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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.134】『夜空に星のあるように』

2021.12.24

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。今日はクリスマスイブ。みなさん、何かごちそうを作る予定でしょうか? おうちで温かいものが食べられるなら、それだけですごく幸せなことなのかもしれません。この2年は言うまでもなく世界中が大変な状況になっていて、ますます格差は広がるばかり。SDGsという言葉がようやく浸透してきましたが、50年以上前から一貫して警鐘を鳴らし続けてきた映画監督がいます。それはイギリスのケン・ローチ監督。カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを獲得した『わたしはダニエル・ブレイク』(2016)や『麦の穂を揺らす風』(2006)を見たことがある方もいるかもしれません。そんなケン・ローチ監督の長編映画デビュー作が、長い時間を経てスクリーンに。映画技法やスタイルの差はあるものの、弱き者に対するひたすら優しいまなざしは当時も今も変わりません。色あせるどころか、この時代に見るからこその価値があります。


ギターの旋律とラブソング。ソファを挟んで隣り合うカップル。その時間の尊さも知らず、りんごをほおばるのに夢中の坊や。メインビジュアルにもなってるこのシーンは、映画の中で最も美しく、その後の展開を思うと最も切ないシーンだと思いました。
子だくさんの母親はパプ好きで、父はとび職で無類の女好き……自らの生まれをそんな風に語るジョイ(キャロル・ホワイト)。映画はいきなり彼女の生々しい出産シーンで始まります。生まれたての息子ジョニーを連れて家に帰るも、夫のトム(ジョン・ビンドン)は見舞いはおろか妻の体調を気にかけもせず、この頃にはなかったかもしれないDVやモラハラという言葉を絵にしたような男。おまけに泥棒を生業としているトムとの成り行きによる結婚を、ジョイは早くも後悔しています。泥棒業で生活が成り立つことにびっくりしますが、ここは現代の感覚でジャッジしてはいけないのかもしれませんね。
転機となるのは、トムが友人たちと企てた強盗計画が失敗し、逮捕されてしまうこと。その間に、泥棒仲間の一人であるデイヴ(テレンス・スタンプ)とジョイは徐々に心を通わせるように。前述の幸せなシーンは、ジョイとデイヴ、そしてジョニーが過ごした穏やかな日々の象徴なのです。そのデイヴもある日、宝石強盗の首謀者として逮捕されてしまい……。


意外なのは、ジョイが自分の人生や状況をある程度客観的にとらえていること。トムと正式に離婚してデイヴと一緒になりたいものの、彼自身には長い服役が待っています。ならば、その間に心も金銭的にも自分を満たしてくれる男を探さなければならない。女友だちとカフェのテラスに座りながら道行く男を品定めする姿に、「愛する彼を待つ健気な女性」というこちらの勝手なイメージが見事に裏切られます。今必要なことを考える切り替えの早さと、それとは少しも矛盾しない恋人への思い。早くデイヴとジョニーと3人で暮らしたいと涙を流す姿も本物で、こういう人間くささがこのキャラクターの魅力なんですよね。


男たちに翻弄される姿を同情的に描くのでもなく、逆にその割り切りのよさを先進的とたたえるでもなく、ありのままの彼女の姿をカメラはとらえます。ジョイが自分のことを独白で語るシーンがいくつかあり、監督のニュートラルな視点を伝えるためにちょっとドキュメンタリー風にしているんでしょうね。
例えばジョイが息子を連れて行った公園のベンチで隣り合うマダムたちや、海岸のシーンで遊ぶ子どもたちなど、なんてことない街の人々の姿も今作の魅力。名もなき普通の人々を題材にしてきた監督の原点を、確かに感じます。

夜空に星のあるように』新宿武蔵野館にて絶賛公開中、ほか全国順次公開
©1967 STUDIOCANAL FILMS LTD.

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

文/編集部・小松正和

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