
【インタビュー】暮らしの中で「バッグ型コンポストから始まる循環」を楽しんでいます!
が2021年度グッドデザイン賞を受賞しました!

昨年11月、オレンジページが主催したビギナー向けのオンラインセミナーを受講したのをきっかけに、コンポスト生活をスタートした小井手美年子(こいで みねこ)さん。コンポストでできた堆肥を通してガーデニングを楽しみ、周囲の人や地域との交流も深めている小井手さんに、コンポストがどのようにして日々の暮らしに溶け込んでいったのか、お話を聞きました。

「コンポストでできた堆肥と一緒に庭に植え替えると、苗がしっかりしてきて、こんなに大きく育ってビックリです。たまに植えた覚えのない野菜の芽が出るのも、楽しみのひとつ。堆肥の中に種が残っていたらしく、この夏はピーマンやトマトを収穫できました。こうした小さな喜びを味わえるのも、LFCコンポストのおかげですね」
と小井手さん。

「実は私、野菜の皮や煮干しのだしがらなどを捨てることに罪悪感がありました。工夫すれば、きんぴらにしたりして食べられるのに、生ゴミとして捨ててしまって『ごめんなさい』という気持ちで……」
もともとガーデニングが趣味だったこともあり、「コンポストで堆肥を作る」ことには興味があったといいます。とはいえ、「自宅でやるにはハードルが高い」と、次の一歩を踏み出せずにいたそう。そんなとき、オンラインセミナーで「バッグ型コンポスト」に出会ったのです。
「『1カ月あたりに10㎏の生ごみを入れることができる』と知り、バッグの中で堆肥を作ることができるなんて、すごい! と思いました。揚げ物をした後の油を入れられるのも便利ですよね。
何よりも、『生ごみには80%もの水分が含まれているため焼却時に膨大なエネルギーが必要で、CO2の排出量が増える』という事実が衝撃でした。 やはり地球にやさしい生活をしなくちゃ。すぐにでも自分にできることを始めよう! という気持ちになりました」
さっそくホームセンターにバッグ型コンポストを探しに行きましたが、売り場にあるのは大きなサイズのものばかり。「家庭でやるなら、やはりバッグ型でなくては」と、ネット通販で購入することにしたのです。
「ビギナーにとって、ポリバケツのような大型サイズは敷居が高いんですよ。でも、手軽に持ち運べるバッグ型のデザインに心がひかれて、『やってみたい!』という気持ちを後押ししてもらいました」
だんだんとコツがわかってきた

