超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/お金 親にききづらい、「お金のこと」。どうやって切り出せばいい? 私50代、両親70代。健康で長生きしてくれさえすれば充分だと思う一方で、いざというときに困らないよう、元気なうちに親の〈お金事情〉を把握しておきたいと思っています。「年金はいくらもらっているのか」「老後は今の蓄えで足りそうか」「通帳はどこにまとめてあるのか」など、ききたいことはいろいろあるのですが、なかなかうまく切り出せず……。会話の中でそれとなく話題を振ってみても、冗談ではぐらかされたり、真剣に取り合ってくれなかったり。お互い腹を割って、話し合うにはどうすればいいのでしょうか。(52歳・女性) 安藤優子さんの回答 こちらから一方的に聞き出すのではなく、ご両親の立場に寄り添った「きき方」「言い方」を。 お悩み回答者 安藤優子さん たしかに、子どもから親にお金のことはききにくいですよね。ご両親も、いきなり自分たちの懐事情について根掘り葉掘りきかれても戸惑うでしょうし、警戒心を抱かせてしまうことにもなりかねません。いちばん大切なのは、「お父さん、お母さんのことが心配だからきいている」という気持ちを前面に出して伝えることではないでしょうか。「きき方」「言い方」ひとつで、相手の受け取り方も、答えもガラッと変わってきます。「自分たちが困るから」ではなく、あくまで、「お父さんとお母さんが困るのがいやだから」「二人の意向に沿った形にしたいから」というスタンスで話をしてみてください。たとえば、「このまま二人とも健康で長生きしてくれることを本当に願っている。でも人間って、何があるかわからないよね。万一のときは、お父さん、お母さんの大切なものを守りたいし、二人の希望をかなえたい。そのためにいろいろ教えてほしい」というふうに。ご両親もそう言われたらいやな気持ちにはならないでしょうし、「それならば」と、話してくださるのではないでしょうか。私は、これまで仕事で多くのかたを取材してきましたが、「きちんと相手側に立ってきかないかぎり、答えは引き出せない」ということを身をもって体感しています。インタビューの途中で、相手が怒って帰ってしまったことも、一度や二度ではありません(苦笑)。ご両親の気持ちに寄り添って話を聞く。これに尽きると思います。 安藤優子さん キャスター/ジャーナリスト。1958 年生まれ。上智大学外国語学部卒業。「ニュースJAPAN」「FNNスーパーニュース」「直撃LIVE グッディ!」(いずれもフジテレビ系列)のメインキャスターを歴任。社会学者として挑んだ近著は、『自民党の女性認識―「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)。 「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年3月2日号より)