちゃんとあんこを感じられるバランスのものがよくて、こちらは小サイズより断然大サイズがおすすめです。小サイズだとちょっともなか生地の主張が強くなっちゃうんですよ。大サイズはしっかりあずきです(笑)。お店で買うとそのまま入っていますが、お取り寄せだと個包装になっていて安心。

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「大神神社は日本最古の神社といわれています。『みむろ』という名前は、大神神社の御神体山の三諸(みむろ)山にちなんだものなのだそう」(有沙さん)
名物みむろ最中(大型) 240円(税込み)/白玉屋榮壽 全国発送可

栗だと、アンジェリーナの「モンブラン」が好きです。生クリームがあまり得意でないので、プチサイズがちょうどいいバランスなんです。 

Miho’s Favorite

モンブランオリジナル 1,080円(税込み)/アンジェリーナ

――すごい。あん菓子のおすすめは幅広い場所の名物ですね。ご自身で探されるんですか?

お茶会などでも「あんこが好き」と言っているから、ファンのかたにいろいろな所のものをいただいて知ることもあります。もちろん、自らデパ地下をうろうろすることも。在団中の休日は、デパートであずきめぐりをするのがごほうびでした。

コロナ前の話ですが、「好き」と言っているとありがたいことにたくさんいただきまして。箱でいただくことが多く、自分でひとつ食べたらみんなに配ることがありました。卒業前に同期に「みほが退団したらおやつの楽しみがなくなる」と言われたことも(笑)。おいしいものは共有したいんです。

あずきのことになると目を輝かせてこだわりを語る有沙さん。「しゃべりすぎですよね」と言いつつ、笑いながら朗らかに話してくれました!

次回は有沙さんの「美」についてお話をうかがいます。お楽しみに!

有沙 瞳
ありさ・ひとみ/元宝塚歌劇団星組娘役。

2012年に98期生娘役として入団、組まわりを経て翌年雪組に配属。2014年『一夢庵風流記 前田慶次』で新人公演初ヒロイン後、『銀二貫』でバウホール公演初ヒロイン、『るろうに剣心』で初エトワールを経験した後に星組に組替え。2017年『阿弖流為―ATERUI―』で東上公演初ヒロインを務め、池田泉州銀行のイメージガールに就任。星組でも多くの公演で存在感を示し、2023年8月27日の『1789―バスティーユの恋人たち―』東京公演千秋楽にて退団。10月15日より長良プロダクション所属に。これからの活躍が期待される。
▶︎Instagram:@arisa_hitomi

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撮影/馬場わかな 柴田飴本舗提供 本人提供 アンジェリーナ提供 文/淡路裕子 協力/AWABEES