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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.107】『ファーザー』

2021.05.28


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。僕にとって紅白歌合戦とアカデミー賞はちょっと似ています。選考や選抜に賛否両論ありつつも、共通しているのは「ああ今年もこの季節が来たなあ」と感じさせてくれるところ。
今年のアカデミー賞は新型コロナウィルスの影響で授賞式の時期がずれましたが、色々な話題がありましたね。『ノマドランド』や『ミナリ』などアジア系の監督や俳優さんたちの活躍があり、そして授賞式の会場にいなかったことでも話題になった、アンソニー・ホプキンスさんの主演男優賞。受賞作となった『ファーザー』は上記2作品に負けず劣らず素晴らしく、「老いによる記憶の喪失」というテーマを独自の視点で描いた作品です。


認知症という題材は、自分がまだその年齢でなかったり、身近にその症状を持つ人がいないと「ちょっと自分とは遠い世界の話」と思うかもしれません。僕もちょっとそう思いながら見たのですが、意外な展開についつい引き込まれてしまいました。一番の特徴は、ロンドンで独り暮らしを送り、認知症の兆候が見られる主人公のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)自身の視点でストーリーが進んでいく点。ケアする家族の大変さが強調されることが多いイメージなので、ちょっと新鮮に感じました。画面から伝わってくるのは、悲壮感ではなく違和感。娘のアン(オリヴィア・コールマン)が、新しい恋人とパリへ行くと宣言したかと思えば、次の瞬間、アンと結婚して10年以上になるという男が現れる。アンソニーにとっての「事実」が次々と変わっていく展開に、見ているこちら側も不安や恐怖を覚えるのです。


愛おしく感じたかと思えば、次の瞬間には憎いとさえ思うこともある。多くの人が日々感じているであろう、家族と言う存在への複雑な感情がアンソニーとアンの間からはもれ伝わってきます。最後まで登場することはない、アンの妹・ルーシー。アンソニーはずいぶんこの下の娘がお気に入りのようで、「アンとは合わない」とまで言い出す始末。それを聞いているアン(オリヴィア・コールマン)の微妙な表情がすごく良いんですよね……。この2人がどんな親子関係だったのか、そんなことを想像すると、スリリングな雰囲気をより楽しめると思います。


途中、混乱するアンソニーに対してすごく冷たい発言をする人物が現れます。えっ、ひどいなと思うと同時に、じゃあ自分はその人と違うと言えるのか……ドキッとしてしまいました。この人物は、年齢を重ねていくことにどこか否定的な今の社会を体現しているのかもしれません。
アンソニーと一緒に戸惑いっぱなしの90分。脚本の素晴らしさとともに、人間の色々な感情を巧みに表現するアンソニー・ホプキンスの演技は圧巻のひと言です。

『ファーザー』絶賛公開中
配給:ショウゲート
©NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF  CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION  TRADEMARK FATHER LIMITED  F COMME FILM  CINÉ-@  ORANGE STUDIO 2020

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

文/編集部・小松正和

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