でも、これといったトラブルもなく、ほぼ順調な滑り出し。「バッグの中の基材(微生物が含まれている堆肥の素)の真ん中にくぼみを作って生ごみを入れ、その上から基材をかぶせる」「真ん中部分を重点的に混ぜる」というのを繰り返すだけでOKと、コツがわかってからは「アバウトでも大丈夫!」とだんだん肩の力が抜けていきました。
「今では、コンポストに投入する生ごみの量を気にすることもありません。多い日もあれば、少ない日もあるし、まったく入れない日もあります。生ごみを1日入れ忘れたとしても問題ないし、ぬか漬けみたいに毎日かき混ぜなくても大丈夫!
『こうしなきゃいけない』と気負わなくてもいいから、続けることができるのでしょうね(笑)。それがバッグ型コンポストのよいところだと思います。
今のところ、私の身近ではコンポストをやっている人がいないので、オレンジページサロンWEBの オレペコンポスト部の記事を参考にさせてもらっています」
ただ、これまでに困ったことが2回ほどあったそう。
スタート時期が冬だったので、当初心配していた虫やにおいの発生はなかったのですが、暑くなり始めた6月にミズアブ(アブの一種)が発生。「この先、どうなっちゃうの?」と不安になり、LFCの無料LINEサポートに相談しました。そのときは「バッグの中の堆肥を黒いビニール袋に入れて密閉し、酸欠にする方法」を教わり、虫の発生を食い止めることができたそうです。
そして、もう1回の困りごとはにおいの発生です。実は、発酵がうまくいかなかった手作りのあんパンを入れたら、バッグからものすごい悪臭が! 「あのときはパン生地を発酵させすぎたことが原因かも」と振り返る小井手さん。以来、あんパンの投入はNGと決めました。
「今のところ、あんパン以外は何を入れてもOKとわかりました。
ちなみに鶏の手羽の骨は残りますけど、魚に骨は跡形もなく分解されます。あと、アボカドの種も4つに割って入れると、いつの間にかなくなります。枝豆の皮は残りやすいかな」
コンポストで分解されやすいものと、分解されにくいものがあることが、日々の経験を重ねるうちにわかってきたといいます。
堆肥づくりがさらに楽しみに!
小井手さんがシャベルで混ぜると、堆肥がホカホカと温かくなって、バッグの中から白い湯気が立ちのぼりました!
湯気が上がるのは、堆肥の中に棲む微生物たちが生ごみを分解・発酵し、発熱しているサイン。こうして発酵が進むことで、よい堆肥に育っていくのです。温度計を差し込んで測ったところ、54℃でした。
「もはや生き物を育てている感覚です。土から湯気が出て、わあ、温か~い! 生きている! と、小さな喜びを感じます。料理の残り油を入れると微生物が喜ぶのか、温度が上がるんですよ! よく混ぜてあげると温度が上がって、60℃くらいになるときもあります」
今では、料理のあとの生ごみが堆肥に生まれ変わること自体が楽しく、「食べること、堆肥を育てること、花や野菜を育てることのすべてがつながっている!」と実感するようになりました。
さらにコンポストを始めたことを契機に、「環境について、もっと学びたい!」と思うようになったという小井手さん。グリーンアドバイザーの資格を取得したほか、「国立環境研究所」の生物季節モニタリング調査員として、地域の樹木の観察も行っているといいます。そして、次なる目標はコンポストアドバイザーの講座を受講して、アドバイザーとして活動すること!
「今やコンポストは私の生活の一部。おかげで世界が広がりました。好きなことはとことんやってみよう! というタイプなので、すっかりハマりました。コンポストを始めてから、よりガーデニングが楽しくなりました」
この秋、コンポストで作った堆肥を友だちにおすそ分けしたところ、とても喜んでもらえたそうです。
そんなとき、オレペコンポスト部で『できた堆肥を近所の公園の花壇で使ってもらった』という記事を読み、「我が家の堆肥も近所の公園の花壇におすそ分けできないかしら!?」と思い立ち、行政に相談することに。
実は小井手さんは、地域の有志とともに、近所の公園の花の世話をするボランティアをしています。5年前の花の植え替え時期に、「花壇に植える花を選んだり、配置を決めるデザインをやらせてください!」と自ら手を挙げ、花の世話を請け負ったのがきっかけです。そんな経緯もあり、今回、小井手家のコンポストで作った堆肥を公園で活用してもらえることになりました。
「堆肥作りを楽しみ、コンポストの輪を少しずつ広げているオレペコンポスト部の情報から、いつも刺激をもらっています」
「私は『花を介して人とつながること』が好きなんです。
公園の花壇のデザインをさせてもらったり、仲間たちと花壇の世話をしたり。庭でガーデニングをしていると、通りがかりの人が声をかけてくれて、花を通して話がはずむんですよ。それも、これも、花や緑を元気にしてくれる我が家のコンポストがつないでくれたご縁だなあと。
実は私、将来は地域の「花おばさん」になるのが夢なんです。これからもガーデニングとコンポスト生活を楽しんでいきたいと思います!」
「これからコンポストを始めるみなさんは、あまり気負いすぎないで、『自分なりのよい加減』を見つけてくださいね。それが長続きする秘訣ですよ」(小井手さん)
撮影/原 幹和 取材・文/大石久恵