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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.76】「ある画家の数奇な運命」

2020.09.24


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
ファッション関係で働いている友人がいるのですが、今回のコロナ禍のような非常時には、まっさきに「絶対に必要なものではない」とされてしまうと話していました。芸術が少し軽んじられてしまうのは、この映画に出てくる戦時中の時代と重なる部分があります。運命に翻弄された画家の人生を追ったストーリーは、ドイツが誇る現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターをモデルにしたもの。ナチス・ドイツによる知られざる蛮行を明るみにし、東西ドイツの時代を描きながら、芸術の持つ力を証明する……意外過ぎる展開と大きな感動が待っています。


これまでも数多く作られてきたナチス映画。過去にきちんと目を向ける姿勢に常に感心させられるのですが、少し違う視点で切り込んでいるのが今作。ユダヤ人虐殺で語られることの多いナチスですが、実はその選民思想は同じ民族の中でも実践されていたのです。
ときは1937年。ヒトラー率いるナチス政権下、幼いクルト(トム・シリング)は芸術を愛する叔母エリザベト(ザスキア・ローゼンダール)の影響で、自身も絵画に親しむ日々を送っています。絵筆よりも銃をその手に携えることを良しとされた時代、感性が豊かなあまり精神のバランスを崩したエリザベトは、病院送りの処遇に。優等な子孫のみを残したいというヒトラーの意思のもと、その権限を与えられた医師によって、彼女の命は「無価値」と判断されてしまうのです。ドイツ降伏のたった3か月前の出来事でした。


印象に残っているのが、戦後クルトが西ドイツに渡り、芸術学校に通う中で、教授が彼に自身の「原体験」を語るシーン。戦時中、自分が殺めるはずだったタタール人に命を救われたという経験が、教授のその後の人生を決定づけるものになったというエピソードで、それだけ聞くと正直「?」という気持ちでした。が、そこからクルトが自らの新しい芸術スタイルを確立していく展開で、ああなるほどと納得。約3時間と長丁場の今作品。彼の原点は何だったのか、このシーンにすべてが集約されていると言っても過言ではありません。最愛の叔母を失った幼きクルトの苦しみを、時を経て昇華してくれたのは、他でもない芸術の力でした。彼女が強制的に入院させられることとなったあの日、「真実から目をそらさないで」とクルトに向けて放ったメッセージは、原点となって彼の心に残っていたのです。


もう一人の主人公と言えるのが、クルトの叔母エリザベトの命を「無用」と判断した、医師のゼーバント(セバスチャン・コッホ)。実は、成長したクルトが美術学校で出会い、後に妻となるエリー(パウラ・ベーア)の父親こそがゼーバントだったのです。事実にもとづいたストーリーということで、戦争というものの罪深さを感じずにはいられません。
国家の圧力に屈したゼーバント。例え裁かれることがなくとも、彼が死ぬまで告発に怯えながら暮らしていくことが示唆されています。ただし、彼が医者として真摯な態度を見せる場面もあって、この人を悪人と決めつけられない部分も……。
ゼーバントを演じたセバスチャン・コッホは、この監督の前作『善き人のためのソナタ』にも出演。この作品もまた、国家の監視と、音楽が持つ芸術の力を描いた名作なので、未視聴のかたはぜひ!


「ある画家の数奇な運命」 10月2日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ・木下グループ
©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和 


次回10/2(金)は「82年生まれ、キム・ジヨン」です。お楽しみに!

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