――また、花村さんは今作の主題歌「ピュア・イマジネーション」の歌唱も担当。楽曲を聴いた印象は?花村「曲の始まりが、すごくウィスパーな歌声でスタートするんですよ。ウォンカを演じるティモシーさんが本当に素敵で、表情と声のニュアンスと口の形が印象的だったので、そのあたりを再現できるようにしたいな、と。ただ、今回は日本語で歌うため、母音を意識してきれいに歌うことが重要だなと思いつつ、まずは幻想的かつ音楽の中に哀愁を感じる『ピュア・イマジネーション』という楽曲にひたることを大切にしながら歌いました」
――チッチさんは花村さんが歌う「ピュア・イマジネーション」を聴いてどう感じましたか?チッチ「吹き替えのとき、花村さんの声を聴きながらだったのですが、心に話しかけるように歌ってらっしゃったので、ちょっと泣いちゃったんですよ。『このあとしゃべるんだから泣いちゃダメだ』と思って、なんとか涙はこらえたんですけど」
――それくらい心に響く歌声だった、と。チッチ「最初、話しかけるようにスーッと入ってきたあとに、ワーッてなっていくの、わかりますか?(笑) 世界が一変したようにきらめく瞬間が、音楽の中にも表れている気がするというか。私もずっと夢をみてきた少女で、夢みることをあきらめずに行った先に、世界を変えられる瞬間が来るなと思うことが多かったので、この曲の歌詞も多くの人に届くんじゃないかなと思います。花村さんの歌声も重なって、〈人生の糧〉になるような楽曲です」
――劇中ではチッチさんも歌声を披露しています。どのようなことを心がけて歌いましたか?チッチ「アーティストとしてではなく、役として歌うにあたり、私自身クセがある歌い方をするときがあるので、そのクセをなくしてどれだけまっすぐ届けられるかを大事にしていました。また、歌っているときと話しているときの言葉の境目がないように歌いたいなと思い、話してるなかで歌が始まるというか、音楽の世界で話すイメージで歌いました」
――このほかの楽曲も含め本編には13もの楽曲が登場し、楽しませてくれますね。花村「ミュージカル映画ではないのですが、音楽によってこの作品をより持ち上げてもらっているというか。大事なところで流れる音楽がすごく素敵で、そういった歌を自分が歌えるのが幸せだなと思いました。まさに〈ファンタジーの魔法〉を作り上げているような音楽なので、むちゃくちゃ楽しいと思います」
チッチ「音楽って映画を見たあともずっと生きつづけてて。私も小さいときに見た映画で、この曲好き! と思った音楽は、大人になっても忘れられなかったりします。この映画に出てくる楽曲は本当に素敵で、口ずさみたくなるものもたくさんあります。それに、登場人物のキャラクターが、おもしろい人、かわいい人、楽しい人、カッコいい人と、いろんな人がいるなかで、それぞれのキャラクターが立っている歌だったりするので、ぜひ楽しみにしてほしいと思います」
――さらに、なんといっても劇中に登場するウォンカが作るチョコレートのおいしそうなこと!花村「本当においしそうで、吹き替えをしてるときから食べたくなりました」
――そんなチョコレートをきっかけに、「オレンジページnet」らしく食の話題にも触れさせていただきたいのですが……。チッチ「花村さん、さっきちょうどチョコレート作ってほしいって言ってたじゃないですか。オレンジページさんで再現してもらうとか」
花村「ぜひ! ウォンカが作った空を飛べるチョコレートみたく、中にちっちゃなアブを入れてもらって」
チッチ「それじゃなくて、普通においしいチョコレートがいいです(笑)」
――アブは入ってないほうがいいですよね(笑)。チョコレートじゃなくていいのですが、お二人がこれまで食べたもののなかで、ウォンカが作るチョコレートのように忘れられないくらい記憶に残っている食べ物があったら教えてください。花村「なんだろう……いっぱいありますね。いっぱいあるんですけど、そのなかで、どこのものかは忘れちゃったんですけど、すっごいおいしいチョコレートがあって」
チッチ「えっ! いちばん大事なところ!(笑)」
花村「どこのだったかなぁ」
――せめてヒントをください(笑)。花村「円盤形で、すごく薄い、パリッパリのチョコレート。百貨店とかで売ってるんですけど。それはいつも冷蔵庫に置いてあって、なくなったら買います。でも、名前がわからない……(苦笑)」
