ただでさえ暑い時期なのに、急激に頭がのぼせたり、顔がほてったり、ドキドキしたり……。
もしかして更年期? これがうわさのホットフラッシュ? そんな悩めるあなたへ。産婦人科医の萬もえ先生に教わる
ホットフラッシュの対処法と日ごろのケアをご紹介します。
まだまだ関係ないと思っているかたも、アラフォー過ぎたら人ごとではない! 今日から、ゆらぎ対策いたしましょう。
ホットフラッシュとは?
ホットフラッシュとは、更年期症状のひとつ。女性の半数に起こるといわれています。
更年期症状の原因は、卵巣機能の低下により女性ホルモンのエストロゲンが急激に少なくなるため。エストロゲンが減少すると、だるさや疲れ、物忘れ、頭痛、骨の老化などさまざまな不調が表れるようになるのです。
脳内の体温調節をしている部分にも影響し、少しの温度変化にも過剰反応を起こして、暑さや冷えを感じやすくなります。
ちょっとした暑さでも体温を下げようとする放熱反応がホットフラッシュ。深部体温を下げるために抹消血管が開き、皮膚の表面温度を下げようと汗が出るのです。
更年期は、閉経の前後5年の10年間と定義されており、40歳前後から月経不順などの症状が出はじめるひとも珍しくありません。
夏はホットフラッシュが起こる引き金が増える
暑い夏は、冷房がきいている場所との温度差や、自律神経の乱れも影響し、どうしてもホットフラッシュが起こる頻度は多くなります。
辛いものを食べたことが引き金になることも。気温や時間帯に関係なく起こるため、夜中寝ている間に寝汗をかき、その後に冷えを感じる人も少なくありません。
もともと汗かきな人や暑がりな人は見極めがつきにくいかもしれませんが、ホットフラッシュの場合は首から上にほてりなどの症状が急激に出るのが特徴。同時に脈拍の増加や動悸が起こります。平均3分ほど持続することが多く、しだいにおさまります。
ひどくなる前に、早めに受診を
毎日忙しく時間がない女性は、多少の症状では受診をためらうかたが多いのですが、ひどくなってからの対処ではリカバーに時間がかかります。また、更年期に似た症状の違う病気(甲状腺機能低下症など)が見つかる可能性も。
ホットフラッシュに限らず、急に疲れやすくなった、眠れない、肩こりや頭痛が増えたなど気がかりな体調の変化があれば、早めに婦人科に相談しましょう。毎年がん検診を受ける婦人科のかかりつけ医がいると安心です。
病院ではまず、ほかの病気がないかを血液検査でチェックし、なければ更年期症状の治療を検討します。軽度の場合は食事療法や生活指導(運動、体重管理、禁煙)、必要に応じて漢方薬の処方や、サプリメントをおすすめすることもあります。日常生活への支障が大きい場合は、ホルモン補充療法(HRT)を検討します。(乳がんや高血圧などでできない場合もあり)。
ホットフラッシュの対処法
ホットフラッシュの引き金になる刺激は、気温の変化、そしてストレスや緊張。まずは自分の体感温度を一定に保つ工夫が大切です。
ホットフラッシュが起きたらあせりは禁物。ますます症状がひどくなるので、落ち着いてリラックスを心がけて。
◆上手に体温調節を
【服装】熱がこもらないよう、ゆったりとした服装がよいでしょう。締めつけが強いものは血流が悪くなるので、下着やパジャマも締め付けの少ないものを選んで。通気性のいいシャツや、夏用の機能性インナー、汗をかいて体温を下げるという意味ではコットンもおすすめです。
【冷房対策】冷房がきいた室内でははおりものやひざ掛けを利用して、外気との温度差を感じにくいようにすると◎。エアコンの設定温度は暑いと感じない程度(24~25℃)に下げるといいでしょう。
【冷却グッズ】外出時はネッククーラーがを利用して首を冷やすのがおすすめ。カーッと暑くなった時は、保冷剤をハンカチに包んで首すじやわきの下に当てると体温が下がります。汗拭きシートで首まわりを拭いて気化熱を利用して体温を下げるのも効果的です。
◆深呼吸でリラックス
ホットフラッシュが起きると、顔から汗が噴き出すし、メイクは落ちるし、あわてますよね。そのストレスや緊張感が、ますます症状を引き起こしやすくしてしまいます。
あせらず、まずは深呼吸! 冷却グッズで体を冷やしたり、ハンカチに好きなアロマの香りをつけてかいだりして、体もこころもクールダウンさせましょう。いったんその場を離れてトイレに駆け込むのもありです。
今、症状がある人もない人も
日ごろからできること
ホットフラッシュが起きない状況をつくるには、まずは更年期症状が出やすい状況(喫煙、肥満、運動不足)を解消し、生活習慣を整えていくことが大切。更年期の女性にいいといわれる大豆を積極的にとるなど、食事の見直しもしてみましょう。
◆運動する
運動不足は更年期やホットフラッシュだけでなく、さまざまな疾患に影響します。週3回程度、ウォーキングなどの有酸素運動をすれば、さまざま病気のリスクが下がるといわれています。
仲間を誘って朝の涼しい時間に30分ほど歩いたり、ショッピングモールでウィンドウショッピングしたりするのもいいですね。無理せず続けられる方法で、体を動かすことを習慣にしましょう。
◆大豆イソフラボンをとる
更年期におすすめの食材は、なんといっても大豆。蒸し大豆はもちろん、豆腐や厚揚げ、納豆、豆乳などを毎日とるとよいでしょう。大豆は昔から「植物性エストロゲン」といわれるほど、この時期の女性の身体にいいことが知られていました。
ただし、腸内で大豆イソフラボンをエストロゲンのような働きをする成分「エクオール」に変えることができない体質の人もいます。
エクオールとは 大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝され、生み出される成分。ゆらぎ期の女性の健康と美容をサポートしてくれます。
青魚も積極的にこの時期の女性に、とってほしいもう一つの食材は青魚。不飽和脂肪酸のDHA・EPAが豊富なので血管を丈夫にし、能や肌の若返りも期待できます。
◆サプリメントで補うのもおすすめ
エクオールを生み出すには、エクオール産生菌と呼ばれる腸内細菌が必要で、エクオールを作れる人は日本人女性の2人に1人です。
「ソイチェック」など市販の尿検査キットで自分でも調べられます。エクオール産生菌を持っていない人は、大豆イソフラボンを摂取してもエクオールを生産できないので、サプリメントで直接摂取するのがおすすめ。
生産できる人も、大豆食品を食べない日や腸内環境の変化でつくれなくなることもあるので、サプリメントで補っておくとよいでしょう。
ちょっとした意識改善と適切なケアが、こころと体の健康を守る大きな力に。対策をしっておけば、いざという時の安心にもつながるので、ぜひできることから実践してみてくださいね!
教えてくれたのは……
萬 もえ先生
産婦人科医。サン・クリニック(岡山県岡山市)理事長。クイーンズランド工科大学大学院で医療経営を学んだ後、日本の医学部に編入し卒業。岡山医療センターなどを経て2018年より現職。「女性がより美しく、自由に豊かにしあわせに生きる社会」を理念として周産期、女性医療を行う。2児の母。