「千と千尋の神隠し」で食べてみたいのは「イモリの黒焼き」⁉ 元トップ娘役の妃海風さん・華優希さん・実咲凜音さんが登場!【食のトビラ】

ポテトチップスとお酒に合うもの、発酵食品と焼き肉、フルーツと火鍋。好きなものは三者三様!
今回ご登場いただくのは、現在上演中の舞台「千と千尋の神隠し」にて、リン/千尋の母を演じている3人。元星組トップ娘役の妃海風(ひなみ・ふう)さん、元花組トップ娘役の華優希(はな・ゆうき)さん、元宙組トップ娘役の実咲凜音(みさき・りおん)さんという、元トップ娘役3人が華やかにそろい踏み!
妃海さんは2016年、華さんは2021年、実咲さんは2017年に宝塚歌劇団を退団。妃海さんと実咲さんは95期、華さんは100期というタカラヅカでは先輩後輩の関係ですが、今はそれぞれ一人の舞台人として活躍を続けています。
今回は「千と千尋の神隠し」の舞台裏や、「食」にまつわるこだわりなど、製作発表会見の後ににぎやかに話していただきました。関西弁が飛び交う熱気をそのままにお届けします。

――「千と千尋の神隠し」はキャストもスタッフもすごい人数ということで、そんな大所帯のカンパニーの中でどのようにコミュニケーションを図っていますか?
妃海さん:私は朝の挨拶を大事にしています。今回は本当に人数が多いので、稽古場では名前が書いてあるプレートをみんなつけているんです。それを見て、きちんと名前を呼びながら声をかけに行くようにしていて。
華さん・実咲さん:素晴らしい!
妃海さん:あと、ストレッチしているときもねらい目。人間って、体を動かしていたり何かをしているときにコミュニケーションをとると、ちょっと距離が縮まるような気がするんですよ。だからみんながストレッチをしているときに毎回違う人のところに行って、名前を呼びながら場面の話をしたり、その人の素敵なところを感想として伝えたりするのが私の方法。
実咲さん:覚えられないくらいの人数だもんね。演出のジョンが見てもわかるようにプレートには名前とニックネームがローマ字で書かれているのですが、最初、全員は覚えられなかった(笑)。初演に出ていらしたかたが半分くらいいる中で私は再演で入ったので、顔写真つきの出演者の一覧表を見ながら一致させていった感じです。そして、稽古場で近くにいる人からコミュニケーションをとっていきました。稽古場で隣にいる人に「なんて呼んだらいいですか?」「私は◯◯って呼ばれています」みたいな基本的な会話から。
華さん:私もあまり深くお話できていない人が出てきちゃっています。朝行ったらとりあえず全員に挨拶する、一日1回は全員と必ず言葉を交わすと決めていたのですが、やっぱり人数が多くて……。公演を重ねていく中で少しずつ深めていけたらいいなと思っています。

――宝塚歌劇団で同期だった妃海さん・実咲さんと、5期下の華さんは現役時代に接点はありましたか?
華さん:実咲さんが宙組にいらしたときに、入団後の組まわりでごいっしょさせていただきました。
実咲さん:ねー。素敵な子がたくさんいた100期生は私たちも意識しながら見ていました。その後、華ちゃんは私たちの同期の柚香光(ゆずか・れいさん、現花組トップスター)くんの相手役さんになったので、自分が退団してからも舞台を見に行くことがありました。「はいからさんが通る」の紅緒役がぴったりだった。最高。
――今は学年差なく和気あいあいとお稽古されている印象ですね。
実咲さん:すでにこの作品に出演経験のある2人からはリンがどうこうという話ではなく、「ここのタイミングで出たらやりやすかったよ」というような情報の共有なので、トリプルキャストのやりにくさを感じることなくいい関係性だったと思います。
妃海さん:うん、役作りはそれぞれやりながら、でも共有すべきところは話し合ってという感じでね。
実咲さん:役自体は個々で作っていたよね。それがベストなんじゃないかなと思っています。

