元宝塚歌劇団 花組トップ娘役・花乃まりあさん「家には常に焼きいもがあります」【食のトビラ】

「食」は生命力の源。おいしくて体にやさしいものを気のおもむくままに食べるのが幸せ
今回お話をうかがうのは、元花組トップ娘役の花乃まりあ(かの・まりあ)さん。「食べることが大好き!」という花乃さんの食事情を深掘りします。
食べることと作ることがセットになっているのが花乃さんにとっての「食」
――花乃さんのインスタグラムからは、食べ物への愛が伝わってきます。花乃さんは「食べること」をどのように考えていますか?
食べることは「生きること」といつも思っています。すごくシンプルなことですが、生命力の源ですよね。体力的にも精神的にも元気がないときは、ごはんが食べられないじゃないですか。ごはんが食べられるということは「私は大丈夫」と思えるとき。私の場合は食べることに作ることがプラスされて、それが生きることにつながっていると思います。
――料理を作ることもお好きということで、やはり自炊が多いですか?
もちろんおいしいごはんを食べに行くのも大好きですが、自炊派です。外食をしたり旅行したりしても、家に帰ってきて自分でごはんを作って食べると、「あー、やっぱりおうちのごはんはいいなぁ」と思いますね。料理を作る時間も大好きなんです。きちんと生活している感じがするじゃないですか、「私、ちゃんとやっているわ」って(笑)。
料理雑誌やレシピサイトを見ることも好き。おいしそうな料理の写真を見たり、「今日は何を作ろうかな」と考える時間もワクワクします。作ったものを食べておいしくて、さらに素敵な写真が撮れてSNSに載せられたらまるっと楽しめますよね。SNSに上げているのはなんとなく見栄えがいいものだけで、納豆ご飯にあじの干物みたいなシンプルな日ももちろんありますが(笑)。
あと、体に入るものがわかっていることは不安がないですよね。自分で材料を買ってきて自分で作ったら、全部がわかるので安心感があります。
――もともとよく料理をされていたんですか?
前回の記事で朝月希和(あさづき・きわ)ちゃんも言っていましたけど、私も母からの影響が大きいです。母がすごく料理が好きで、おもてなし上手でした。一人暮らしをしたときに、「お母さんが作ってくれたあの料理が食べたいから、作り方を教えて」ときいて作ったことが料理を始めるきっかけになった気がします。実家にいたころは、おせちのお重をとてもきれいに詰めるなど季節の食事も大切にしていた母の手伝いをよくしていました。自分で食べるために何かを作るようになったのは、親もとを離れてからの経験です。
――おせちを全部手作りするって、すごく手間がかかりますよね。そんなお母さまがいらっしゃるのは心強いですね。花乃さんは3食きちんと食べられますか?
朝は軽めですが、3食とります。私は1食の量が少ないんですよ。その代わり、何かをちょこちょこ食べています。夕食をしっかり作って食べることが多いですね。夫婦で食卓を囲めるのも夜ですし。
――その食事風景もいいですね。だんなさまが好きなものを作ったり、リクエストにこたえたりされるんですか?
ありますよ。男性の食べたいものってけっこうシンプルですよね。昨日は「何が食べたい?」ときいたら「白米」と返ってきて、「白米!? それ主食じゃん」みたいな(笑)。前日、前々日が洋食だったからたぶん白いご飯が食べたかったんだと思うので、それに合うおかずを考えました。夫は「今日は絶対とんカツ」とか「今日は必ずオムライス」とか言うタイプではないから、そういうざっくりした答えの中からヒントを拾ったりしています。





――そうしてさまざまな料理を作られている中で、食卓に登場する頻度が高い料理はなんですか?
鶏だんごの煮ものです。先ほど話した一人暮らしをしたときに食べたかった母の料理で、私が料理が好きになったきっかけのもの。鶏ひき肉とねぎとしいたけとたっぷりのしょうがを入れて作った肉だんごを、おしょうゆとみりんとお酒のちょっと甘辛の味つけで煮るんです。ポン酢を使ってもおいしいんですよ。それだけでもいいですし、こんにゃくや野菜を入れて筑前煮のようにしてもいい。あればゆずの皮をちょっと削ってのせてもいいですし。ホッとできる母の味で、大好きだからしょっちゅう作っちゃいますね。夫も好物なんですよ。自分に子どもができたらまた絶対に作ってあげたいです。



