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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.62】「今宵、212号室で」

2020.06.18


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
ステイホーム期間やテレワーク推進などいろいろな要素が重なり、人間関係にも大きな影響があったように思います。
ニュースでもたびたび話題になっていましたが、例えばコロナ禍における夫婦関係の危機。一緒に過ごせる時間が増えてよしと思ったら、実はあまり顔を合わせない方が関係は良好だった⁉ なんて声も聞こえてきたり……。
『今宵、212号室で』は、長年連れ添った倦怠期の夫婦の物語。20年前の姿の夫が現れるという不思議な一夜を経て、妻が下した決断とは……。大切な人との関係を見つめ直すという意味で、誰かを愛したことがあるすべての人に見てほしい、大人のためのファンタジー映画です。


愛の国フランス(とよく言われている)。フランス人は家庭内別居をしないと聞いたことがあります。愛が無くなったら、離婚するのだと。確かに、離婚が日本ほどタブー視されていないのは、小説や映画などからも分かりますよね。とはいえ夫婦の形はそれぞれで、この映画のように、愛が冷めながらも一緒に暮らすカップルも。
マリア(キアラ・マストロヤンニ)は司法を専門とする大学教員。コンスタントに相手を変えながら浮気を重ね、ついに夫のリシャール(バンジャマン・ビオレ)にバレてしまいます。
ある意味黙認してくれていると思っていたマリアの予想に反してリシャールの怒りは大きく、一晩だけ、マリアは彼らが暮らすアパルトマンの向かいのホテルに部屋を取ることに。その212号室に現れたのは……なんと20年前の姿のリシャール(ヴァンサン・ラコスト)。歴代の浮気相手や母親なども次々にこの部屋に登場し、マリアはこの20年を振り返ることになるのです。


夫をないがしろにしてきた妻が、昔の姿の彼に会うことで当時の気持ちを取り戻す……という分かりやすい話でもありません。若き日のリシャールに「昔の俺に心底惚れていたくせに」となじられ口論になりながらも、ちゃっかり若き日の彼と抱き合うマリアは、その開き直りっぷりがある意味気持ちいい。自分の前にリシャールが付き合っていたピアノ教師イレーヌ(カミーユ・コッタン)も登場し、事態はさらに複雑さを極めます。リシャールを奪ったことをイレーヌに責められて少し心は痛むも、浮気を反省するかどうかはまた別の話。この映画に正解はありません。それぞれの登場人物の恋愛観や人生観が提示され、そのどれにも共感できる部分があり……。
今のリシャールが発する「愛は思い出の中に築かれる」というセリフがとても印象に残りました。


血気盛んな若きリシャールと、言葉少なで控えめな今の彼はどうも結びつきません。マリアはきっと彼が変わってしまったと思っているはず。だけど、リシャールがマリアを思う気持ちは20年前からずっと変わっておらず、そこが切ないのです。
不思議な一夜が明けたあとの結末はとても現実的。見ている側もそれは分かっていたような気がして、だからこそ、かりそめのファンタジーに一緒にわくわくできるのかもしれません。
夫婦役を演じたキアラ・マストロヤンニとバンジャマン・ビオレは、実は元夫婦だそう。離婚した夫婦が演じる「離婚しそうな夫婦」、そこに注目して見るのも面白そうですね。


「今宵、212号室で」  Bunkamura ル・シネマ、シネマカリテほか全国順次公開
©Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和

次回6/26(金)は「はちどり」です。お楽しみに!

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