――みなさん関西出身ですが、それぞれ違いますよね。妃海さんが大阪、実咲さんが神戸、華さんが京都。
妃海さん:(華さんを見て)京都っぽいもんね。
実咲さん:うん、京都っぽい!
華さん:そうですか?(笑)
妃海さん:(実咲さんを見て)神戸っぽい。
華さん:(妃海さんを見て)大阪っぽいですよね。
3人:(笑)
実咲さん:いかなごのくぎ煮!
妃海さん:え、いかなごって神戸?
実咲さん:勝手に神戸の名物にしてるけど違ったらどうしよ(笑)。いかなごの時期である春になったら、母が家でおしょうゆやお砂糖で甘辛く大量に炊いてご近所さんにあげたりするんです。ご飯にすごく合うの。
――私、関東出身でなじみがなくて……、いかなごって何ですか?
実咲さん:稚魚です。つくだ煮はスーパーでも売られているのですが、春先シーズンにしかない。
※「いかなご」は関東の「こうなご」のこと。
妃海さん:京都のものだと思ってた。大阪でおすすめしたいのは「ピッコロカリー」。梅芸(梅田芸術劇場)の前の阪急かっぱ横丁にもお店があるので、観劇される方にはぜひ足を運んでいただいて(笑)。そこのレトルトのビーフカリーですね。お店でいちばんおいしいスペシャルビーフカリーのソースを使っているから、レトルトなのにお店と同じ味。すっごくおいしい。
実咲さん:ロンドンに持っていったら?
妃海さん:いいね、持っていきたい。
華さん:でもお肉が入っていたら持っていけないかも……?
妃海さん:入ってる……。無理かー。ピッコロさよなら(涙)。華ちゃんは?
華さん:王道ですが、「阿闍梨餅」。あれははずせないです。
実咲さん:もちもちのね。おいしいよね。

–{それぞれの好物やジブリ飯のお話も!}–
実咲さん:今日はオレンジを持ちましたが、フルーツ全般が好きです。実家でいつも、食事の後にデザートとしてフルーツを食べていたんです。その習慣がずっと続いていて、いちごもチェリーも桃も、なんでもおいしくいただきます。なかでもいちばんのお気に入りは紅まどんな。皮は手でむけて、中身はゼリーみたいにプルプルでたまりません! フルーツはビタミンが入っているせいか、とっていると元気でいられる気がして、満ち足りた感じがするんですよね。
華さん:だから美肌なんですね。
妃海さん:ときめいているんじゃない? フルーツでときめき発光。
華さん:精神的なことなんですかね?
実咲さん:あはははは! そのとき旬のフルーツをそのまま食べるのがベストです。朝ごはんをしっかり食べたいタイプなので、ご飯かパンを食べてからフルーツを食べています。みかんを、8等分にしてからりんごみたいに薄皮までむいていくとすごく食べやすいし、おいしいところを余すところなくちゃんと食べられる。……っていうのをうちの兄が発見しまして(笑)。はい、次はゆうか(妃海さん)のじゃがいも。それって、ポテトチップスってこと?
妃海さん:はい、ポテトチップスが大好きです。以上です(笑)。私は新作が出たら片っ端から試します。カルビーが、その季節でいちばんおいしい食べ方ができる季節限定のポテトチップスを出していて、今は「春ぽてと」の「甘うま塩味」と「ふんわりサワークリーム味」。そのなかでも、私はじゃがいもの味が感じられる「甘うま塩味」派。季節を感じながら食べるのがすごく幸せ♡ じゃがいもってすごい。
華さん:エネルギーになりますよね。
妃海さん:そうよぉー。
実咲さん:お稽古場でポテトチップスをバリバリ食べている人、私初めて見た。普通はおにぎりとか、お稽古の合間で食べやすいものじゃない? バッと袋を開けて「食べる?」って。私ももらって食べちゃうんだけどね(笑)。
妃海さん:今は60gくらいかな。それがちょうどいいの。
実咲さん:カロリーはだいたいおにぎり2個半分。
妃海さん:それ知らなかった。おいしいからいいか! じゃがいも自体はおうちで肉じゃがにしたりするけど、やっぱりポテチにはかなわないということで。

