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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.122】『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』

2021.10.01

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。家で過ごす時間が増え、映画配信サービスの素晴らしさを実感しています。その一方で、映画館で作品を見ることの価値も再確認できた気が。大画面で見られるというのは言うまでもなく、自分の席の近くにスピーカーがあると突然効果音が聞こえてきて、ビクッとすることも。面白いシーンでは皆と笑いを共有できるのも嬉しいし、挙げればきりがないですね。
今回は、ぜひとも映画館で見てほしい作品。凝りに凝った音響効果で、突然聴覚を失ったミュージシャンの感覚を「体感」できるのです。それは、タイトルにもある「聞こえるということ」の概念が変わる体験。当たり前だと思っていたものを失ったとき、人はどうすればいいのでしょうか。


五感というものは、老いとともに必ず衰えていくもの。ただし、それが突然やって来たとしたら……。ドラマーであるルーベン(リズ・アーメッド)にとって、聞こえなくなることがどれだけの衝撃かは想像に難くありません。ボーカルを務める恋人のルー(オリヴィア・クック)とバンドを組み、キャンピングカーで移動しながら音楽活動している彼は、ある朝突然聴覚を失ったことに気付くのです。以前は薬物中毒に苦しみ、音楽の力でやっと立ち直ったという過去を持つルーベン。絶望に飲み込まれそうになる彼をルーが連れて行ったのは、同じ難聴者たちが集まるコミュニティでした。この施設の長であるジョー(ポール・レイシー)の導きのおかげで、徐々にこのコミュニティで居場所を見つけ出すのですが……。


肉体はとても個人的なもの。喪失を味わっているルーベンの心中を察することは出来ても、その肉体的感覚は本来誰にも分かりません。今回特筆すべきは、こだわりの音響によって、徐々に聴力を失う彼が実際に聞いている音を表現し、見ている僕たちもその感覚を体感できるという点。音というのは単に声や音楽ということではなく、振動なのだということが印象的でした。無音の響き。「聞く」というアクションは、僕たちが思っているよりずっと複雑な行為なのかもしれません。タイトルの「サウンド・オブ・メタル」は、音楽ジャンルのメタルではなく、この映画でとても重要な意味を持つ音を指しています。


驚き、怒り、悲しみ。ルーベンの心の葛藤を繊細に、かつダイナミックに表現するリズ・アーメッドさんの演技に圧倒されます。なんとか聴力を取り戻したいと治療の道を探し求めるルーベンに対し、あくまで障害とともに生きることを教えようとする施設長のジョー。厳しく、そして寛容さを持ったこの人物を演じるポール・レイシーさんも存在感抜群。戸惑いながらも決してルーベンを見捨てない、恋人役のルーを演じるオリヴィア・クックさん含め、役者さんが本当に素晴らしくって。
苦しみ、もがき、ルーベンがたどり着いたところは、「別の人生」でも「新しい人生」でもなく、今まで生きていた世界と地続きの場所なのだと思います。その道程を、ぜひ映画館でともに体感してください。

『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』10月1日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開
配給・宣伝:カルチャヴィル×Filmarks×GEM Partners
©2020 Sound Metal, LLC. All Rights Reserved.

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

文/編集部・小松正和

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