こんにちは。「オレンジページ日本酒部」部員の、ニックネーム・酔い子です。9月に入り、季節はゆっくりと秋へと移り替わってきました。入道雲からうろこ雲に、たわわに実った稲穂が黄金色に……地域差はありますが、日本の四季はやっぱりすばらしいと感じます。さて、この時期の楽しみといったら、そりゃもう、「ひやおろし」を味わうこと! 今月は、ひやおろしのおいしさを存分に楽しめ、知れば知るほど好きになる1本をご紹介します。 時間とともにうまみが増す究極の食中酒「長珍 ひやおろし原酒 純米吟醸【生詰】」(愛知県・長珍酒造) 9月に入ると、酒販店の冷蔵庫には「ひやおろし」または「秋あがり」と呼ばれるお酒が所狭しと並び始めます。ひやおろしは、しぼったお酒を加熱処理し、ひと夏寝かせて、気温が下がる秋口に出荷する季節酒。時間とともに穏やかにすすむ熟成感を楽しめるのが、なによりの魅力です。そこで、今夜の推し酒はこちら!愛知県・長珍酒造の「長珍 ひやおろし原酒 純米吟醸【生詰】」愛知県津島市にある長珍酒造は、江戸時代後期に創業。「長珍」という名は先代が命名し、「いつの世においても末長く愛され、珍重されるお酒造りを目指す」という思いが込められています。このレッテルに押された「長珍」の大きな文字、一度見たら忘れられないインパクトがありますよね。私、酔い子はいまから15年ほど前、現・蔵元杜氏の桑山雅行さんに、ある酒の会で酒造りについてお話しをうかがって以来、新聞紙で包装した人気の「生酒・しんぶんしシリーズ」や、晩酌の定番ともいえる特別純米酒を好んで飲んできましたが、この「ひやおろし」をじっくり味わったのは何年ぶりのこと。今回、あらためて熱い男・桑山さんにお話しをうかがい、そのすごさに驚嘆したのでした。まずは、びんを観察!・包んでいるクラフト紙は紫外線をさえぎり、お酒の品質を保つ役割がありますが、手になじむやさしい感触にほっこり。あ、開栓するため紙の口元を開きますが、品質保持のためすべて取りはずしません。・ピカッと光る生詰のシールは、しぼった生酒を貯蔵する前に一度だけ火入れ(加熱処理)をし、出荷前には火入れをしないお酒であることを意味します。・原酒はしぼったままのお酒を指すので、アルコール度数は高め。兵庫県産山田錦100%で仕込んだ純米吟醸ひやおろしの味わいとは……!(写真のお酒は、ひと夏を越し、さらに2年熟成させた令和2年醸造のものを撮影)長珍酒造が目指すお酒は、究極の食中酒。冷蔵庫でかるく冷やして開栓し、お酒を口に含むと、ほどよく熟したうまみとともに酸味や苦みも舌に感じます。が、ひとたび料理と合わせると見事に双方の味が一体化し、体に心地よくしみ込んでいきます。そして、時間が経つにつれ味わいが変化し、開けたての少し肩ひじ張った味の印象から、角が取れたようななめらかさになり、さらにどんどんうまみが増していくという<長珍マジック>にはまります。冷酒からぬる燗まで味わいの幅が広いので、晩酌にはグラスと香りが立つ平杯の用意が必須です! ……って、飲みすぎ??桑山さんはお酒のテイスティングをする際、連想する食材や合わせたい料理を具体的にイメージしていると聞き、私もさっそくトライ。冷酒なら酢のものかな? 常温ならさんまのわたの苦みと合いそう、ぬる燗なら甘辛味の肉に一味唐辛子をふっちゃったりして? ……など、感じたままに料理を浮かべるのは、けっこう楽しい時間でした♪最後に、長珍酒造 桑山さんの酒造りのこだわりについてーーーーーひやおろしに限らず、貯蔵したタンクからびん詰めをする際、びん詰め機などの機械を使ってお酒を移すのが通常の流れだと思っていました。ところが桑山さん、ひやおろしのタンクの口にシリコン製の細いホースをつなげ、機械を使わず、1本1本手作業でびん詰めをしているというから、思わず耳を疑いました。もちろん50本や100本じゃありません。蔵の番人・奥さまの喜美子さんも、蔵に入って3年目の長男・稜平さんも蔵人も、チーム長珍が一丸となって、何百本ものびんにお酒をていねいに詰めているのです。豊富なラインナップが揃う「しんぶんしシリーズ」も同様に。理由は一つ。タンクから移す際にお酒が空気に触れたり、余計な負荷をかけて酒質を劣化させないため。