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話題沸騰ドラマ「晩酌の流儀」の裏側がすごい!こだわり〈フード〉ができるまで

晩酌の流儀2

一日の終わりのお酒をいかにおいしく飲めるか。

最高の晩酌のために行動する美幸の日常を描く「晩酌の流儀」。
昨年シーズン1が放送され、話題を呼んだドラマが今夏待望のシーズン2に突入!
登場するレシピをまねしてSNSに投稿する視聴者が続出し、料理好きの間でも話題沸騰に。

オレンジページも作品の世界観と美幸が作るおつまみに大注目!
ドラマの生みの親の松本拓さん(企画・監督・プロデューサー)と、食のシーンを支える藤代太一さん(フードコーディネーター)にメイキングのお話をうかがってきました。
気になるドラマの舞台裏、前後編でたっぷりとお届けします。

37歳、一人暮らし。栗山千明さん演じる主人公・伊澤美幸、一日の行動は、すべておいしい晩酌のためにある。
37歳、一人暮らし。栗山千明さん演じる主人公・伊澤美幸、一日の行動は、すべておいしい晩酌のためにある。

晩酌のためのグラスを冷蔵庫に入れることから始まる、主人公・伊澤美幸の毎日。
一日のがんばりのすべては、おいしい晩酌のため……。
ちょっぴり過剰にお酒を愛し、最高の晩酌をひたすら追求していく一人の女性の物語です。

美幸役は栗山千明さん。
現在、「晩酌の流儀2」は毎週金曜深夜24時52分~テレビ東京系で放送中です。
「ネットもテレ東」・TVerで見逃し配信、U-NEXT、Amazon Prime Videoにて各話放送後から順次見放題配信もしています。

食にこだわる二人がタッグを組んだ最強の晩酌ドラマ

激辛料理店が登場するドラマ「ゲキカラドウ」に続き、タッグを組んだ松本さんと藤代さん。
松本さんは藤代さんを「太一」と呼ぶ仲のよさです。
「晩酌の流儀」シリーズでは、抜群のチームワークで、家飲みだからこその買い物、調理、完成までの工程をスタイリッシュに見せてくれます。
インタビュー前編では「晩酌の流儀」シリーズを通しての思いや誕生秘話をお聞きしました!

最高のフードシーンにこだわるお二人。監督・松本さん(左)とフードコーディネーター藤代さん(右)
最高のフードシーンにこだわるお二人。監督・松本さん(左)とフードコーディネーター藤代さん(右)。

ドンピシャなこのタイトルは、どうやって決まったんでしょうか?

松本:けっこう悩みましたね(笑)。「一日の最後に飲むお酒をどうしたら最高においしく飲めるのか、ということにひたすらこだわる」という物語に対してコレというタイトルがなかなか出てこなかったです。企画段階ではひとまず「最高の一杯」という仮タイトルで進めていました。次に「本気酒」「私流本気酒」になり……。

藤代:たしかに、おいしい一杯のための美幸の〈本気〉は相当すごい(笑)。

松本:そう。ドラマの核は見えていて、あとはピンと来るタイトルが欲しかったんだよね。制作の準備を進める中、いろいろなお酒好きなかたがたとの会話から〈晩酌〉って言葉にたどりついて。このワード、いいな、って。

藤代:字面はかたいけど、使うと親近感がわく言葉ですよね。

松本:〈晩酌〉も〈流儀〉も、一見〈おっさんくさい〉イメージ(笑)。女性主人公のドラマだからこそ、このギャップがいい味になる気がしたんだよね。

藤代:まさに! 主演が栗山千明さんでこのタイトル。〈流儀〉が凛としたイメージに寄って、一度ドラマを見ると「まさに!」って納得しちゃう……。

俳優でもある藤代さん。お二人が組まれたいきさつは?

藤代:僕はもともと料理の専門学校出身で、最初はフレンチレストランに就職したんです。俳優になりたいという夢はあったんですが、「食っていけるわけないよな」って。料理人として働きだしてから、やっぱり演技の道をあきらめきれなくて両方やっていくような感じになったんですよね。料理系のドラマに出演したいなぁ、という気持ちで、機会があると出演作の監督やプロデューサーに手料理をふるまったりしていました。

松本:僕が太一の料理の腕を知ったのは「ゲキカラドウ」の撮影のときでした。

藤代:撮影現場で松本さんに「あれ? 俳優じゃないの」って驚かれて(笑)。料理の試作に難航してるんだけど……って、監督の一人だった柴田啓佑さんに呼ばれて、僕が急遽助っ人に入ったんですよね。

松本:ドラマにおけるフードコーディネーターって料理ができるだけじゃなくて、発想や機動力が大事。どういう方向性のドラマなのか把握してくれていることとか、現場でスタッフとスムーズにやりとりができるとか。その点、太一は現場にいてくれるとすごく助かる存在なんです。

藤代:俳優として出演するのと同じくらいフードコーディネーターの仕事にはやりがいを感じますし、料理をどう撮ってもらえるかでドラマ全体の仕上がりが変わると知ったのも発見でした。

松本カメラのアングルひとつで印象が変わるよね。

藤代:本当にそう。これは上から撮ってほしいとか、こっちからねらってほしいとか。たとえばメニューがいわし明太だったら、腹側に入れた明太子が見えるように撮ってもらわないと、単なるいわしでしかない(笑)。「晩酌の流儀」では、そのあたりも監督を通して、カメラさんにきちんとお伝えするようにしています。

「晩酌の流儀2」第11話に登場の「いわし明太」。皮の焦げ目も、明太の詰め具合もおいしそう!
「晩酌の流儀2」第11話に登場の「いわし明太」。皮の焦げ目も、明太子の詰まりぐあいもおいしそう!

