
【イチからわかる腸活】食物繊維でおなかを快調に! ~便秘の人の場合~
腸活するなら食物繊維をしっかり摂ることが必要とされますが、「今ひとつ効果を実感できない」という声も。
そこで、便秘や下痢、おなかが張りやすいなど、おなかの調子のタイプ別に、食物繊維の摂り方を徹底取材! 今回は〈便秘の人〉に効果的な食物繊維の摂り方を紹介します。
食物繊維研究の第一人者、大妻女子大学教授の青江誠一郎先生にお話をお伺いしました。

◆便秘しやすい原因は2タイプに分かれる
便秘しやすい人には、〈食物繊維が不足しているケース〉と〈腸の動きが悪くて便がたまっているケース〉の2通りのタイプがあります。
タイプ1 食物繊維が不足しているケース
青江先生によれば、日本人はもともと主食である穀物から食物繊維を摂取していたのだそうです。ところが、この半世紀で米離れが進み、近年では糖質オフダイエットがブームになった影響もあって、日本人の穀物の摂取量が激減。それにともなって、食物繊維の摂取量も減少しています。
「サラダが好きだから、食物繊維はしっかり摂っているはず」と思っていても、生野菜だけではそれほど食物繊維を摂ることができず、気づかないうちに食物繊維不足に陥っているケースが少なくないのです。
「食物繊維の摂取量を増やすには、加熱調理した野菜を食べるほうが、一度に食べられる量が多くなります。大麦(もち麦、押し麦)などの穀物、昆布やワカメなどの海藻類、大豆などの豆類、ごぼうなどの根菜類といった茶色っぽい食材を意識的に摂ると、食物繊維不足を改善できますよ」(青江先生)
タイプ2 腸の動きが悪くて便がたまっているケース
食生活を見直し、運動を心がけているにも関わらず、便秘が改善しない人は、便を押し出す腸の動きが低下している可能性があります。「いろいろやっても便秘がよくならない」という場合は、消化器内科を受診しましょう。
–{便秘を改善する繊維の摂り方 4つのポイント}–

◆便秘を改善する食物繊維の摂り方 4つのポイント
まずは水溶性食物繊維を意識的に摂りましょう。
「一般的に、穀物、豆類、根菜類、海藻類、いも類などをバランスよく食べていると、水溶性食物繊維1に対して、不溶性食物繊維3の割合になりますが、〈便秘の人〉は水溶性食物繊維をもう少し多めに摂るのがポイントです」(青江先生)
1.大麦は水溶性食物繊維の王様。主食にイチ押し!
水溶性食物繊維を補う食材として、いちばんのおすすめは大麦(もち麦、押し麦)。大麦には善玉菌を増やして腸内環境を整えるとともに、お通じをよくする働きがあります。
「糖質オフをしてご飯やパンを抜いてしまうと、食物繊維不足に陥りやすいので要注意。むしろ穀物を取り入れることで、食物繊維量を手軽にアップできます」(青江先生)
◎おすすめの摂り方
・ご飯食の人は、白米3:大麦(もち麦、押し麦など)1の割合の麦ご飯にする
・パン食の人は、水溶性食物繊維の多いライ麦、全粒紛のパンにする
2.不足しがちな海藻類を忘れずに
海藻類はあまり腸内細菌のエサにはなりませんが、腸の中をゆっくりと進みながら水分を吸収するのが特徴。便をやわらかくしてお通じをスムーズにしてくれます。意外と不足しがちなので、朝食か夕食に1品取り入れましょう。
◎おすすめの摂り方
・ヒジキの煮物、切り昆布の煮物を作り置きして食べる
・乾物のわかめや海藻を常備して、サラダやみそ汁に加える
・もずくやめかぶを副菜に活用する
3.根菜類を意識的に摂ろう
便秘改善に効く食材といえば根菜類ですが、なかでもおすすめはごぼう。ごぼうには便のかさを増やす不溶性食物繊維と、便をやわらかくする水溶性食物繊維の両方がバランスよく含まれています。しかも、ごぼうに含まれる水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増す働きも!昆布などの海藻類と組合わせてもいいでしょう。
◎おすすめの摂り方
・きんぴらごぼう(にんじん入り)、ごぼうのごまあえ
・根菜とこんぶの煮もの
4.水溶性食物繊維の一種のオリゴ糖にも注目!
オリゴ糖が含まれる食材といえば、豆類や豆腐などの大豆製品、玉ねぎ、にんにくなど。
「実は、オリゴ糖は水溶性食物繊維の一種。大腸まで届いたオリゴ糖はビフィズス菌(善玉菌)のエサとなり、私たちの体によい働きをする〈酸〉を生み出します。その〈酸〉を薄めようと腸内から水分が分泌され、便がやわらかくなって、お通じがよくなります」(青江先生)
特に、豆類には水溶性食物繊維のオリゴ糖と不溶性食物繊維が両方含まれているので、便秘の人はぜひ取り入れて!
◎オリゴ糖を含む食材
・大豆などの豆類、豆腐、厚揚げ、豆乳などの大豆製品
・玉ねぎ、にんにく、長ねぎ
・アスパラガス、ブロッコリー、ごぼう
・バナナ
–{自分は便秘、家族はおなかが弱いときは?}–
◆もっと知りたい! 食物繊維 Q&A

Q. そもそも食物繊維って、どんなもの?
A. 「繊維」という言葉のイメージから、筋っぽい食材をイメージしてしまいがちですが、「口から食べて、消化されずに大腸まで届く食べ物の成分はすべて食物繊維」と考えてOK。
食物繊維には水に溶けやすい「水溶性食物繊維」、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」のほかに、難消化性でんぷんの「レジスタントスターチ」も含まれます。
Q. 食物繊維って、1日にどれくらい摂るといいの? 不足分を増やすには?
A. 厚生労働省が「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で目標としている1日あたりの食物繊維量は、18~64歳では男性が21g以上、女性が18g以上。ところが令和元年の統計によると、30代女性の食物繊維摂取量が15.9g、40代女性が16.0gと不足ぎみ。
食物繊維量を手軽にアップするには「朝食にシリアルを取り入れる」「夕食の主食を麦ごはんに変える」「根菜類や豆類の副菜を1品増やす」などの方法がおすすめ。
Q. 私はもち麦を食べると快腸になるけれど、夫と子どもはおなかを下しぎみに…、どうしたらいい?
A. もち麦や押し麦などに含まれる水溶性食物繊維は便秘改善に効果的ですが、もともとお通じがよかった人は、便がゆるくなってしまうことも。
家族の誰かが下痢してしまう場合には、炊飯器で炊くごはんを白米にして、便秘の人だけが「ゆで麦」をトッピングして食べるといいでしょう。ゆで麦を1食分ずつ小分けにして冷凍保存しておくと、スープやサラダに加えるなど、ほかのメニューにもチョイ足しできて便利です。