気になるトピックスを毎日お届け!!

人生は、おいしいもので回ってる! 生粋の食い道楽、夢眠ねむさんインタビュー【食の原点からアイドル時代、主婦の現在まで】

「でんぱ組.inc」の初期メンバーとして活躍後、現在は東京・下北沢で書店「夢眠(ゆめみ)書店」を営む夢眠ねむさん。アイドル時代からイベントで手料理をふるまい、料理本を出版するなど、ねむさんと料理は切っても切れない関係です。

このたび「オレンジページnet」では、ねむさんの連載「グルメ布教活動もスタート! おいしいものに目がないねむさんが、みんなに〈布教〉したいねむきゅん流グルメとは……? 

気になる内容の前に、まずはねむさんにインタビュー。日々の食卓で大事にしていることや、今ハマっているものなど、気になるあれこれを2回にわたりお届けします。

インタビュー場所は、ねむさんが店主を務める「夢眠書店」

「おいしいものは、おいしいうちに」が夢眠家のモットー

――ねむさんといえば、昔から『オレンジページ』を愛読してくださっているとか。ありがとうございます! ここ「夢眠書店」の本棚にも、数々のレシピ本が並んでいますね。

実家にもレシピ本がたくさんあって、小さいころから読んでいました。でもレシピを見ても、実際はほとんど作らないんですよ! すみません(笑)!

――え⁉ こんなにあるのに……⁉

絵本や写真集のような感覚で眺めて、「だいたいこんな味かな?」とか「ここでクミンがくるか~」とか、レシピの工程を展開として楽しむみたいな(笑)。『オレぺ』さんは、私にとってファッション誌がわり。お悩み相談のページは、カルチャー記事として読んでいました。

――なんと。ユニークです。ねむさんがどんなふうに日々の料理と向き合っているのか、俄然気になってきました。ご実家は水産問屋で、姉のmaaさんはフランスで技術を学んだ料理人ですよね。そんなねむさんの〈食の原点〉は何でしょうか。

うちは家族全員が〈食い道楽〉なんです。常に新鮮な魚介類に囲まれた環境でしたし、大皿に盛られた母の手料理を好きなだけ食べるのが日常で。父のお得意さまの店によくみんなで食べに行ったり、母がフランス料理好きでクリスマスにコース料理を食べたりも。

そもそも家族それぞれ、食へのこだわりがめちゃくちゃ強くて。たとえば父は、あんパンは絶対にストーブで温めてから牛乳といっしょに食べると決めているんです。姉は研究者肌で、「『卵ボーロ』ってどうやって作るんだろ?」と袋の裏に書いてある原材料から自分で再現していたり。

食べること自体がエンターテインメントで、人生でいちばん楽しい瞬間なんだと信じて暮らしていました。


「夢眠書店」のカウンターでは、姉・maaさんが手掛けるカフェメニューの提供も

――素敵なご家庭ですね。

私自身、両親の食へのスタンスにめちゃくちゃ影響を受けているんです。母は家族全員がごはんを食べ終わるまで、キッチンに立ちつづける人だったんですよ。今の世の中、よくないと批判を受けそうだけど、母は常にできたてのおいしい状態をみんなに食べてほしいんです。

それに父は父で、猫舌を許さない人。味は温度と直結してるから、「最初は口の中をやけどしてでも食え! 慣れるから」って。だから私も、家では絶対にできたてを食べてもらいたい。
とくに揚げもの! 味が全然違うから。夫は悪いからと待ってくれるけど、「さめるから!おいしくなくなるよ」ってきつく言ってます(笑)。

――なるべくいい状態で食べてほしいという思いに、愛情と食べ物へのリスペクトを感じます。

でもじつは、母直伝のスキルがもうひとつあって。キッチンで〈本当にできたてのいちばんおいしいところ〉は、試食と称して食べておくという(笑)。

揚げたてのえびの天ぷらとかも、2本くらい「はぁ~♪」と食べておいて、夫にはもう全部食べられても後悔ない量を「好きなだけどうぞ!」と出すみたいな。そうやって、ほどよくバランスをとってます(笑)。

–{アイドル時代、料理を作るようになったのにはファンの存在が}–


絵本を中心に扱う「夢眠書店」。食がテーマの本もたくさん!

――実家を出て上京すると、食生活が一変しますよね。美大に通っていた学生時代やアイドル時代は、どんな食生活でしたか?

実家にいたときはもっぱら食べる係だったので、もうどうしようと思いました。ちゃんと作ろうにも、実家と違ってコンロが2口しかないし、食材をうまく使いこなせないから、自炊のほうが高くついちゃうし……。あらためて、母ってすごい人だったんだなぁと。

でも少しキッチンが広い家に引っ越して、ごはんやお弁当を作ってみるようになったら、だんだんまわりから「料理うまいよね」って言われるようになって。ただ当時は、とてもじゃないけど人様にはお出しできない! と思っていました。

転機になったのは、「夢眠軒」のイベントです。働いていたお店「ディアステージ」でお料理作りイベントが流行って、自分でもはじめてみたんですが、そこでいきなりお客さん200人分の料理を作ることになりまして……。

――200人分⁉ 仕込みもご自分で?

はい。自分で食材を発注して、昼間から仕込んで。「夢眠軒」は40回くらいやったんじゃないかな。作る量が量だし、場数も増えたし、お金をいただいているから変なものは出せないし。武者修行みたいな感じで、急に腕が上がりました。

でも今思うと、お客さんが「え?」ってメニューのときもあったと思います。食べたこともないブラジルのカレーを調べて作ってみたりとか(笑)。作るほうも食べるほうも、正解がわからない料理(笑)。


会話のあちこちに飛び出す〈夢眠節〉が魅力! 笑いの絶えない取材でした

――そこから、ねむさん=料理上手という印象が広がったんですね。それまでも料理を楽しまれていたのかと思っていたので、少し意外です。

ほめられてからですね、料理が楽しいと感じるようになったのは。だって自分の料理って、自分ではよくわからなくないですか?

――確かに。おいしさの基準って、人それぞれですもんね。

ただ、私は小さいころから、おいしさの正解を全部教えてもらって育ったと感じているんです。初めて自分で作った料理のまずさに衝撃を受けたときも、「あそこで熱しすぎたせいかな?」とか自分なりに間違いを探して、〈おいしい〉に寄せていくことができました。

だから、そういう人はどんどんおいしいものを食べるべし! 「自分のパートナーは料理が苦手なのかも」と感じている人も、ぜひ自分から相手を誘って、いっしょにおいしいごはんを食べに行ってほしいです。


〈PROFILE〉
夢眠ねむ(ゆめみ・ねむ)
2009年にアイドルユニット「でんぱ組.inc」に加入し、グループ活動のかたわら、映像制作やコラム執筆など多方面で活躍。19年にはグループを卒業し、芸能界を引退。現在は、下北沢の書店「夢眠書店」の経営、「たぬきゅんフレンズ」のキャラクタープロデュースなどを行う。レシピ本を出したり、カレーをプロデュースするなど、食へのこだわりも強い。主婦でもある。

撮影/馬場わかな メイク/新見千晶 文/唐澤理恵