陶器の街・益子町生まれ。幼いころから料理に親しみ、実家の台所や食卓にはつねに「発酵食品」があった……。そんな井上咲楽が、自家製の調味料や、お気に入りの発酵食品などを紹介していく「発酵ごはん」連載です! はつらつとした彼女のすこやかさの秘訣がここにアリ!?
「完全にナメてた……」井上咲楽、みりんの奥深さに感服する。の巻【人気発酵連載】
みりんを飲むことのすゝめ
みりんは料理に使う、いち調味料。
煮ものに甘みを出したり、照りを出したり……あくまでも調味料。ずっとそう思っていた。

みりんを飲み物だと思ったのは数年前、吉祥寺にある「にほん酒や」というお店に行ったときのこと。 このお店は日本酒が豊富にそろい、日本酒に合うおいしい料理もいっしょに楽しめる。
「さあ、日本酒を飲むぞ!」
と、アルコールドリンクのメニューとにらめっこしていると「みりんソーダ」と書いてあるのを見つけた。
みりんをソーダで割る……? いち調味料のみりんが、日本酒専門店の日本酒メニューに並ぶほどにおいしいのか……? 興味本位で注文してみた。
ドキドキしながら「みりんソーダ」を待つ。そもそも私は、どこのスーパーでも買えるお手ごろな値段のみりんしか使ったことがなく、値の張るみりんを使うにはまだ若造すぎる。こんなこと言ったら申し訳ないけどみりんをソーダで割って数百円する飲み物ってどんなものなんだ…… 。
井上咲楽、みりんの奥深さに感服
疑念を抱いているうちに、みりんソーダの登場! 見た目はクリアな黄金色で、シュワシュワの炭酸がとてもきれい。

いよいよ友達が頼んだ日本酒と、みりんソーダで乾杯。
ゆっくりと口に含むと……、
「……おいしい!!! なんだこのまろやかな甘みは!?」
砂糖のように「甘い!」のみが脳に残るようなものではなく、まるでべっこうあめのような、こくのあるとろんとした甘み。
そして、飲むとフワッとした解放感がある。 みりんを完全にナメていた。
こんなにおいしいものだとは知らなかった! なんだこれ、調味料というか、飲み物としておいしいじゃないか。みりんは〈しょうゆ〉や〈酒〉がいないと成立しないものだと思っていたけど、君は一人でもやっていけるじゃないか。
すごい……。 もちろん、ここで使われている「飛鳥山」というみりんが特別においしいのだろうけど、それにしてもびっくりした。
どんなにおいしいしょうゆでも、しょうゆだけでゴクゴク飲むことはない。けど、おいしいみりんはゴクゴク飲めるんだな。

あとから調べてみると、みりんは江戸時代、お酒が苦手な人や女性でも楽しんで飲むことができる甘いお酒として広がったらしい。

この日以降、わたしはすぐにみりんの「飛鳥山」を購入し、お風呂上がりにフワッとした気分になりたいとき、お酒ではなく、みりんのソーダ割りを飲むようになった。

甘くてデザート代わりになるし、買っておけば料理にも使える。私の場合はお酒よりも翌日に響かないし、いいことずくめ! 料理中に、みりんを使うフリして、クイッと飲んじゃったりして。
みなさんもぜひ、だまされたと思ってみりんを飲んでみてください。
「純米本みりん 飛鳥山」
1800ml 2860円(税込み)/720ml 1430円(税込み)/500ml 1100円(税込み)
SHOP DATA
杉井酒造
静岡県藤枝市小石川町4丁目6-4
TEL:054-641-0606

PROFILE
井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年、栃木県生まれ。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン」を経て芸能界入り。「おはスタ」「新婚さんいらっしゃい!」など、バラエティ番組で見せる明るいキャラクターで人気を博す。NHK大河ドラマ「光る君へ」に出演。2024年5月に『井上咲楽のおまもりごはん』、11月に『じんせい手帖』を出版。「発酵食品ソムリエ」資格、「食品衛生責任者」の資格も持つ。

文・写真/井上咲楽 バナー・プロフィール画像/大森忠明