45歳独身。介護離職は絶対NG!認知症の母を守り、自分も倒れない介護術とは?
遠方で一人暮らしの母が認知症に。仕事を辞めて実家に戻ろうと思うのですが、まわりに止められています。

遠方で一人暮らしの母(77歳)が認知症となり、兄と私と2人で遠距離介護を続けてきましたが、いよいよ一人で生活するのがむずかしくなってきました。私は独身なので今の仕事を辞めて実家に戻ろうと思っています。ところが兄や会社の人から「仕事は辞めないほうがいい」と反対され……。もちろん、収入は減りますし、介護中心の生活が大変なのはわかっています。でも私としては、母と過ごせる時間はそんなに長くないので、なるべくいっしょに暮らしたいと思っています。私の考えは甘いのでしょうか?
(45歳・女性)
伊藤聡子さんの回答
「介護」か「仕事」かの二者択一ではなく、「介護しながら働く」道を考えてみてください。

じつは私の父も認知症で、自宅での介護がむずかしくなり、最後は施設に入居していたんですね。コロナ禍でほとんど会えないまま亡くなったのですが、もっと父のために時間を費やせたのでは……と悔やむことも。ですから相談者のかたの気持ちはよくわかりますし、仕事を辞めてお母さまのそばにいたいという思いは、とてもすばらしいなと思います。
ただ認知症の場合、体は元気なことが多いので、介護が長期にわたった場合、自宅介護の負担は相当なもの。「介護することが親孝行」「私が介護をしなければ」という義務感だけでは行き詰まってしまいます。何よりお母さまが、残りの人生をすべてかけてまで娘に介護をしてほしいと思うでしょうか。きっと「自分の人生も大切にしてほしい」と願うはずです。
今のように仕事か介護かの二者択一ではなく、その間の「働きながら介護する」という道を考えてみてください。今は、介護休暇をはじめ、リモートワークや時短勤務など、介護と仕事を両立するための制度※1がたくさんあります。もし介護休業※2がとれるのであれば、しばらく自宅に戻ってお母さまの介護をしてみても。いっしょに暮らすと、在宅介護のリアルな面が見えてくるかもしれません。同時に、地域の介護サービスを利用しながら仕事を続けられる方法がないか調べてみましょう。いきなり仕事を辞めるのではなく、それから再度検討してみてはいかがでしょうか。
※1 介護と仕事を両立するための制度
介護休業制度、介護休暇制度、短時間勤務制度、時間外労働の制限(残業免除の制度)などがある。2025年4月から、介護離職を防止するために「介護離職防止のための個別の周知・意向確認、 雇用環境整備等の措置」が義務化された。
※2 介護休業制度
要介護状態にある家族の介護を行うために業務を休業できる制度。「介護休暇」が対象家族1人につき年間で5日間しか取得できないのに対し、「介護休業」は、通算93日間の休暇を最大3回に分けて取得することができる。
お悩み回答者 伊藤聡子さん
フリーキャスター・事業創造大学院大学客員教授。1967 年、新潟県生まれ。大学在学中に「サンデーモーニング」(TBS系)でデビュー。キャスターを務めたのち、NYフォーダム大学に留学。事業創造大学院大学修了、MBAを取得。「ひるおび」( TBS系)、「情報ライブミヤネ屋」(日本テレビ系)などでコメンテーターとしても活躍。
馬田草織さんの回答
心の健康を守るためにも、仕事を続けて、社会とのつながりをキープすることが大事。

きっとお母さまととても仲がよかったのでしょうね。そう考えるとお母さまのそばで介護するというのは選択肢のひとつではありますが、「仕事を辞めて社会とのつながりを絶つ」というのはリスクが大きい気がします。介護や育児などのケア労働は、どうしても孤立・孤独を感じやすくなります。私も娘が1歳になるまでの期間は、それまで仕事中心だった生活が一転。大人と話さない日々が続き、娘と2人で無人島で暮らしているかのような気持ちに。
仕事を辞めてしまうと、キャリアや収入源が絶たれてしまうだけでなく、外とのつながりが激減します。たわいのない世間話やちょっとした愚痴を言う機会すらなくなってしまう。でもじつは、そういう何気ない他者との交流が心の健康を保つのに重要だったりします。お母さまのケアも大事ですが、ご自身が健康的に暮らすことも同じように大事。できるだけ今の生活を変えずに、社会とのかかわりをキープしていく方法を考えてみてください。
そのためには、まず会社に相談すること。会社にとっても従業員の離職は大きな損失のはずです。最近はさまざまな支援制度がありますから、介護と両立できる働き方が見つかるかもしれません。介護の専門家にも、どのようなサービスが利用できるのかきいてみましょう。きょうだいにも協力してもらい、あらゆるところに相談し、手を尽くして、仕事を辞めずにすむ方法を模索してみてください。
お悩み回答者 馬田草織さん
文筆家・ポルトガル料理研究家。1970 年、東京都生まれ。出版社勤務を経て独立。食や旅を軸に雑誌や書籍、WEBメディアなどで執筆活動を行う。ポルトガル料理とワインを楽しむ教室「ポルトガル食堂」を主宰。著書に『塾前じゃないごはん』(小社)、『ホルモン大航海時代』(TAC出版)など。
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取材・文/太田順子 イラスト/松元まり子