「このタンクのおいしいお酒を、本当はこの場で飲んでほしいくらい。だからできる限りの手間をかけて、そのままのおいしさを届けているんです」まっすぐに語る桑山さんがなんとまぶしかったこと……。それにしてもすごい、すごすぎますよね! たゆまぬ努力と情熱と、進化し続ける柔軟さ。この一杯には驚くべきストーリーがある。それを知るだけでも、ああ、やっぱり晩酌って楽しい♡◎令和4年醸造のひやおろしは、今月下旬に発売予定です! 「長珍 ひやおろし原酒 純米吟醸【生詰】」データと取り扱い店について 〇原材料名:米、米麹〇原料米:兵庫県産山田錦100%〇精米歩合:麹米50%、掛米55%〇アルコール分:18度〇仕込み水:木曽三川の伏流水 〇価格:720ml 2343円~〇取り扱い店:富屋酒店~nagoya~(愛知)/ https://tomiya-nagoya.amebaownd.com/山中酒の店(大阪)/ https://yamanaka-sake.jp/味ノマチダヤ(東京)/http://ajinomachidaya.com/横浜君嶋屋(神奈川)/https://kimijimaya.co.jp/坂戸屋(神奈川)/https://sakadoya-style.com/■長珍酒造facebook: https://www.facebook.com/profile.php?id=100064820823190Instagram: https://www.instagram.com/cyochinsake/ 「長珍 ひやおろし原酒 純米吟醸」と合わせたい一品 牛肉と豆腐のすき煮 先にも書きましたが、温度帯や時間の経過とともに角が丸くなったような、なめらかな味わいに変化するひやおろし。燗酒にしたとき、こくとうまみのある甘辛味、肉、豆腐、しょうがなどが浮かび、料理研究家の栗山真由美さんのレシピにたどり着きました。以前から好きで作っていた料理が、自分好みのお酒の友に。味変で、肉に粉山椒をふると、またお酒を呼びます。豆腐をこんがりと焼いて、焼き豆腐風にします。牛肉のうまみが全体にからんでおいしい。 牛肉と豆腐のすき煮 材料(2人分) 木綿豆腐 1丁(約300g)牛切り落とし肉 150gしめじ 1パック万能ねぎ 3本しょうがのせん切り 1/4かけ分赤唐辛子の小口切り 適宜だし汁 1/2カップ塩、こしょう 各少々サラダ油 大さじ1と1/2酒 大さじ1砂糖 小さじ2しょうゆ 大さじ1と1/2 作り方 (1)豆腐はバットにのせてそのまま20分おき、水きりをして4等分に切る。牛肉は全体に、塩、こしょう各少々をまぶす。しめじは石づきを切り、小房に分ける。万能ねぎは長さ4cmに切る。(2)フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、豆腐を入れる。ときどき焼きつける面を変えながら、全体にしっかりと焼き色をつける。(3)豆腐をフライパンの端に寄せて弱火にし、あいたところにサラダ油大さじ1/2、しょうが、赤唐辛子を加える。香りが立ったら強めの中火にして牛肉を加え、ほぐしながら炒める。肉の色が変わったら酒を回し入れ、しめじを加えて全体をさっと混ぜ合わせる。(4)砂糖、しょうゆを順に加えて全体を混ぜ、だし汁を入れてふたをする。2分ほど煮たら、万能ねぎを加えてさっと混ぜ、汁ごと器に盛る。ぜひ、「長珍 ひやおろし原酒 純米吟醸」とお試しください。上記、取り扱い販売店で購入できます。次回は10月8日更新予定です。最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。 profileオレぺ日本酒部*酔い子/比留間深雪オレンジページ コトラボ推進部スーパーバイザー。オレぺ日本酒部員、晩酌愛好家。編集部に28年間在籍し、雑誌、ムックを制作するかたわら、日本酒の魅力にひたすらはまり続け、酒蔵との交流が人生の財産となる。現部署では、体験型スタジオ「コトラボ」で料理レッスンを中心とした講座やイベントの企画・運営、企業の研修業務等に携わり、日本酒との接点を模索する日々。全国津々浦々、地域のおつまみ、特産品が大好物。料理レシピ/栗山真由美