
【藤田承紀さん直伝】かんたん『金継ぎ』のやり方|お気に入りの食器を自分で直してオンリーワンに!

割れた器は捨てるしかないの……?
いえいえ、大切な器は「金継ぎ」で新しい命を吹き込みましょう。
今回は、初心者でも手軽にできる『かんたん金継ぎ』のやり方を、日本金継ぎ協会アンバサダーの藤田承紀さんに教えてもらいました。
元のデザインとは違った味わいが楽しめる金継ぎで、世界にたったひとつの自分の器に仕上げます。
金継ぎとは?

金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を修理する技法のこと。
漆で壊れたところを補修し、金粉などを施して仕上げます。大切な食器を長く使いつづけるために受け継がれてきた日本古来の手法で、破損部分をあえて金粉で目立たせるデザインが特徴的です。
乾燥するまでに数週間かかる本金継ぎと違って、最近では手軽な材料で初心者も試しやすい『かんたん金継ぎ』も注目されています。
『かんたん金継ぎ』で用意するもの

欠け・割れの補修に共通で使うもの
1 新うるし(合成うるし)※
2 金属粉(ここでは真ちゅう粉を使用)
3 うるし薄め液
4 筆(0号などごく細いもの)
5 筆洗い液
6 金属粉と新うるしを混ぜる皿など
7 カッターナイフ
※うるし以外の植物性の樹脂を使ったもので、かぶれる心配が少ない。「新うるし」「特性うるし」などの名称で釣具製作用に販売されていることが多い。
欠けの補修に使うもの
8 合成パテ(木部用)※
※合成樹脂「エポキシパテ」という名称で販売されているものを使用。エポキシパテは用途別に種類があるので、「木部用」を選んで。
割れの補修に使うもの
9 瞬間接着剤
10 マスキングテープ
割り箸
あると便利なもの
11 メラミン樹脂のスポンジまたは紙やすり(400の目の細かいもの)
12 スポイト
クリアファイル※
※作業をする際は、下にクリアファイルを敷きます。新聞紙や布だと、補修中の器を置いた際にくっついてしまうことがあるので注意! クリアファイルはA4サイズを切り開いてA3サイズにすると作業しやすいですよ。
金継ぎの材料は、 インターネットやホームセンターなどで販売されています。
筆や小皿などがすべてセットされているキットを選ぶとお手軽なのでおすすめ! キットの価格は5000円前後が一般的です。
かんたん金継ぎの注意点

食洗機の使用について
かんたん金継ぎで直したものは食洗機にもかけられます。
しかし、高温に何度もさらしていると金うるしがはがれる可能性があるので注意しましょう。
新うるしで直した器に食品をのせる場合は
この記事では、検査をして安全性に問題がないと確信した新うるしを使用していますが、新うるしは元々食器を修理することを想定していないので、安全性を保証できないという意見もあります。
食品をのせることに不安がある方は、ペーパーナプキンを敷くなどして、食品が直接触れないようにするといいでしょう。アクセサリー置きにするのもおすすめです。
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欠けた器の直し方

欠けてすきまができた部分を、着剤入りのパテで埋めてから、金属粉を混ぜた新うるしを塗って修復します。パテは10分ほどで固まり、時間をかけていると粘着力が弱まってしまうので注意しましょう。はみ出し部分はあとから修正できるので、手早く作業するのがコツです。
(1)合成樹脂(パテを)練る

パテは必要な分だけをカッターでスライスして使用する。灰色のところと茶色い部分があるので、同量ずつになるように手早くもんで柔らかくする。
右の画像のように2色がむらなく混ざり合い、粘土状になめらかになればOK。固まると接着力が弱まるので手早く行う。
(2)パテで欠けた部分を埋める

欠けた部分にパテをのせ、指で押しながら横にずらし、すきまを埋める。パテの上に新うるしを塗るので、補修する器の厚みよりやや薄めにのせる。
すきまに押し込めるようにしっかり埋め込むことがポイント。欠けていないところまで塗りのばして欠けを埋めて。はみ出しても次の工程で落とせるので大丈夫!
(3)まわりについたパテを落とす

