50・60代でもまだ間に合う!『老後に貰える年金』を増やす方法/お金のプロ直伝
老後の暮らしを支えてくれる「年金」。そんな大事なお金を、少しでも増やすことができたら心強いですよね。
じつは、ちょっとした工夫で受け取れる額を増やすことができます。今回は、国民年金基金連合会理事・井戸美枝さんに、押さえておきたい3つのポイントを伺いました。
① 長く働く
=厚生年金の加入期間を長くする
| 定年後に働く年数と増える年金額 早見表 | ||
|---|---|---|
| 定年後の年収 | 働く年数と増える年金額(年額) | |
| 5年 | 10年 | |
| 150万円 | 4万1100円アップ | 8万2200円アップ |
| 200万円 | 5万5900円アップ | 11万1800円アップ |
| 250万円 | 6万9100円アップ | 13万8100円アップ |
| 300万円 | 8万2200円アップ | 16万4400円アップ |
| 350万円 | 9万5400円アップ | 19万700円アップ |
※ 60歳以降、会社員として働き、厚生年金保険に加入した場合
国民年金は480カ月(40年)加入で満額支払われるというルールがありますが、厚生年金は、満額という考え方がなく、加入期間が長いほど年金額が増えます。厚生年金は、基礎年金を受給している人でも企業などに勤めていれば、70 歳まで加入でき、将来の年金額を増やすことができます。
しかも65歳以降も働く人には、 年 1 回年金額の改定が行われ、保険料を納めた分だけ厚生年金額が増えるしくみ=「在職定時改定」が 導入されています。収入が低くても厚生年金に加入して長く働けば、その分、 確実に年金額は増やせるというわけです。
パートの年金はどう増やす?
パートやアルバイトなど、配偶者の扶養内で働いている人は、将来受け取れる年金は基礎年金(国民年金)のみに。できるかぎり厚生年金に加入することで将来の年金額が増えます。
② 収入を増やす
=在職中の収入を増やす

厚生年金は在職中の収入に応じて年金額が上がります( 上限あり)。資格を取得する、スキルを磨く、役職に就く、転職することも視野に入れて、現役時代の収入を増やしておくことが、結果、年金を増やすことにもつながります。
たとえば、40歳で年収が350万円から400万円に上がり、そのまま60歳まで働いた場合、65歳からの受給額は年間約5万2600円増に。100歳まで受給した場合は約184万円の差になります。
③ 繰り下げ受給をする
=年金の受給開始年齢を遅くする
公的年金の受給開始年齢は、原則65歳からですが、65歳より前に年金をもらいはじめることを「繰り上げ受給」、65歳より後にもらいはじめることを「繰り下げ受給」といいます。繰り上げ受給は年金が減額され、繰り下げ受給は年金が増額されるのがルール。
年金受給のタイミングは60歳から75歳の間で月単位で選択でき、65歳からの場合、1カ月繰り下げるごとに受給額は0.7%アップ。75歳まで繰り下げることで最大84%まで増えます。増額した年金は一生涯続く=終身なので、長い目で見ればかなりお得です。

繰り下げをする場合、その分受給期間が短くなる点には注意が必要。 70歳まで繰り下げた場合、総額で得になるのは81歳11カ月以降、 75歳まで繰り下げた場合は86歳11カ月です(税金・社会保険料を除く)。
老後の家計を支えるお金は、ほんの少しでも多いと心にゆとりが生まれます。今日の3つのポイントを参考に、自分に合った備えを少しずつ整えていきましょう。
※2025年3月10日時点の情報です。
教えてくれたのは……井戸美枝さん

ファイナンシャルプランナー(CFP 認定者)、社会保険労務士。前社会保障審議会企業年金・個人年金部会委員。国民年金基金連合会理事。近著は『 一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版 』(日経 BP)、『フリーランス大全第二版 』(エクスナレッジ)。
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監修/井戸美枝 イラスト/沼田光太郎 原文/太田順子 文/池田なるみ









