
2020.12.06
withコロナ時代の今、「免疫力アップ」が注目のキーワード。
免疫細胞の7割は腸にあり、感染症を予防するには「腸の働き」が欠かせません。
今回は、京都府立医科大学 消化器内科学教室 准教授・内藤裕二先生に「腸活と免疫力」についてお伺いしました!
◆ウイルスから体を守る「免疫力」って何?
「免疫力」とは、ウイルスや細菌などの病原体が体の中に侵入しないようにブロックしたり、侵入した病原体を防御したり、攻撃したりする能力のこと。
新型コロナウイルス、インフルエンザウイルスの感染を予防するには、マスクの着用、手洗いなどの予防対策が第一ですが、消化器内科の内藤先生によれば、「ウイルスの侵入をブロックできるように、粘膜の免疫力をアップすることがもっとも重要」なのだそうです。
「鼻・のど・気道・消化管などの粘膜は、ウイルスの侵入をブロックする最前線。その関門を乗り越えて、ウイルスが体内に入り込んでしまった場合も、免疫細胞が外敵の侵入をキャッチしてやっつけるしくみがあります。中でも重要なのが『腸粘膜のバリア』です。腸には免疫細胞の約7割が集まっているからです」と内藤先生。
実は、腸壁(上皮細胞)からはネバネバした粘液が分泌され、厚みのある粘液の層が腸壁を覆って、バリアの役目を果たしています。粘液の中には免疫物質も含まれているため、ウイルスや細菌、有害物質などが腸の中に侵入したとしても、それらが腸壁から吸収されるのをブロックしてくれるのです。
ところが、この粘液バリアが薄い状態だと、ウイルスや細菌などが腸から吸収され、体のあちこちに運ばれて炎症を起こすなど、さまざまな病気の原因となります。つまり、免疫力アップには「腸粘膜のバリア」が深く関わっているのです。
★腸粘膜の免疫力が高い状態とは…
腸壁を覆う粘液のバリアが分厚い状態。
ウイルスなどの外敵の侵入をブロックできる。
★腸粘膜の免疫が低い状態とは
腸壁を覆う粘液のバリアが薄い状態。
外敵の侵入をフロックできず、ウイルスなどが腸壁から吸収されてしまう。
◆善玉菌を増やして、腸粘膜のバリアを強化しよう
インフルエンザウイルスは、主に鼻・のど・気道・気管支・肺までの呼吸器の粘膜に感染し、重症になると肺炎を起こすことで知られています。
一方、新型コロナウイルスも呼吸器に感染しますが、インフルエンザと違うのは、血管に炎症を起こして、重症化すると呼吸器以外の細胞までが破壊されるという点です。
そのため、味覚障害や重度な肺炎を起こしたり、非常にまれですが、脳の血管に炎症を起こして記憶障害を起こすケースもあります。また、腸でも炎症が起こることが知られています。
「自分たちができる感染予防対策として、とにかく『腸粘膜のバリア』を強化しておくことが大事です。バリアとなる粘液の中には、体を守る免疫物質(IgA抗体)が含まれていて、ウイルスを防御する働きをしています」と内藤先生。
では、腸粘膜のバリアを強化するにはどうしたらいいのでしょうか?
「腸粘膜のバリアを強化するには、まずは腸内の善玉菌を増やすことです。そのためにも腸内細菌のエサとなる食物繊維たっぷりの食事を心がけましょう。善玉菌が産生する『短鎖脂肪酸』という酸には、腸粘膜のバリアとなる『粘液』の分泌を促すしくみがあるからです。
実は最近の研究で、<新型コロナウイルス感染者の腸内では善玉菌が減少していた>という報告がありました。
腸粘膜のバリアが弱っていると、ウイルスに感染しやすくなります。ウイルスの侵入をブロックするためにも、善玉菌を増やして、腸粘膜のバリアを分厚く保ちましょう」 (内藤先生)
文/くらしデザイン部
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