10分ほどしてパテが乾燥したら、大きくはみ出した部分を削り取ってならす。
はみ出してざらついているところや、指紋がついたところは、水でぬらしたメラミンスポンジでかるくこすると取れる。
(4)金属粉と新うるし、薄め液を混ぜる

金属粉と新うるしを1:1の割合で混ぜ、うるし薄め液で溶いて〈金うるし〉を作る。ややゆるめの木工用ボンドくらいの濃度が目安。粉が多すぎるとはがれやすく、少なすぎると金色が目立たなくなるので注意。
薄め液は濃度を見ながら1~2滴ずつ入れていく。 スポイトか竹串を伝わせて少しずつ入れる。小皿は裏面の底に丸めたマスキングテープなどを使って傾斜をつけると、少ない塗料を効率よく筆につけることができる。
(5)埋めた部分に金うるしを塗る

パテで埋めた部分に金うるしを塗る。刷毛目が残らないように、金うるしを置いていくようなイメージで塗るとよい。
完全に乾いたら完成!

金うるしが乾く時間は2~3時間程度です。使用する場合は1日程度おいてください。
ごく小さい欠けは、パテで埋めずに金うるしをのせるだけでOK。
口当たりがよくなり、洗うときの指のひっかかりもなくなります!
使い終わったあとの道具は

洗い液は少量を小びんなどに移しておくと便利! ペーパーなどでかるく水分を落としてからしまって。残った洗い液は密閉して保存。小皿に残った金うるしはペーパーで拭き取って。
–{割れた器の継ぎ方は次のページへ!}–
割れた器の継ぎ方

割れた器は陶磁器用の瞬間接着剤でくっつけてから金うるしを塗ります。いかにきれいに接着できるかが成功のカギです。
真っ二つに割れた皿など、 まずは割れのパーツが大きいものから始めるのがおすすめ! 細い線を描くので 、硬い木製筆で作業するとよりきれいに仕上がりますよ。
(1)割れ目を合わせる

割れたパーツ同士をあわせる。左右をあわせるだけでなく、上下で細かく角度を変えていくと、ぴったりと密着するところがある。
(2)マスキングテープで仮留めする

マスキングテープをいくつかちぎって手の甲などに貼り、器の裏側からテープで仮留めする。割れ目全体に貼るのではなく、1カ所支点となるところを決め、横、斜めに貼るとよい。
(3)接着剤で固定する

割れ目に接着剤をつけ、割れたパーツ同士をぴったりと密着させる。多くても接着効果が高まるわけではなく、金うるしがのりにくくなるので、はみ出さないように注意する。
(4)はみ出した接着剤を削る

パーツどうしがくっつき、ずれたりがたついたりしなくなったら、はみ出た接着剤をカッターで削り取る。
(5)接着部分に金うるしを塗る

金属粉と新うるしを1:1の割合で混ぜ、うるし薄め液で溶いて〈金うるし〉を作る。ややゆるめの木工用ボンドくらいの濃度が目安。粉が多すぎるとはがれやすく、少なすぎると金色が目立たなくなるので注意。
刷毛目が残らないように、金うるしを置いていくようなイメージで塗る。合わせ目に細く均一な幅で金うるしをのせるときれいな仕上がりになる。
完全に乾いたら完成!

何度もやり直せるのが、かんたん金継ぎのいいところ。もし失敗してしまってもカッターで削り取れるので、楽しくチャレンジしてみましょう!
割り箸で木製筆を作る

割れの接合部分に金うるしをのせる場合は、筆よりも硬さがあるほうが線を描きやすいので割り箸で製筆を自作するのがおすすめ。鉛筆を削る要領で竹串よりも少し太めに削るのが◎。
教えてくれたのは……
藤田承紀さん

日本金継ぎ協会アンバサダー。イタリアでの修行後、野菜作りをしながら料理家として活動を始める。福祉施設のレストランの監修やオンラインでの金継ぎ講座など幅広く活躍中。
自分のものを自分で直すことによって、大切な器にさらに愛着がわいてきます……!
日本古来の手法と聞くと難しく感じるけど『かんたん金継ぎ』は想像よりもずっとずっとお手軽なので、ぜひトライしてみてくださいね。
監修/藤田承紀 撮影/原 幹和 文/中村 円 池田なるみ