人気料理家・飛田和緒さん。この連載は飛田さんの飾らないお昼ごはんをのぞき見させてもらいます。使うのは20年近く住む神奈川県・三浦半島の旬の食材! さて今日はどんな「さもない」お昼が見られるのでしょうか……?
>>バックナンバーはこちら
梅雨に入ったとたん、部屋の中の湿度計がぐっと高い値になりました。そして暑いのなんのって。肌にまとわりつく暑さが7月に入ってからもうずっと続いています。先ほどニュースで、高知が37℃だったことを知り、今年も夏が長くなりそうだな……と。一機に気温が上がりましたから、みなさん体調に気をつけてお過ごしください。
直売所で夏野菜をたくさん購入!
さてさてそんな梅雨の合間に、近所の直売所に買い出しに行ってきました。ズッキーニ、きゅうり、いんげん……あれ? なすがない。先月はなすの育ちが遅れているんだよねーと聞いてましたが、まだなのか? 伺うと、少しだけ並んでいたらしいのですが、数が少なく、やはりなすねらいのかたが多くいらしたそうで、出遅れました。ならばと、次の直売所へ。
「あった〜!」。1袋だけぽつんと残ってました。ツヤツヤのなすにようやくお目にかかれました。そして、ここでもまたきゅうりを買ってしまう。
小さなきゅうりだったんです。切らずにそのまま漬けものにしたり、炒めたり、一本をまるごとポリポリとかじるのがたまらないんです。と、一人いい訳しながら買い物をすませると、店主がおまけで、「昨日のだけどきゅうり持っていって」と大きくてイボイボがたっぷりとついた四川きゅうりをくださった……。きゅうりがたくさん。うれしいけど、どうしましょうー。
トマトは初の地元産フルーツトマト。写真を撮ったそばから、ひとつふたつと口に放り込んでしまい、冷蔵庫に入ることなく、食べきってしまいました。トマトの青臭さがたまらなくおいしくて、止まりませんでした。
きゅうりを大量消費!『きゅうりとズッキーニのスパイスカレー』
さぁ、大量のきゅうりを前に考える。炒めもの、煮もの、漬けもの、干せば縮んでこれくらいの量ならばあっという間におなかに納まるけど、今は梅雨で干せないし……ということで、カレーにすることにいたしましたよ。
きゅうり、ズッキーニ、いんげんを1~2cm角に切って、しょうゆ漬けにしておいた新にんにくを刻んでいっしょに炒めて、カレースパイス(わが家はカルダモン、コリアンダー、クミン、花椒、パプリカ、ターメリック)をたっぷりと加えてさらに炒めてから蒸し煮に。
夏野菜だからたっぷりと水分が出て、大量だった野菜の量が半分くらいに一気に減ったところで、今度はふたを取ってフルーツトマトを2個だけ追加して煮つめて水分をとばし、塩としょうゆで味つけ。
炊きたてのご飯にかけ、新しょうがで作ったばかりの梅酢しょうがを添えました。カレーにはしょうゆを必ずといっていいほど入れます。カレーの味が強いから、しょうゆらしさは出ませんが、発酵調味料が入ると深みが出ますよね。特に野菜だけのカレーのときにはしょうゆでうまみをプラスしたい。「しょうゆって偉大だな」と、カレーを作るたびに思います。
夏野菜は火の通りが早いから、あっという間に調理完了。部屋じゅうにスパイスのいい香りが漂っています。気持ちだけでも梅雨のジメジメを吹き飛ばしたい気分でしたら、こういうときにカレーっていいですね。香りよし、味よし、食べた後のすっきり感がたまりません。
すぐに食べないなすときゅうりは塩漬けに
探し回って買ったなすは薄切りにして、塩をして冷蔵庫へ。小さなきゅうりも塩をして同じように冷蔵庫へ入れました。塩の分量はいつも決めております。洗って切ったきゅうりとなす、それぞれはかりではかって、きゅうりの重さの1%、なすは2%の塩をします。なすも1%でもよいのですが、かなり薄塩です。きゅうりは塩をしっかりと含むので1%がベスト。ただ、塩で下漬けしてから、味噌漬けにしたり、辛子漬けにしたりするときには少し塩の分量は減らしておくといいでしょう。または塩けを洗ってから漬け直すというやり方もあります。
なすは水けがしっかりと出たら、甘酒とみそを合わせて漬けものにしたり、かるく絞ったものをサラダにしたり、炒めものにも。塩をしてあるから炒めものもあっという間に火が入るんです。
冷蔵庫にそのまま入れておくとしぼみますから、すぐに食べないときには塩をしておきます。切り方は薄切りだけでなく、乱切りや輪切りなど切り方で使い勝手を思いつくので、特に決めずにそのときの気分で。きゅうりも同じ。ただ、今日のきゅうりは小さいサイズなので、たぶんこのままかじることになるでしょう。
塩漬けしたきゅうりとなすを豆乳そばに添えて
と、この原稿を書いている間におなかがすいてきました。夫が最近十割そばに凝っていて、なにかというと、「そばゆでて」というので、夕飯は豆乳そばを作りましたよ。そばつゆを豆乳で割るだけなんですが、豆乳が入ることでクリーミーなつゆになり、気に入っています。
そばつゆと豆乳の割合は「2:1」。わたしは豆乳多めが好みですが、まず試してみるときはこの割合を目安に作ってみてください。最後につゆが少なくなったら、そば湯ではないですが、豆乳をたっぷりと注ぎ入れて飲み干すくらい気に入っています。
そばだけでなく、そうめんもうどんも、なんなら冷やし中華のたれにも豆乳を入れます。夏は麺類を食べることが多くなりますから、つゆに変化をつけます。昆布やかつおだけでなく、煮干しだしにしたり、干ししいたけのもどし汁をだしにしてめんつゆをこしらえるのもおすすめです。だしが変わると劇的に味が変化しますから飽きません。
夫がなぜ十割そばに凝りだしたかというと、メジャーリーグのダルビッシュ選手の毎日のお食事メニューに興味津々。今まで白めし一辺倒だったご飯を麦めしにしたり、玄米にしてみたり、鶏むね肉やささ身を積極的に食べたいと言ってみたり。そばも小麦が入っていない十割がいいと大量買い。
お酒をやめたら、きっと多少の効果が得られるのではないかと思っているのですが……暑いとビールがおいしいしね。ダルビッシュ選手のようになりたいわけではないけれど、お食事を多少なりとも考えるきっかけになるといいです。
豆乳そばには、塩をしてあったなすときゅうりを添えて。夫は冷凍庫から天かすを持ち出し、ふりかけてました。天かす入れたら十割そばにする意味があるのか…。葛藤の日々。台所仕事は続きます。
わたしはまた明日も残った野菜カレーを白めしで食べよーっと。
飛田和緒
飛田和緒(ひだかずを)
料理家。神奈川県・三浦半島に夫・娘と住みはじめてから18年になる。海辺暮らしならではの魚料理や、地元の食材を使ったシンプルな野菜レシピが人気。繰り返し作りたくなる常備菜は、幅広い層から支持されている。お弁当や朝ごはんの記録をつづったインスタグラム(@hida_kazuo)も話題。著書に『いちばんおいしい野菜の食べ方』(小社)など。
オレンジページnetで飛田さんのレシピを探す