
人生を変えたのは『アスパラバターまぜごはん』。人気料理研究家・ジョーさん。インタビュー

Twitterのフォロワー数約40万人と絶大な人気を誇る、料理研究家のジョーさん。身近な食材&調味料で簡単に作れておいしいレシピが支持されています。
オレンジページnetではジョーさん。の新連載「ジョーさん。の漬けめし」が7月1日にスタート ! これを記念して、料理家研究家になったきっかけや、思い入れの深いレシピ、こだわりの調味料などについて語っていただきました。
母親の手助けをしたい……それが自分で料理を作るきっかけに
――ジョーさん。が料理研究家になったきっかけについて教えてください。もともと料理を作るのが大好きだったんですか?
2つの側面あるんですけど、1つ目は、尋常じゃないくらい食べるのが好きだったこと。外食がすごく多い家庭だったので、外食でいろいろおいしいものを食べて、食いしんぼうになったっていうのがひとつ。
2つ目がお母さんの助けになりたい、と料理を始めたことですね。両親が共働きで、仕事から帰ってきた母が料理を作ってくれるんですけど、僕や父が作りたての食事を食べているのに、母はみんなのお皿を片づけ終わってから、冷めた料理を立ったまま食べているのを見ていて、子どもながらに違和感があったんです。それで、初めは炊飯器のスイッチを入れるところからスタートして、トマトなどの野菜を切ったりするお手伝いをしていました。
自分ではあまり覚えていないんですけど、小学校3、4年生のときに、母の見様見まねで自分一人でとんカツを作ったんです。なんでとんカツだったのか……、たぶんびっくりさせてやろうっていう気持ちがあったんだと思うんです、サプライズで喜ばせようみたいな。とんカツ、刻んだキャベツにトマト、おみそ汁、ご飯。母が帰宅する前にすべてを作って待っていたら、とても喜んでくれて。それが、今で思えば、料理研究家になる原体験だったんだと思います。
――小学校中学年でとんカツを手作り!? そのあとも、料理の腕に磨きをかけていったんですか?
中学生や高校生のころは、外食で食べた料理をどうやって自宅で再現できるんだろうって考えて作っていましたね。基本の調味料「さしすせそ」で作っていたんですけど、高校生のときに、麻婆豆腐にめちゃくちゃはまって。そのときに、酒という調味料に出会って、「酒、すげー」と思ったのを覚えています。
――かなりの研究肌とお見受けしました。そのころから、料理研究家をめざしていたんですね?
いやいや、全然(笑)。大学生のころは、学業と並行して小説家として本を出したり、卒業してからは某メーカーの営業職に就いたり、その会社を辞めてタイ古式マッサージに弟子入りしてみたり……。そのとき、そのときで心が動いたものに挑戦していました。
いろいろな仕事を経験してみて、結果的に自分が子育てをちゃんとできる仕事がいいなと感じたんです。在宅とかで子どもをみながら仕事ができるのがベストだと思って、料理研究家っていうのはぴったりだな、と。自分が作ったごはんがそのまま食卓に出せるし、仕事でもプライベートでも役に立ちますよね。
その後、食関係の会社に入って、アルバイトから下積みさせてもらって、30歳になる前に独立を決意して退職。退職して3カ月くらいたって、このままだと次の就職先見つけなきゃやばいかなって思っていたころに、Twitterに投稿した『アスパラバターまぜごはん』が当時20万近い“いいね!”をもらってバズったんです。これを機にメディアに登場する機会をいただいて……『アスパラバターまぜごはん』が、僕の人生を大きく変えてくれました 。
「なぜ人類はいままでやらなかったんだ…!?」
ってくらいアスパラガスは混ぜご飯にするとおいしい
アスパラが豆みたいにホクホクでお箸が止まらないから本当試してみてアスパラガスを細かく切って
バター2かけとめんつゆ大さじ1.5を入れ
ラップし600Wのレンジで2分
温かいごはんと混ぜたら完成! pic.twitter.com/QD1HIcoWbi— ジョーさん。(料理研究家) (@syokojiro) June 6, 2019
大事にしているのは、手軽に手に入る食材&調味料で作れるレシピ考案
――ジョーさん。の人生を変えた『アスパラバターまぜごはん』以外に、思い入れの深いレシピはありますか?
『サーモンの塩昆布漬け』は今でも自分で作っているし、気に入っているレシピです。昆布じめがおいしいことはみんな知っているけど、そんなハードルの高いことはしないですよね。サーモンはほかの白身魚に比べて年じゅう手に入りやすい食材。昆布を塩昆布のような簡便な食材に置き換えることで、みなさんに支持されたというのが、われながら気に入っています。
これ…すごい…
マジでいくらみたいな濃いうま味がする…「サーモンの塩昆布漬け」
刺身用サーモン150gに
塩昆布20g(大さじ1強)を全体にまぶして、ぴっちりラップするかジップロックに入れて
20分くらい漬けるだけ。1日漬け込んでもOKです。 pic.twitter.com/caMcdJ6n5f
— ジョーさん。(料理研究家) (@syokojiro) February 25, 2020
また、全然頑張っていないのに(笑)、いまだにTwitterで伸びているのが『カリっとホクホクにんじんステーキ』。このレシピの特徴は、焼き方の工夫によって、にんじん独特のえぐみが抑えられて甘くておいしくなるというもの。見た目で伝わらないものはバズらないだろうと思っていたんですけど、おいしくできたので投稿したら、それがなぜか伸びたという不思議です。
こんなの…
俺たちの知ってるにんじんじゃねえ…!「カリっとホクホクにんじんステーキ」
にんじん1本をラップで包み600Wで3分30秒
半分に切り、オリーブオイル大さじ1.5チューブにんにく2cmを引いたフライパンで弱めの中火で表面がカリッとするまで加熱
ブラックペッパー 粉チーズ パセリを振り完成 pic.twitter.com/YZcTrFFAxP— ジョーさん。(料理研究家) (@syokojiro) August 30, 2019
――「これはウケるぞ」と思うレシピのポイントとは?
手軽さ、季節の食材、の要素は欠かせないかなと思っています。ただ、先ほどの『カリっとホクホクにんじんステーキ』みたいなこともあるので、正直、どれが実際にウケるのかは、僕にもわからないですね。
ただ常々レシピを考えるうえで、こだわっているのは、手に入りにくい食材や調味料をなるべく使わないということ。コンビニで手に入る範囲にしぼると狭くなりすぎるので、ミニスーパーくらいに広げて、そこで手に入る食材や調味料を使うことを心がけています。とくにTwitterの場合は、何を使うというよりは何を使わないか、ということが大事な感じがしています。
あとは……、卵黄をのせることですかね、卵黄は引きが強いですから(笑)。
–{ジョーさん。調味料にひとつ加えるとしたら?}–
基本の「さしすせそ」に1つ追加するとしたら……粉チーズかな
――身近な調味料を使ったレシピをモットーとされていますが、基本の調味料以外で、ジョーさん。にとって欠かせない調味料はありますか?
欠かせない調味料……。悩ましいですが、粉チーズかな。手に入りやすいうえに、粉チーズにはグルタミン酸が含まれているので、うま味調味料を使わずに、うまみを料理にプラスすることができるんです。人間って塩分、糖分、脂質などが入っていればおいしいと感じるようにできていて、粉チーズにはそれらがすべて含まれている。
粉チーズを使うと、簡単に家庭料理の味がぐんとレベルアップしますよ。料理の仕上げにふりかけるだけじゃなくて、卵かけご飯に入れたり、みそ汁に入れてもおいしいし。グルタミン酸の効果として、人間がおいしくないと感じる五味のうちの酸味や苦みを隠すという特性があるので、料理の弱点をちょっと抑えてくれるんですよね。たとえば、レモン汁に粉チーズを入れると、酸味に丸みが出てマイルドになります。

