人の体は、無数の細胞の集まり
久しぶりの同窓会。外見もスタイルもまるで変わらない人がいて驚いた!なんて経験はありませんか? 逆に、見違えるほど老け込んでしまった人がいたりも。
なぜ、老化には個人差があるのか――私たちは歳をとると体が衰えて、様々な機能が低下したり、病気になりやすくなったりします。
具体的に何が衰えているかというと、「細胞」です。つまり老化は「細胞の力の衰え」とも言い換えられます。
私たちの体は、約270種37兆個もの細胞からできています。ひとつの細胞は直径20㎛(マイクロメートル)ほどの小さなもの(1㎛=1000分の1mm)。
この細胞が集まって組織となり、さらにその組織が集まって、内臓や血管・骨・筋肉などの器官を形づくっています。そんな、奇跡ともいうべき細胞の働きによって、体は動いているのです。
細胞の衰えには習慣が関わっている
寿命を迎えた細胞は死滅し、それに変わって新しい細胞が「補給」されるとともに、ケガや病気で傷ついた細胞は日々「修復」されています。
そうした補給や修復の力が、加齢によって衰えてしまう。結果、内臓や器官がうまく働かず、代謝も低下して、体に不具合が生じやすくなる。これこそが「老化」の正体です。
老化の個人差は遺伝子によるところもありますが、細胞にダメージを与えるような生活を続けていれば、老化が進みやすくなります。逆に言えば、若々しさを保つには、細胞を気遣う習慣が大事だということです。
若さと元気のもとは「幹細胞(かんさいぼう)」にあった!
細胞のなかでも注目したいのが、「幹細胞」と呼ばれる”おおもとの細胞”です。「受精卵は究極の幹細胞」とイメージしてみてください。
ご存じのように、たった1つの受精卵が分裂を幾度も繰り返して、各種の組織に変化し、私たちの体が作られました。この変化のことを「分化」といいます。
細胞には寿命があり、日々入れ替わっている話をしましたが、「分化」して内臓や血管や筋肉など特定の細胞になるものとは別に、何になるのか決まっていない状態で(未分化で)存在する細胞があります。それが幹細胞です。
幹細胞は入れ替わりに向けて、特定の組織に分化しないまま、他の細胞にまぎれて待機しています。そして、病気やケガなどが起きたとき、そこの部位の細胞を補充したり、修復したりして、ダメージの回復にあたるのです。
幹細胞は、自分を増やすことで一定数を保ちつつ、別の種類の細胞に変化することもできるという、特別な機能を持っています。
忍者のような、あるいはレスキュー隊のような、すごい働きを体内でしてくれているのですが、残念なことに、年齢とともに減少してしまいます。
幹細胞を無駄に消費していませんか
若さや健康維持のためには、幹細胞の減少スピードに「待った!」をかけること。そして、幹細胞がいきいきと働き、はぐくまれるような体内環境を作ることが大切です。
細胞を傷つけてしまう生活を無自覚に続け、幹細胞を酷使するのは、たとえるなら、限りある貯金をムダ遣いしているようなものです。
栄養不足や睡眠不足、過剰なストレスなどは、幹細胞の消費につながります。そうした状況に身に覚えのある方は、できるだけ改めていくことをおすすめします。
貯金が少なくなったら、浪費を控えて少しでも減らさないようにしようと考えますよね。幹細胞についても、それと同じように意識しておくと、習慣を改善するモチベーションが高まるのではないかと思います。
教えてくれたのは……
三島雅辰先生
1961年東京生まれ。日本医科大学医学部卒業後、日本医科大学付属病院第一外科(消化器外科)および同救命救急センターにて外科的な医療技術を習得。2008年、神奈川県川崎市に三島クリニックを開設。のべ20万人以上の患者を診療し、地域医療に貢献。その後、都内の再生医療クリニック院長として、多くの幹細胞治療に携わる。2019年に再生医療提供計画第2種の認可を取得、Gクリニック理事長及び院長に就任。自己脂肪由来幹細胞や培養上清液により、慢性疼痛や脳梗塞など1000人以上の患者治療実績を持つ。