華さん:私は甘酒とか豆乳とかヨーグルトが好きです。最近、菌活にハマってて。
実咲さん:筋活? モリモリの?
妃海さん:そっちじゃないの!
華さん:違いまーす、おなか(笑)。あまり便通がよくなくて、そろそろどうにかしたいなと思っておなかで菌を育てようと。で、甘酒と豆乳、甘酒とヨーグルトの組み合わせがすごくいいと聞いたので、毎日それを食べています。納豆も一日のどこかで食べたりと、発酵食品を多くとるようにしてお水を毎日2l飲んでいたら快便に。意識したらこんなに変わるんだということを実感しています。
実咲さん:甘酒とヨーグルトって不思議。おいしいの?
華さん:すごくおいしいというわけではないんですけど、私は甘酒がすごく好きなので、酸味少なめのヨーグルトと合わせてよーく混ぜたらいい感じになります。甘酒は酒かすじゃなくて米麹のほう。ヨーグルトは商品によって入っている菌が違うため、いろいろ試して体にいちばん合うものを探しています。
妃海さん:最近ではどれがベストだった?
華さん:豆乳ヨーグルトです。あと、今試しているのが腸内の酪酸菌を育ててくれるもの。まだ全然わからないんですけど……。
妃海さん:でも調子がいいのなら効いているよね。
華さん:毎日ちゃんとお通じがあるということが人生で一度もなかったので、めちゃくちゃ効いていると思います。
妃海さん・実咲さん:おーーーー、それはすごい!
実咲さん:ゆうかはポテチばっかり食べているから心配ね。
華さん:だから腸もみマッサージをしています。
妃海さん:そう、うまいんですよ。
実咲さん:華ちゃんにやってもらっているの?
華さん:(妃海さんのおなかをさわりながら)ここ! 効いているかわからないですけど(笑)。
妃海さん:効いてる、効いてる! こうやってまわりの人に生かされております(笑)。

――外食で、みなさんのテンションが上がるお店や料理について教えてください。
妃海さん:私はお酒が好きなので、お酒に合いそうな創作系のフレンチや和食に出会うとワクワクします。小さくて、でもこだわりを持ってやっている料理屋さんで出てくる、今まで見たことのないお酒のアテ系のお料理。
華さん:たとえばどんなのがあるんですか?
妃海さん:冬はかきにハマっていて、どう調理するかってお店によってそれぞれあるじゃない? こないだはおそば屋さんで生がきが出てきたの。日本酒といっしょにいただいて、すごくおいしかった。
華さん:おそば屋さんに生がきってあまりないですよね。
妃海さん:そうでしょ? その意外性はこだわりと自信があるってことだから、それを感じられるのがうれしいよね。
実咲さん:お酒好きならではだね。私は火鍋。とくに「天香回味(テンシャンフェイウェイ)」の火鍋が大好きです。王道の味とちょっと辛い2種類の薬膳スープに、「え、これどこで売ってます?」みたいな大きなきのことか金色のきのことか、それだけで健康になれるみたいな気がして。やっぱり女子は好きなんですよ。だからみんなで集って行くの。辛くないスープもあるから、辛いものが苦手なゆうかでも食べられるよ、きっと。今度みんなで行こう。華ちゃんは?
華さん:私は焼き肉ってなると俄然テンションが上がります。大勢で行くのが楽しいし、お肉を食べると力もつくので。
妃海さん:どこの部位が好きなの?
華さん:タンとユッケが好きです。
実咲さん:タンは分厚いのよりも薄っぺらいのがよくない?
妃海さん:あー、わかる。
華さん:私は分厚いのが好きかも……。
妃海さん:それもわかる。どっちも好き(笑)。
華さん:火鍋も大好きです。火鍋は家でも作ります。
妃海さん:だから家にきのこがいっぱいあるのか。「きのこが家にある、まだいっぱいある」っていつも言ってるの。「それ、栽培してるの?」みたいな(笑)。
華さん:あはははは。火鍋はテンション上がるんですよ、体にいいし。
実咲さん:元気になるよね。

――ジブリ作品には食事のシーンが多く出てきますが、「千と千尋の神隠し」で食べてみたいものはありますか?
実咲さん:リンのあんまん、いいよね。千尋もリンもおいしそうに食べていて。
妃海さん:私はやっぱりイモリの黒焼きを食べたいんですよ。お酒に合いそうなんだよね。
華さん・実咲さん:あー!
妃海さん:この前お稽古で釜爺が間違えて「イモリの燻製」って言っちゃって。みんな「それ、絶対おいしい!」ってなったよね(笑)。
実咲さん:スモーキーでね。
華さん:燻製の香りがお酒に合いそう。
妃海さん:黒焼きのバリバリッという感じって代わるものがなさそうじゃないですか。調べたらタイ産の食用ヤモリの真空パックがあったんですよ。でもね、色彩がすごくて本気のやつなんですよ。買ったらダメな気がして手は出せませんでした。
華さん:食用のヤモリがあるんですね。イモリの黒焼きはどんな味なんでしょうね。
妃海さん:たぶん、肝みたいな苦みがちょっとあって、すっごくおいしいと思うんだよね。
実咲さん:ハクが千尋にくれるおにぎりってハクがにぎったのかな。
妃海さん:うん。
実咲さん:けっこう塩っけがあるのかな。
妃海さん:おまじないをこめているから、しょっぱいかもしれないね。
実咲さん:千尋は疲れているし泣いているし、汗もかいているだろうからそのしょっぱさがしみただろうね。なんでジブリに出てくる食べ物ってあんなにおいしそうに見えるんだろう。
華さん:本当にそうですよね。すごくこだわって描かれているんでしょうね。
妃海さん:ジブリアニメの制作のドキュメンタリー番組を見たら、実際に食べているところを高性能カメラで撮って、それを何度も何度も描いて。ただ一回お肉を食いちぎるだけでも研究を重ねて描いているのは、「食べること=命」という駿さんの思いがあるからだと思うんですよ。食事のシーンにエネルギーがこめられているから、見ている私たちも目がいっちゃうんでしょうね。なので、食べるシーンを演じるのにもこだわらないといけないなと思っています。きっとジブリファンもじっくり気にするところ。食事のシーンも大切にしたいです。

