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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.97】『夏時間』

2021.02.26


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
まだまだ寒いこの時期、暖房がきいた部屋でアイスを食べるのって最高ですよね……。実際、「冬アイス」の売り上げは年々増えているのだとか。そんなプチ情報はどうでも良いとして、今回紹介する作品は「夏時間」。10代の少女が家族との関係を見つめ直すひと夏のストーリーは、痛くてもどかしくて、夏という季節が持つ切なさを見事に切り取っています。
ここ最近良作が続く韓国映画。冬のアイスではないですが、夏と正反対の時期に見ることで、よりノスタルジックな気分で楽しめましたよ。


子どもの頃、夏休みの宿題で絵日記が苦手でした。コツコツ書くことが苦手なのではなく、毎日特に書くことないなあと思って。事業に失敗した父親と弟と、祖父の家に引っ越すことになった少女オクジュ(チェ・ジョンウン)の夏休みも、そう楽しいものになりそうな気配はありません。居候という立場、体調のすぐれない祖父との同居、楽ではない家計状況。さらに、となりのトトロのような自然あふれる地方ならともかく、都会での夏休みは絵日記を埋めるにも一苦労です。
離婚の危機から同じくこの家に転がり込んできた叔母のミジョン(パク・ヒョニョン)の存在もあいまって、オクジュは家族の濃密な人間関係に身を置くことになります。


祖父の家で暮らすことになった最初の夜の、どこかぎこちない雰囲気の食事。靴の路上販売をしている父親の、客に対する腰の低さ。目を二重にしたくて父親に相談するオクジュ。ちょっと気まずくて痛々しいシーンが多く、でもその格好悪さこそが人生なのだと、そんなメッセージを感じます。
韓国映画、女性監督、10代の少女の心のサバイバルという要素から思い出すのが、昨年紹介した『はちどり』。どちらも10代の少女のみずみずしい感情をすくい取った良作ですが、興味深いのは家族関係の違い。90年代を舞台にした『はちどり』では高圧的な父親や、兄の暴力が印象的だったのに対し、今作に出てくる男性陣は誰もが優しい。特にお父さんのビョンギ(ヤン・フンジュ)は、情けなさも含んだ温かさで娘と息子を必死に育てています。家族構成の違いはあるものの、韓国社会も変化しているのかな?と感じました。


人が老いるということ、一度は愛し合った夫婦が別々の道を歩むこと。オクジュが目の当たりにする出来事に、「夏休み」という言葉が連想させるキラキラしたものはありません。それでも、不器用な家族の愛情に触れたこの夏は、彼女にとって特別なひと夏として思い出されるのではないでしょうか。
祖父の訃報を聞き斎場へ駆け付けたオクジュに対して、父親がかけた言葉。日々の彼女の頑張りを労う、とても良いシーンでした。

「夏時間」 
2 月 27 日(土)渋谷ユーロスペースにてロードショー全国順次公開
©2019 ONU FILM, ALL RIGHTS RESERVED 

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

次回3/5(金)は「ターコイズの空の下で」です。お楽しみに!

文/編集部・小松正和

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