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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.94】『秘密への招待状』

2021.02.05


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。料理のレシピって、同じレシピでも作る人によって仕上がりが全然違うと思いませんか?ちょっとした火加減とか、しょうゆを入れるタイミングとか、ほんの少しのことで影響が出るんですよね。
「人生のレシピ」なんて表現をよく聞きます。気取っていてあんまり好きではないですが(笑)。人生もまた「こうすれば正解」「こうすれば幸せになれる」っていう完璧なレシピはないんだなと、この映画を見て感じます。元々はアカデミー賞®の外国語映画賞にもノミネートされた、デンマークの作品をハリウッドがリメイクした今作。過去と向き合う登場人物たちを通して、人の弱い部分も強い部分も余すところなく描いた、力強い物語です。


この作品を見て思い出したのが、直木賞を受賞した角田光代さんの小説「対岸の彼女」。
生きている環境がまったく違う2人の女性が出会い、深く関わり合うという展開が共通しているのです。未読のかたはぜひ。
インドで孤児院のために寄付を集める活動しているイザベル(ミシェル・ウィリアムズ)は、支援者を説得するためにニューヨークへと向かいます。高額の支援をオファーしてくれそうな人物が、メディア代理店を経営するテレサ(ジュリアン・ムーア)。貧困や児童買春など、深刻な問題と日々向き合うイザベルと、大国の富を象徴するような存在のテレサは、共通点といえばアメリカ人であることくらい。
そんな2人が運命をともにすることになるきっかけは、テレサの娘グレイス(アビー・クイン)の結婚式でした。せっかくだからと招待されたイザベルがそこで会ったのは、テレサの夫であり、グレイスの父親であるオスカー(ビリー・クラダップ)。かつて自分の人生に大きく関わった存在を2人が互いに認識したとき、4人の運命が大きく動き始めるのです。


過去は意外にあっさり明かされます。かつて男女の関係にあり、一人娘をもうけたイザベルとオスカー。若く未熟な2人は娘を育てられないと判断し、養子へ出すことに。それなのに、結婚式場にいた新婦は、手放したはずの娘グレイスだったのです。
イザベル目線で見るなら、オスカーの裏切り行為はもちろん許しがたい。でも、土壇場で気が変わって娘を引き取ったという彼の行動もまた、間違っていたとは言えない。この映画の状況はかなり特殊ですが、正しさと間違いの間を常に行き来しながら生きているのは、誰もが一緒だと思うんですよね。人は弱いし、その弱さをぶつけ合って生きていくしかないのかもしれません。


イザベルとオスカーの関係は明らかになったものの、テレサはなぜイザベルをわざわざニューヨークへ呼んだのか? 家族の中に波風を立ててまで。ここからまた物語は思いもよらぬ方向へ展開し……。
前述の「対岸の彼女」は、決して交わらないはずだった2人の女性が出会い、やがて深くつながっていくストーリー。イザベルとテレサもまた、グレイスの母という立場を共有し、ぶつかりながらも強い絆で結ばれていきます。1人の人間が持つ烈しさと多面性に驚かされるとともに、「住む世界が違う」というのは思い込みなのかも、と感じました。すがすがしいラストは、2人が出会った意味を確かに感じさせるものでしたから。

「秘密への招待状」 
2月12日TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
配給:キノフィルムズ
©ATW DISTRO, LLC 2019 afterthewedding.jp

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

次回2/12(金)は「世界で一番しあわせな食堂」です。お楽しみに!

文/編集部・小松正和

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