――料理は化学ですね! ほかにもこだわりの調味料があったら、ぜひ教えてください!

パントリーからお気に入りのオリーブオイルをずらりと出してもらいました。
油はひととおり研究しています。なかでも、オリーブオイルは趣味で集めているほど。
右から3本目のオリーブオイルは、「ロブション」の料理長を11年間務めた渡辺雄一郎シェフがお店で使っているフランス産のシャトー・エストゥブロンのもの。お店に食べに行って、「使っているオリーブオイルは何ですか?」ときいたら、さらっと教えてくれたのがこれです。加熱してもくせがなく、何につけてもおいしい。これに岩塩とおいしいパンを買ってくれば、渡辺シェフのお店の気分が味わえるから安いもんですよね。
もっと身近でスーパーでも手に入るオリーブオイルでおすすめなのは、いちばん左のeatime(スーパー・マルエツのプライベートブランド)の「ひとかけで美味しさ深まるオリーブオイル」と、その隣の昭和産業の「エクストラバージンオリーブオイル」。オリーブの風味がしっかりあって、フルーティな香りも楽しめます。
流行をひととおり把握しておくこと、おいしいものを食べることが欠かせない
――毎日おいしくて簡単なレシピ作るのは大変だと思いですが、どうやって新しいレシピを考えているんですか?
まずは流行っているものをやってみるっていうのが一つ。流行っているものを自分なりに分解してみたり、試してみたり。また、自分の好きな飲食店に食べに行って、それを家庭料理の分野で再現したり。あとは、季節の食材をどうおいしく食べるかを考えます。スーパーに行って、いちばんお値ごろ価格で売られているのが旬の野菜なので、スーパーめぐりも必須ですね。
そして、そのレシピは大前提としておいしい、そして身近な食材&調味料で簡単に作れるものであることが重要です。僕のレシピの根底には「食卓に着く人を増やしたい」という気持ちがあるので、今回新しくスタートする連載でも、なるべくキッチンに立つ時間を短く、食卓を家族で囲む時間が少しでも増やせるような新しいレシピをご紹介していけたらと思っています。
<PROFILE>
ジョーさん。
料理研究家。SNSの総フォロワー数は46万を超える。『めんどうなことしないうまさ極みレシピ』(KADOKAWA)など、レシピ本を5冊上梓(2023年6月現在)。2021年に法人化した、レシピ動画制作、フードスタイリング、撮影、記事執筆などを行う食に特化した制作会社を運営している。
Twitter:@syokojiro
Instagram:syokojiro1206
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCtcHkx4bI-tc-YzDOKkKsJw
公式レシピサイト「タベタノ?」:http://tabetano.main.jp/

撮影/三好宣弘〈RELATION〉 取材・文/佐々木紀子