松本:最終ジャッジは僕がしますが、彼の時点でフードの完成度95%は到達していて、あと5%をどうするかディスカッションして決めていく感じ。「晩酌の流儀」の撮影は、フードスタッフのレベルの高さを常に実感させてもらえる現場でしたね。何がNGか、そこをわかってくれているやりやすさ、というか。

藤代:松本さんにダメ出しもらうときは「あ~、やっぱりここ! もう少し直したいよね」ってとこなんですよね(笑)
–{各話のストーリー展開もメニュー次第⁉}–

町の不動産屋に勤務する美幸。同僚やお客さんとのエピソードが晩酌メニューにつながる展開も楽しいですが、人間ドラマとメニュー、どちらが先に決まるんでしょうか?

松本さん「おつまみの構成が見えると、物語が動きだすんです。」
松本さん「おつまみの構成が見えると、物語が動きだすんです」

松本8割方料理が先ですね。最初にシーズン全話のベースメニューを考え、そこからストーリーを組み立てる感じです。家でにぎりずしをやる回にしたい、となったら、刺し身って1切れじゃ売っていないしなぁ、と。じゃあだれかとシェアすればいい。そこで、ルームシェアしたいお客さんが登場する物語にしよう、という流れです。

藤代:勤務先が不動産屋さんっていう設定は、すごくいいなって思いますね。お客さんが毎回ゲスト出演するのもそうだし、シーズン2で美幸が住んだ部屋もそう。家飲みを追求する美幸はキッチンにこだわるけど、こんないいアイランドキッチンの部屋なんて普通は手が届かない。もしほかの職業の人だったらちょっと無理があるけど、物件探しのプロだから見つけられた、とつじつまが合う。

松本:展開上の都合もあるけど、都会の高層ビルに勤務する主人公にしたくなかったんだよね。晩酌って生活感とか、人と人との距離が近い〈町〉の感じが大事。町の不動産屋さんって、閉じられた空間じゃなく、だれもがふらっと入れる職場なんです。そこがドラマの世界観にマッチするな、と思ったから。 

藤代さん「日常的な食材をいかにおいしいつまみにするか。そこがレシピの肝ですね。」
藤代さん「日常的な食材をいかにおいしいつまみにするか。そこがレシピの肝ですね」

藤代:松本さんが大事にしている生活感、って登場する料理にも共通しますよね。「晩酌の流儀2」では、すしとかパエリアとかごちそうっぽいメニューが出てくるけど、ギリ家で作れる範囲で仕上げています。全体を通して言えることだけど、調味料も本格的すぎるものは使わないし、基本、美幸はスーパーで食材が買えるものしか作らないんですよね。

松本手軽に買えるもので作れる料理、っていうのは、このドラマのこだわりのひとつかな。今後3、4……とシーズンを続けていくことができたら、八百屋さん、魚屋さん、コンビニなど、食べ物にかかわる町のスポットをもっと描いていくのもいいな、と思っています。

「晩酌の流儀2」では、美幸が新たな部屋に引っ越したところから物語がスタートするのもおもしろいですね。

キッチンも、立地も、新居の条件は「最高の晩酌が実現できるか」。
キッチンも、立地も、新居の条件は「最高の晩酌が実現できるか」。

松本:引っ越しの理由が「晩酌の高みを求めて」ってちょっと過剰でしょう? キッチンだけじゃなくて、坂道を歩く運動量とかまで計算して(笑)。ドラマの登場人物って「いるいる!」っていう人でも「いねぇよ!」っていう人でもダメで。「いるかも?」っていうくらいが魅力的だと僕は思っているんですよね。「いるかも?」の中にも「いねぇよ!」寄りと「いるよね」寄りがあるんで、そこはさじ加減なんですが。美幸と支店長はちょっと「いねぇよ!」寄りかなぁ(笑)。

藤代:シーズン化されるドラマって、回を重ねるごとに登場人物の人間性が見えてきますよね。「晩酌の流儀2」になって、美幸のちょっとドジな部分が見えてきて、僕はそこが魅力的だった! 仕事もできるし、職場の人間関係も良好だけど、完璧じゃない人間味がある。そこもみなさんに見てほしいですね。 

松本:美幸は一人晩酌をこよなく愛しているけど、他者をシャットアウトしているわけじゃない。そこは大事な部分かなと思います。

藤代:そうそう。あくまで晩酌に集中したいための「一人」(笑)。外飲みでほかのお客さんがいると、あそこまで没頭できないと思う。一人暮らしだから、遠慮なく好きなものを作って、自由に晩酌できる。晩酌に没頭する迫力がドラマとしておもしろいし、素敵だなって思います。

松本:おいしいおつまみを作り、家で楽しむ一人晩酌。その時間を大切にする姿に共感していただけたらうれしいですね。

「晩酌の流儀」シリーズ、こうしてこだわりをお聞きするとより放送が楽しみに。
後編では現在放送中の「晩酌の流儀2」のフード現場でのエピソードや料理について語っていただきます。


〈PROFILE〉
松本 拓(まつもと・たく)テレビ東京プロデューサー。「警視庁ゼロ係」シリーズ、「銀と金」「ゲキカラドウ」「ただ離婚してないだけ」など、話題作を手がける。今7月期は「週末旅の極意」も放送。

藤代太一(ふじしろ・たいち)俳優・フードコーディネーター。ドラマ「ミリオンジョー」「雪女と蟹を食う」、映画「喝 風太郎‼」などに出演。調理師免許を持ち、フードコーディネーターとして「ゲキカラドウ」「晩酌の流儀」シリーズに参加。

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撮影/鈴木康史 取材・文/待本里菜 ©︎「晩酌の流儀2」製作委員会