「親のものをどうするかは親の自由」と割り切る「三つ子の魂百まで」といいますが、このケースにも当てはまりますね。物がない時代に育った親世代は、多くの人にそのころの思いがしみついています。幼少期の体験は心に深く刻まれ、老齢になっても消えないものです。
だから、ただ「捨てて」というのは酷かもしれません。子どもにも事情がありますが、まずは、
「物をどうするかは親の自由なんだ」と受け入れることが大切です。
物不足の時代に育った人にとって、物は「保険」でもあります。つまり、物の多さは「何かあったときにないと困る」という不安の裏返しなんです。
その不安をぬぐうのは「愛情」です。あなたが親を思う気持ちを示し、捨てられない心情や背景に寄り添うことが大切です。また、「終活をすすめるようで、話を切り出しづらい」という声も聞きます。そんなときは、
「将来自分が苦労するのはイヤ」という気持ちより、「親にいい老後を送ってほしい」などのポジティブな気持ちに注目しましょう。すると、あなたの伝え方も、親に伝わる思いも違ってくるはずです。
「愛情貯金」がたまれば片づけに取り組める「片づけるかどうかは親に決定権がある」と認めたうえで、愛情を持って片づけを提案しましょう。
「物につまずくと危ないから、私が少し片づけるね」といった提案なら、親も受け入れやすく、愛を実感できます。反対に「汚いから片づけたら」などの差し出がましい言い方は禁物。親は自分を否定されたと感じ、意地になって反発するでしょう。
最近はネットで物を売買するフリマアプリが人気ですが、新品の鍋などは、親に代わって売るのもいい方法。「だれかの役に立つし、売ったお金でおいしいものを食べに行けるよ」などと言えば、手放すふんぎりがつきやすくなります。
愛情は貯金できます。子どもが温かい気持ちをコツコツ注ぎ、親の心に愛がたまると、不安も減っていきます。物で埋め合わせる必要がなくなったとき、少しずつ手放せるようになるでしょう。