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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.4】「ある少年の告白」

2019.04.25

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
明日からいよいよGWですね~。これだけ休みが長いと遠出をしたくなりますが、ボーッとしてたら安い航空券などが無くなってしまったので、東京と実家でおとなしく過ごします。
『オレンジページ』を見て何か美味しいもの作ろう……。



長い連休、映画でも観ようかな~と思っている方におすすめの作品がこれ。
『ある少年の告白』は、アメリカの田舎町で、両親によって同性愛の「矯正セラピー」に参加させられた少年のストーリー。
原作者が実際に体験し、回想録として出版した本を基にした実話です。
アメリカは州によって法律が異なり、現在も36の州でこの矯正治療が合法だそう。
これだけ聞くと「重そう」「自分には関係ない」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、
家族を含む人間関係の大事な部分を教えてくれる普遍的な映画だなと思い、紹介します。

【大切なのは理解することではなく、受け入れること】


主人公の少年は牧師の父を持ち、敬虔なキリスト教一家で育ちます。
ある出来事がきっかけで、自分には同性愛の性質があることを両親に告白。
このお父さんは「福音派」というキリスト教の中でも特に原理主義的な宗派に属しているので、同性愛は絶対NGです。矯正セラピーに参加させるのも父親の決断によるもの。母親はといえば、とても優しい人なのですが、キリスト教は基本的に父権主義であるうえに夫が牧師ですから、この重大な家族の決定には口をはさみません。


どうやって矯正するんだろう?と思いながら映画を観ましたが、なんのこっちゃない、軍隊とか自己啓発セミナーのような感じです。体力向上のためにトレーニングしたり、自分の同性愛体験=罪を皆の前で語る時間があったり。この写真のように男性の参加者が一列に並ばされ、足を開いて腰に手を当てるポーズを取らされる訓練?があって、女性の参加者が指名されて「誰が男らしく見えるか、順位をつけろ」と指示されます。男らしくすれば(男性の場合)同性愛が治るという、恐ろしく偏った見解なんですね。これ、僕が参加したらビリだな~アハハなんて思いながら観ていましたが、こういう施設がアメリカの半分以上の州で未だに合法なんだとしたら、笑いごとではないですね。


少年は自分自身も同性愛という性的志向に戸惑っていたのでしょう、セラピーへの参加に特別強い拒否感は示さず、割と素直に入所します。が、日を追うごとに、人の尊厳を奪うようなプログラムの内容に違和感を覚え、ついに施設から飛び出すことに。ここで活躍するのがお母さんです。そうでないと、わざわざニコール・キッドマンを起用する意味がありません(笑)。
プログラムへの参加に疑問を持ちつつも、夫の決定に口をはさむことができなかった彼女が、ものすごい気迫で息子を守ります。ママ、あなたやるじゃない! ここはセリフも含めてすごく良いシーンでした。

さて、肝心のお父さんとの関係ですが、これは実話ベースなのでそんなに簡単に話はまとまりません。
この主人公の方はすごいなと思いましたが、どうせ受け入れられないからと逃げることはせずに、お父さんに正面から向き合い続けます。長い年月をかけた末の父親の回答には希望があり、本当に良かったと思わせてくれるラストシーンでした。しかもこれは実話なのですから。


この映画はキリスト教色が強いので、「日本にはこんなひどい施設ないし……」と少し他人事に思ってしまうかもしれません。ですが日本は逆に、矯正や目に見える排除がない代わりに徹底的に無視している面があるのかなと感じます。日本だと、おっさんずラブになってしまう(好きですけどね、おっさんずラブ)。この映画の原題は『BOY ERASED=消された少年』で、矯正セラピーで過去や罪を消されるとか色々な意味がかかっているとは思いますが、その存在自体がないことにされているのもまた、ERASEDなのではないでしょうか。

ここまで書いてなんですが、こういう映画が難しいなと思うのは、自分に関係ないと思う人はなかなか観ないのではないかという点です。自分自身がLGBTである、家族や友人、知り合いにLGBTの人がいる、社会問題全般への意識が高い、もしくは映画好きなのでジャンルを問わず観るetc. こういう人たちはそもそもこの問題に対してある程度の知識があると思うので、ここに該当しない人たちもぜひ観てほしいなと思うのです。
主演は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』で有名になったルーカス・ヘッジ、父親はラッセル・クロウ、母親は前述の通りニコール・キッドマンと豪華な顔ぶれ(有名な若手映画監督も思わぬ役で出ています!)。
過去のエピソードを効果的にはさむ流れにムダがなく、あっという間に映画の世界に引き込まれてしまいました。

LGBTを扱った映画は最近多いですが、正直雰囲気だけのものも多いなと感じます。
この作品は辛いテーマを扱いながらも、受け入れることの大切さというポジティブなメッセージをきちんと伝えている
1人でももちろんいいですが、誰かと一緒に観てほしいなと思う映画でした。


「ある少年の告白」 TOHOシネマズシャンテ ほか全国公開中
©2018 UNERASED FILM, INC.


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回5/3(金)は「パパは奮闘中!」です。お楽しみに!
 

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