――なんていいお話! 家庭料理はもちろん、おもてなしもとっても上手そうな印象です。
宝塚にいたころから、好きでした。一人暮らしを始めてから、同期や下級生をよんでいっしょにごはんを食べるのが楽しみでした。おもてなしされるより、おもてなしするほうが好きかもしれないですね。パーティメニューを考える時間は胸が躍ります。料理雑誌を見て、バランスを考えて、相手の好みなども考慮して……そういう時間がすごく好き。器も少しずつ集めたいなと思っているんですけど、まだ全然。年齢を重ねながら自分のお気に入りを少しずつそろえていきたいですね。
焼きいもが大好き! 使い勝手がよくさわやかなレモンも食卓に欠かせない
――食べ物では何がいちばんお好きですか?
うーん、いっぱいありますけど、いも・栗・かぼちゃが本当に大好きなんです。特にさつまいもは常に家にあります。
――どうやって食べることが多いんですか?
家にストックしてある分は、焼きいもにしています。以前はオーブンで90℃で180分くらいじっくり焼いていたのですが、最近簡単な作り方をネットで見つけたんですよ。炊飯器にさつまいもと水1カップを入れて炊くだけで幸福の焼きいもになる※、というのでさっそくやってみたら本当においしくて……! 私好みのねっとり系の焼きいもが、スイッチひとつでできちゃうのがうれしい。それをお稽古に持っていくこともありますし、すごくおなかがすいて帰ってきてごはんを作る前にちょっと何か入れたいなというときにも重宝します。お菓子とかがっつりしたものを食べてしまうより、GI値が低くて腹もちがいいさつまいものほうが断然いい。朝に時間がないときは朝ごはん代わりにもなります。炊飯器で作ってラップをして、冷蔵庫に常備!
※編集部注:炊飯器の機種によっては作れないこともあるようです。取扱説明書を確認してから作るようにしてください。
――それ、すごくいいかも。ちょっとつまむだけでおなかの足しになりますね。
クタクタで帰ってくると、晩ごはんを作りはじめるパワーすらないときがあるじゃないですか。そんなときに本当に便利です。罪悪感もないし、なにより大好きだから食べると幸せな気持ちになれるんです。――今日、いっしょに撮影したレモンの魅力についても教えていただけますか?
好きな食べ物のなかでも、撮影ではちょっと素敵に見えるものがいいかなと思ってレモンにしてみました(笑)。母がいつもはちみつレモンを作ってくれていたので、レモンはふだんから身近にある食材でした。国産の無農薬のレモンを使い、皮ごとスライスしたレモンをはちみつに漬けるだけですが、冬はお湯割りにしたりヨーグルトにかけたり、夏は炭酸で割ったりして日常的に取り入れていました。
主役の食材ではないですが、いろいろと形を変えて使うことができるのが魅力的です。お菓子を作るときにも使いますし。皮まで全部使うため、国産無農薬のレモンを見つけると必ず買っちゃいます。今は「発酵塩レモン」が大活躍しています。粗塩にレモンを漬けたもので、これさえあればだし入らず。調味料として使うことが多いです。
――どんな料理に使っているんですか?
レタスと豚肉の上にちょっとのせて蒸したり、鶏肉といろいろな野菜を入れたスープにコンソメ代わりとして入れたり。お肉と野菜のうまみに塩レモンが加わり、味に深みが出ます。塩麹に近いかもしれません。
――手作り調味料ですね。調味料つながりでうかがうのですが、市販の調味料も使いますか?
もちろんですよー。ミツカンの「カンタン酢」や「味ぽん」はよく使いますね。特にポン酢。いろんな種類があるけれど、結局「味ぽん」に落ち着くみたいなところがあります。これからの季節はさっぱりしたものが食べたくなるから、必須です。
あと、カルディなどで売っているタケバヤシの「むーひ」というキムチベース。角切りにして塩もみしたきゅうりとたこを合わせてこれであえたら、超おいしいです。野菜や海鮮を合わせるのがおすすめ。トマトもいけるんですよ。キムチ鍋やキムチチャーハンは間違いないです。



歌の多い舞台のときにはなぜか牛肉を求めてしまう!?
――おいしいものを食べに行くのも好きということで、大きな山を越えたあとの花乃さんのごほうび食は何ですか?
おすしですね。おすしは家でにぎれないから、特別な食事となるとおすしをいただきたいなと思います。光りものが大好きで。いちばん好きなネタは、うーん……あじかな。大好きです。あー、食べたい!(笑)
――これからが旬ですもんね。お酒も飲まれるとか。
はい、日本酒が好きなので、おすしと日本酒があれば間違いなく最高ですね。それは本当に特別なことで、もう少し日常的に自分の機嫌をとるならスイーツです。「この大事な撮影が終わったらあそこのケーキを食べよう」とか。
――よろしければ、おすすめのお店を教えてください。
いっぱいあります。今日は撮影で使ったレモンつながりで、「サンデーベイクショップ」のレモンクッキーを。ここは、トレイベイクやスポンジケーキ、ブラウニー、スコーンなど焼き菓子専門のお店です。季節の果物がふんだんに使われていて、今ならルバーブやパイナップル。それをライ麦や全粒粉と合わせたりして、ほかではなかなか食べられない焼き菓子をたくさん売っているんです。自分でお菓子作りをするときに参考にしたいと思うような組み合わせ。じつは今日も行ってきたんですけどね(笑)。レモンクッキーは、レモンのアイシングがかかった長方形のシンプルなクッキーなのですが、初めて食べたときは気が遠くなるほどおいしくて。カルダモンが入っていて、出会ったことのない味でした。また食べたいなと思って行ったら売っておらず、お店の人にきいたら「おいしいレモンが手に入ったときだけ作るんです」と。それがすっごくおすすめです。
――わー、とてもおいしそうですね! 日常の食事では何か気をつけていることはありますか?
家での食事では圧倒的に鶏肉の出番が多いです。お客さまが来て「今日はから揚げにしよう」と思ったらもも肉を使いますが、いつもは鶏の胸肉やささ身を選んじゃいます。どっちにしようかと比べたときに、ヘルシーなほうにしています。ささ身がいちばん多いかな。お酒と塩麹をまぶしてチンしてほぐしておけば、サラダにのせたりいろいろ使えますし。