――常備するくらい好きなチョコレートなんですね。チッチさんは何かありますか?チッチ「常備してるものでいうと、鳩サブレー。これは常に家にあります」
花村「え〜、珍しめ!」
チッチ「まわりの人からもよく『そこ!?』って言われるくらい珍しめなんですけど(笑)、差し入れとかお土産とかでいちばん気持ちがアガるのが鳩サブレーなんですよ。もう、大好きで。だから、自分で44枚入りの缶を買って常備してるんです」
花村「バタークッキーみたいな感じですよね?」
チッチ「そうです。世の中にふたつとない味がします。似たような味を探してみるんですけど、同じ味がないんですよ」
花村「言われてみれば確かに。ビスケットとクッキーの間のような……」
チッチ「そうなんです。絶妙にしっとりとパサパサの間なんですよ。だから、鳩サブレーしかないんです」
――花村さんはチョコレート、チッチさんは鳩サブレーを常備されてるんですね。花村「チョコと鳩サブレー、いっしょに食べてもおいしそう」
チッチ「上にのせて」
花村「チョコ鳩サブレーですね(笑)」
――おいしいものは人を幸せな気分にしてくれますよね。そういう意味でも、今作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は見る人に幸せを届ける作品だと思います。お二人から、ぜひ見どころを教えていただけますか。花村「ストレートなんですけど、本当におもしろいです! もちろん練習のために何度も見たのですが、そのたびに心が動かされるというか。最初から最後まで夢がたくさん詰まっていて、大人になった今でも夢みることって大事なんだな、一歩踏み出すことが大事なんだなと思える作品です。小さい子はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんも夢をみたくなる作品なので、字幕や吹き替えで1回と言わず、2回、3回と、ぜひ見てほしいなと思います」
チッチ「視覚と聴覚だけじゃなくて、〈味覚と嗅覚〉もそそられる映画です。『ウォンカとチョコレート工場』の世界に入り込んで、私もその世界にいるんじゃないかって思うワクワク感と、テスト版を見て私も涙を流してしまいました。いろいろな感情をくれる作品で、家族はもちろん、恋人や友達と観てもいいのかなって思いますし、絆の見える物語なので、年齢関係なくたくさんの人に見てもらえたらうれしいです」
――初めての声優挑戦で大役を果たしたお二人。最後に、今後やってみたい役など新たな目標や夢があったら教えてください。花村「アニメーション作品をやってみたいですね。アニメーションって、特に新作とかだと、演者が自ら作り上げる部分も大きいと思うんですよ。もちろん今回のような実写の吹き替えや海外作品も最高ですが、日本の新作アニメとかもやってみたいなって思いました」
チッチ「私も、昔からアニメやゲームが大好きだったので、二次元のキャラクターに自分の声が乗るっていうのは夢ですね。また、今回の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』で、ヌードルという役を通して歌うことも楽しいんだってことを知ったので、だれかになりきりながら歌うっていうのもまたやってみたいと思います」
花村想太「Da-iCE」のボーカルのほか、「Natural Lag」「UPSTART」のメンバーとしても活動。2020年よりミュージカルへも活動の場を広げ、2022年には第77回文化庁芸術祭新人賞を受賞。
セントチヒロ・チッチ楽器を持たないパンクバンド「BiSH」のメンバーとして2023年6月まで活動。現在は、ソロプロジェクト「CENT」としての歌手活動や、「加藤千尋」名義で俳優活動も開始。
ウォンカとチョコレート工場のはじまり>>公式サイトはこちら2023年12月8日(金)より公開
監督・脚本:ポール・キング
製作:デイビッド・ヘイマン
原作:ロアルド・ダール
出演:ティモシー・シャラメ、ヒュー・グラント、オリヴィア・コールマン、サリー・ホーキンス、ローワン・アトキンソン
完全吹替版 声優:花村想太(Da-iCE) セントチヒロ・チッチ 松平健 長田庄平(チョコレートプラネット)松尾駿(チョコレートプラネット)
配給:ワーナー・ブラザース映画