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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.86】「ニューヨーク 親切なロシア料理店」

2020.12.04


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
寒い日は温かいものが食べたい。それは映画も一緒で、心が少し塞いでいるときは、あったかい作品を見たくなりませんか。この作品は、おでんとか肉まんとかグラタンとか、そういう「あったかメニュー」とはちょっと違う。もっとこう、一杯のコーヒーのようにさりげなく、凍えた心を温めてくれるのです。
暴力的な夫から逃れるため、2人の息子を連れてニューヨークにたどり着いた女性は、弱き存在の象徴。ただし、彼女を取り巻くごく普通の人たちの痛みもまた、この作品のテーマなのかもしれません。家族でも友達でもない、たまたま出会った人どうしの、絆とも言えないほどの小さな交流。どうしたって暗いニュースが流れる今の世の中、心に小さな灯りをともしてくれる作品です。


朝方、夫が横で眠るベッドをそっと抜け出すクララ(ゾーイ・カザン)が、2人の息子を連れて車で向かうのはニューヨークのマンハッタン。息子たちに向けられる夫の暴力から逃れるため、お金も身分証明書もないままに家を飛び出したのです。
一方、100年を超える歴史を持つロシア料理店「ウィンター・パレス」に、ひょんなことからマネージャーとしてスカウトされることになったマーク(タハール・ラヒム)は、刑務所から出てきたばかり。この店の常連であるアリス(アンドレア・ライズボロー)は、救急看護師として働くかたわら、悩める人たちのために教会で〈赦しの会〉なるセラピーを開く、世のために生きる女性。さらに、どんな仕事でもヘマをやらかして解雇されてしまう不器用なジェフ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)など、出てくるのはちょっと変わった人ばかりです。
図書館で時間をつぶし、身分証明書がないからとシェルターでも入居を断られ、途方に暮れるクララと息子たち。ついに軽い盗みにまで手を染めることとなったクララは、息子たちのために食べ物を手に入れようと忍び込んだウィンター・パレスで、マークと出会うのです。


夫が警察官であるがゆえ、警察に駆け込むことも出来ないクララ。セーフティネットからいとも簡単に転げ落ちた彼女たちに、マークやアリスといった他人が手を差し伸べるストーリーは、ベルギーのダルデンヌ兄弟監督の「少年と自転車」という作品を思い出します。父親に捨てられた少年を、見知らぬ女性が引き取って共に生きていくという物語なのですが、彼女が少年をなぜ受け入れたかは特に説明されないんですよね。そこに理由はいらないんですよ、とでも言うように。
マークにせよアリスにせよ、今作ではある程度登場人物のバックグラウンドが明らかにされているので、クララに寄り添う心境が伝わってきます。それでも、そこにあるのは「誰かを助けよう」という大仰な気持ちではなく、人としての自然な反応だと思うんですよね。


どこからどう見ても弱者であるクララとは逆に、社会からはその存在を認められているであろうアリスが陰の主人公。他人のために献身的に生きながらも、「自分は誰の一番でもない」と虚しさを抱える彼女に、ちょっと共感するところがありました。クララを助けながら、自分の幸せを見つめ直す姿が印象的です。
炊き出しが日々行われ、シェルターがシステムとして稼働しているニューヨークは、福祉が手厚い街。もちろん、それだけ多くの人が暖かい毛布と温かい食事にありつけないという現実があるわけですが。「助ける人」「助けられる人」という関係だけではない、見知らぬ者同士の小さな触れ合いこそが今求められているのだと思います。

「ニューヨーク 親切なロシア料理店」 12月11(金)よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
配給:セテラ・インターナショナル
©2019 CREATIVE ALLIANCE LIVS/RTR 2016 ONTARIO INC. All rights reserved


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

次回12/11(金)は「100日間のシンプルライフ」です。お楽しみに!

文/編集部・小松正和 

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