お客さんの悩みや気持ちに寄り添う本を、ちょっと世話焼きな書店員たちが心をこめて選書いたします。どうか素敵な本との出会いがありますように。
政治やお金、世界情勢。今の難しい社会課題を楽しく学べる本6選【本の目利きが選書】

今月のお客さまのご依頼は……
政治、お金、世界情勢、環境問題、ジェンダーバイアス……大人でもむずかしいテーマや社会課題を楽しく学べたり、興味を持つきっかけになったりする本、ありませんか?
今回の選書担当

俳優・エッセイスト 美村里江さん
俳優としてドラマ、映画、舞台等で幅広く活躍。無類の読書家でもあり、新聞や雑誌でのエッセイ・書評の寄稿や連載も多数。

ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん
旅の本屋「BOOK246」、選書集団「BACH」を経て独立。オフィスや病院等、書店にとどまらないさまざまな場所のブックディレクションを手がける。
紹介する本 一覧
俳優・エッセイスト 美村里江さん
ブックディレクター・good and son代表 山口博之さん
俳優・エッセイスト 美村里江さん
おすすめ3選
難解な本? いえいえまるで楽しい授業です!

哲学と宗教全史/
著:出口治明 ダイヤモンド社 3190円
知りたい! という思いはあっても、多様なエンタメあふるる昨今、娯楽慣れした脳はぜいたく者に……。未知に奮い立つ脳本来の能力を引き出す、「読みやすく楽しい本」をご紹介します。神社と寺がありつつ、ハロウィーンやクリスマスも楽しむ日本が私も大好きですが、世界情勢の根源は表面上経済面が中心に見えても、宗教観を省くことはできません。類似本のなかでも出口治明さんの本が抜群に楽しいのは、物事を何でもおもしろがる目線から成る博学に、ビジネスマンとしての幅広く堅実な体験が重なっているから。筆致も軽やかなので、話のうまい先生の笑って聴ける授業のようで、あっという間に読めます。出口さんの著書は全般的に読みやすく、おすすめです。
世界史を背骨に、古代ギリシャから現代まで3000 年に及ぶ哲学・宗教の歴史を体系的に語る教養書。哲学者・宗教家たちの思想や生きざまが仕事にも役立つ一冊。
大人こそ読みたい子どものマネー教養本

10 歳から知っておきたいお金の心得 大切なのは稼ぎ方・使い方・考え方/
監修:八木陽子 えほんの杜 1650円
どのジャンルでも、子ども向けにかみ砕いた本は推敲を重ねた良書が多いので、私はよく読みます。発売から6年目で、重版をつづけるこの本もすごいですよ! 5 人の先生による多面的な解説は、大人が読んでも「なるほど」と納得できることばかり。投資や暗号資産など現実路線だけでなく、「わらしべ長者」はどんなリスクをとったのか? 英国の「臆病税」といった昔のトンデモ税制等、楽しく理解が深まる工夫が詰まっています。私が特に好きなのはお金にまつわる名言集です。何より、未来を生きる子どもたちのために、好奇心をくすぐり、勇気のわいてくる内容なのがイチオシの理由ですね。大人が読んでも「もっと学んでみよう」と明るく思えますよ。
簡単に稼ぐ方法やお金の増やし方。生きるために必要なのは、そうしたお金の知識だけ? 子どもたちに本当に伝えたい、思いのこもったお金との接し方を学ぶ。
地道な調査から導いた「魚が減った」わけ

魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う 東大教授が世界に 示した衝撃のエビデンス /
著:山室真澄 つり人社 1100円
本を読んでショックを受ける、久々の体験となった一冊です。日本は人口減少傾向が続いていますが、世界的には増加傾向が顕著な今、食料危機も叫ばれて久しいですね。海に囲まれた日本は水産資源に恵まれておりますが、「魚が減った」ニュースは以前より多く見かけます。読んで字のごとく、額に汗する地道な現地調査の継続から導き出された内容は、釣りを趣味とする私のような人間だけでなく、多くの人が驚くはずです。問題の「ネオニコチノイド」は近年世界的に使用が規制された、殺虫剤にも使われている成分。日本でもNHKの番組で取り上げられましたが、なぜこの単語を表題に用いなかったのか……。国内外の殺虫剤事情から、謎解きをしてみてください。
宍道湖でウナギとワカサギの漁獲高が激減した、その意外な真実を著者が地道な現地調査によって明らかに。一つの事例を通じ、豊かな水辺を守りつづけるすべを問う。
ブックディレクター・good and son代表
山口博之さん
おすすめ3選
払うのは義務だから?あらためて「税」を学ぶ

税という社会の仕組み/
著:諸富 徹 ちくまプリマー新書 990円
参議院選挙をはじめ、今年もさまざまな選挙がありました。その際、私たちは何を基準に候補者を選ぶのでしょうか。直接政策につながるのは税金の使われ方だと思います。私たちが税金を払うのは、義務だからでしょうか。著者は「近代国家を生み出したのは、もともとは納税者の反乱だった」という視点から、納税を義務ではなく権利としてとらえるべきで、市民は税金の使い方について国に「是正を求める権利と責任」があると説きます。公平、公正な税のあり方を模索して導入された消費税や所得税と、それでも広がる現代の格差問題、環境税といった現代の課題に対応する税まで、筑摩書房が〈さいしょの新書〉と位置づける「ちくまプリマー新書」の一冊から学びはじめましょう。
なぜ「税を納めたくない」と思うのか? 税制の歴史や問題点、展望を見つめ、取り立てられるものではなく民主主義を実現するための税のしくみを考える。
一人一人の行動で変わる「食品ロス」のこと

私たちは何を捨てているのか——食品ロス、コロナ、気候変動/
著:井出留美 ちくま新書 1012円
今年はお米の価格の高騰で揺れた年ですが、この本は2024 年夏、スーパーからお米が消えた話題から始まります。食の自給率が低い日本にあって、ほぼ100%の自給率を誇るお米に困るという事態はいったい何だったのか。著者は背景に食品ロス、フードウェイスト問題があることを警告します。生ゴミや生産過剰による廃棄と焼却処理は、環境やエネルギー負荷の問題だけでなく、そこにかかる費用が莫大です。作りすぎない、無駄にしないというだけでその税金は教育や福祉、医療にも回すことができるわけです。食のことは一人一人が少しずつでも実行すればよい影響を及ぼすことができる課題でもあります。みんなで毎日を少しずつ変えていくために、まずこの一冊を。
気候変動やコロナ禍など、地球規模の事件とつながる食品ロス問題。持続「不可能」な食料システムを明らかにしながら、生活に直結するこの問題を考える。
古い価値観にとらわれず「その人」と向き合う

じゃあ、あんたが作ってみろよ 既刊1~4 巻/
著:谷口菜津子 ぶんか社 各880 円
恵まれた家に生まれ、イケメンとしてモテつづけてきた勝男と、同性の友達よりも男へのモテに全振りしてきた鮎美のカップル。「料理は女がするもの」という、古くさすぎる価値観に生きる勝男の理想を全うしてきた鮎美は、ある出会いを通して自分を押し殺してきたことに気づき、勝男からのプロポーズを断って別れます。既存の規範やイメージに縛られてきた勝男は、鮎美がやってきてくれた料理を自分でやってみることで、これまでの一方的で自分勝手な考えを改めていきます。他者に対して「普通はこうだ」というフィルターを通さず、それぞれの人、個性を尊重すること。多くの社会問題の解決は、きっとこの基本から始まるのだと思います。
社会人カップルの勝男と鮎美。結婚を考えていた勝男だったが、突然転機が訪れて――。2025年秋、TBS火曜ドラマとして実写化。
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イラスト/河原奈苗

