――たとえば舞台のお仕事で体力を使うとか、生活リズムがいつもと変わったりしたときに意識的に食べる物を変えることはありますか?
いつもの食卓では、牛肉の登場回数がもっとも少ないんですよ。鶏、豚、魚、たまに牛という感じなんですけど、歌が多い舞台のときはなぜか牛肉が食べたくなるんですよね、昔から。
――おもしろいですね。なぜなんでしょう。
なぜかわからないんです(笑)。パワーが欲しいときはお肉なんでしょうね。豚肉は疲れが取れるというし、鶏肉は良質なたんぱく質がとれると聞きますし。牛肉を食べるとスタミナがつくような気がします。あとは脂がのどにいいのかな? 体力を使っているときは牛肉を欲しますね。
――お仕事などで忙しく、なかなか料理ができないときはどうしていますか?
作り置きもしています。忙しくなりそうな日は朝のうちに仕込んでおいたり、今週は本当に忙しくて休みがないぞと思ったら前のお休みの日に作っておいたり。外にちょっと食べに行ったりデリバリーするときももちろんありますが、私の場合は作るほうが心が落ち着くんです。そこをきちんとやれていることが自信につながると思うんですよ。食べること、料理することのどちらかひとつが欠けるとダメで、それは私にとってとても大きなことなんだというのが長年の生活でなんとなくわかってきたから、大事にしています。……おなか空きますね、この取材(笑)。
目を輝かせなから「食べること」について話してくださった花乃さん。食の魅力が花乃さんの話術でさらにアップ。取材後は花乃さんもスタッフも「お腹すいた〜」状態になってしまったのでした。
次回は花乃さんの「美」についてお話をうかがいます。お楽しみに!
かの・まりあ/元宝塚歌劇団花組トップ娘役。2010年に96期生として宝塚歌劇団に入団。月組大劇場公演「THE SCARLET PIMPERNEL」で初舞台を踏み、宙組に配属。12年「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」で新人公演初ヒロイン。その後宙組で二度の新人公演ヒロインとバウホール公演ヒロインを務め、14年に花組に組替えして「エリザベート」で四度目の新人公演ヒロインに。同年、花組トップ娘役に就任。17年「雪華抄/金色の砂漠」にて宝塚歌劇団を退団。退団後は舞台を中心に活躍しつつ、日本テレビ「ZIP!」のレポーターも務める。23年8月からシアタークリエほかにて上演される「SHINE SHOW!」に出演。

真夏の夕暮れどき。オフィス街の一角にある複合オフィスビルの中庭に豪華な野外ステージが建てられ、派手な照明と爆音の中、音楽ライブが行われている。ただし、ただのライブではない。このビルにオフィスを構えるさまざまなジャンルの会社員が参加し、歌唱力を競う夏のカラオケ大会なのだ。86組による予選大会を勝ち抜いた23組の出場者のなかから、本日チャンピオンが決まる――。一方、その裏ではさまざまなトラブルが発生していて……。
【CAST&STAFF】
出演:朝夏まなと 小越勇輝 花乃まりあ 木内健人 石坂 勇 増本 尚 柳 美稀 栗原沙也加 西村直人 久ヶ沢 徹/中川晃教
作:冨坂 友(アガリスクエンターテイメント)
演出:山田和也
【公演詳細】
日程:2023年8月18日(金)〜9月4日(月)
会場:シアタークリエ
ワンピース31900円(CELFORD/CELFORD ルミネ新宿1店) 靴15400円(ダイアナ/ダイアナ 銀座本店) その他/スタイリスト私物
※すべて税込み価格
【問い合わせ先】
CELFORD ルミネ新宿1店☎︎03-6279-4750
ダイアナ 銀座本店☎︎03-3573-4005

撮影/天日恵美子 本人提供 ヘア&メイク/清水尚子 スタイリング/槇 佳菜絵 文/淡路裕子