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魚市場だけじゃない。東京・築地散歩のモデルコースを紹介。段差ゼロでバリアフリー♪

東京見物で築地に行ったことはありますか? 銀座から歩いてすぐ。読んで字のごとく、「地」を築いた、つまり埋め立ててつくったのがその名の由来。海の近くだったので、大名のお屋敷や 幕末には海軍施設があったり、開港地に指定されたため、横浜と同じように、外国人居留地となり、明治に入るとキリスト教伝道師により多くの学校ができたのです。

そんな築地の、魚市場とはひとあじ違う歴史を歩いてご紹介しましょう! ガイドはこの人。作家で江戸歩き案内人の黒田 涼さん。東京を中心に、歴史の痕跡を歩いて探し、見出すフィールドワークにこだわり、文章や街歩きガイドツアー、メディアでその魅力を紹介しています。

まず最初は「靴業発祥の地」。新富町の駅近くで日本で初めての洋靴製造がはじまりました。軍靴をつくるのが最初の商品で、その後身が今に続く靴メーカー「リーガル」です。

お次はかわいい葵の葉っぱのレリーフが立っていますね。これは名門雙葉学園の発祥の地。フランスの女子修道会が作った築地語学校が前身です。とてもかわいらしいモニュメントに癒やされます。

そしてこちらは横浜にうつった関東学院の源流のひとつ。アメリカのプロテスタント教会の一派が開校した男子校でした。

お次は暁星学園の発祥の地。こちらもフランスの教育修道会が築地協会の一角に設けた塾が起源です。その築地協会がこちら。1874年に建てられた東京で最初のカトリック教会で、現在の聖堂は木造モルタルという珍しい建物なのです。外から眺めましょう。

そして築地はある著名な作家の生誕の地でもあるのです。その作家とは芥川龍之介。1892年、この地にあった牛乳販売会社「耕牧舎」の経営者夫婦の長男として生まれました。その記念碑がこちらです。

さらに学校発祥の地が続き、明治学院発祥の地を過ぎると、こちらは女子聖学院の発祥の地。かわいらしいモニュメントの後ろにご注目。ツタがハートの形になっているのがわかりますか。クリスマス時期には素敵な飾りが施されるそうです。

そして駅伝でも大活躍の青山学院の記念碑が。源流のひとつ、海岸女子高がここにあったことからこの碑が建てられています。この学校の創立には、新しい5千円札の顔・津田梅子の父・仙が大きく関わっていたのでした。

お次は日本で始まり、世界に広まった驚くべき研究の碑。ここに紹介されているイギリス人・フォールズは1874年に布教のために来日した医師。大森貝塚を発掘したアメリカ人のモースと知り合い、出土した土器に残った指紋や日本人が拇印を押す習慣を知ったことがきっかけとなり、指紋がひとりひとり違ううえ、生涯変わらないことを発見。1880年にイギリスの科学雑誌「ネイチャー」に論文を発表したことからその後の指紋研究が始まったのです。フォールズの住居跡の上面に「指紋研究発祥の地」とあるのが見えますか?

そして築地の象徴的な存在が「聖路加国際病院」を中心とする一角です。隅田川に面し、かつてアメリカ公使館があった場所は聖路加タワーの2階から歩けますし、病院の敷地内にもモニュメントが残されています。病院は1901年、米国聖公会の宣教医師、ルドルフ・トイスラーが開設しました。病院の旧館には美しい聖堂があり、訪れる人々を静かに受け入れています。旧館前にあるのが「神の栄光と人類奉仕のため」と書かれた徳川家達貴族院議長書の碑。第二次世界大戦で日米が開戦し、この碑を消すように迫られ、鉄板で隠した跡が、今も残っています。

病院の敷地内には、立教大学の発祥の碑も。

そして慶応大学の発祥の地もすぐそばに。ここは1858年、中津藩奥平家中屋敷内に開かれた福沢諭吉の蘭学塾に由来します。

最後は工学院大学学園の発祥の碑。ここは指紋研究で述べたフォールズの病院が閉院となった後、その建物を使いました。この碑は、となりに工場があった、銀座4丁目のパン屋「木村屋」が設置したと側面に書いてあります。こうして、数々のミッション系の学校が築地に生まれ、文明開化の一翼を担っていったのでした。

さて、築地の街歩きの最後に訪れるのは築地本願寺です。京都の西本願寺の別院として浅草に建てられ、その後明暦の大火で焼失し、八丁堀沖を埋め立てて1679年に再建され、震災で焼失した後、現在の形となりました。寺院内は通常、広く開放され、独特な様式の建築も楽しめます。近頃は敷地内のカフェが大人気です。

お疲れ様でした! 海鮮丼や寿司だけではない築地の魅力を感じていただけましたでしょうか。今回のお散歩ルートを地図や案内で詳しく紹介しているのが、今回案内してくださった黒田 涼さんが書いた歴史散策ガイド『段差ゼロの東京歴史さんぽ』。より詳しい歴史の解説や、今回ご紹介できなかったモニュメント、おすすめのお土産スポットやごはん処の情報も掲載しています。ぜひじっくり読み込んで、階段なし、段差ゼロの東京の歴史散歩を楽しんでみてくださいね。

(書籍『段差ゼロの東京歴史さんぽ』より)

黒田 涼 

江戸歩き案内人。講師も。東京から日本全国まで、フィールドワークで史跡をたずね、書籍やメディアで紹介。街歩きイベント主催や講師も。本の刊行を記念したおさんぽイベントも。詳細はnote「散策はエンタテイメントだ!」をチェックしてくださいね。黒田さんの記事は「歩いて、探して、歴史を発掘する黒田涼」から。

 

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撮影・文/はらだま