テンポのいい3人のおしゃべりに、あっという間に過ぎてしまうインタビュー時間。食いしんぼうたちの「食」の話は尽きません。
次回は「美」のこだわりについてうかがいます。お楽しみに!
>>食材をもってノリノリでポージングしてくれた3人の写真をまとめて見る
ひなみ・ふう/元宝塚歌劇団星組トップ娘役。
2009年に95期生娘役として入団。宙組公演「Amour それは…」で初舞台を踏み、星組に配属。2012年「めぐり会いは再び 2nd~Star Bride~」で新人公演初ヒロイン、翌年の「南太平洋」で東上公演初ヒロイン。2015年「ガイズ&ドールズ」でトップ娘役に就任。2016年「桜華に舞え/ロマンス!!」にて退団。「千と千尋の神隠し」には2022年の初演より参加。
▶︎Instagram:@fuhinami_official
はな・ゆうき/元宝塚歌劇団花組トップ娘役。
2014年に100期生娘役として入団。月組公演「宝塚をどり/明日への指針/TAKARAZUKA 花詩集100!!」で初舞台を踏んだのち、組まわりを経て花組に配属。2017年「邪馬台国の風」で新人公演初ヒロイン後、「はいからさんが通る」で東上公演初ヒロイン。2019年「A Fairy Tale -青い薔薇の精-/シャルム!」でトップ娘役に就任。2021年「アウグストゥス-尊厳ある者-/Cool Beast!!」にて退団。「千と千尋の神隠し」には2023年の御園座公演より参加。
▶︎Instagram:@yukihana_official
みさき・りおん/元宝塚歌劇団宙組トップ娘役。
2009年に95期生娘役として入団。宙組公演「Amour それは…」で初舞台を踏み、花組に配属。2010年「麗しのサブリナ」で新人公演初ヒロイン、同年の「CODE HERO」でバウホール・東上公演初ヒロイン。2012年に宙組へ組替えし、「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」でトップ娘役に就任。2017年「王妃の館 -Château de la Reine-/VIVA! FESTA!」にて退団。「千と千尋の神隠し」には今回が初参加となる。
▶︎Instagram:@misaki_rion


【公演日程】
2024年3月11日(月)~30日(土)
東京都 帝国劇場
2024年4月7日(日)~20日(土)
愛知県 御園座
2024年4月27日(土)~5月19日(日)
福岡県 博多座
2024年4月30日(火)~8月24日(土)
イギリス ロンドン・コロシアム
2024年5月27日(月)~2024年6月6日(木)
大阪府 梅田芸術劇場 メインホール
2024年6月15日(土)~6月20日(木)
北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
【スタッフ】
原作:宮﨑 駿
翻案・演出:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子
【キャスト】
千尋:橋本環奈 上白石萌音 川栄李奈 福地桃子
ハク:醍醐虎汰朗 三浦宏規 増子敦貴(GENIC)
カオナシ:森山開次 小㞍健太 山野 光 中川 賢
リン/千尋の母:妃海 風 華 優希 実咲凜音
釜爺:田口トモロヲ 橋本さとし 宮崎吐夢
湯婆婆/銭婆:夏木マリ 朴 璐美 羽野晶紀 春風ひとみ
兄役/千尋の父:大澄賢也 堀部圭亮
父役:吉村 直 伊藤俊彦
青蛙:おばたのお兄さん 元木聖也
頭:五十嵐結也 奥山ばらば
坊:武者真由 坂口杏奈

撮影/天日恵美子 文/淡路裕子