超高齢社会を迎え、「人生100年時代」といわれる現代。だからこそ、考えだしたら不安でたまらない、家族や自分の老後の生活。各分野のスペシャリストが、そんなあなたの不安にそっと寄り添います。 今回のお悩み/孤独 子どもが巣立って夫婦だけの住まいに。残っている子ども部屋の荷物はどうすればいい? 子どもたちはすでに巣立ち、今は夫婦二人暮らしです。最近どうしようかと悩んでいるのが、2部屋ある子ども部屋の存在。下の子が家を出たのは2年前ですが、クローゼットの中の衣類、本や小物など、こまごまとしたものまでそのまま残っています。狭いワンルームに住んでいる彼らに、「全部持っていきなさい」「持っていけないものは全部捨てる」とは言いづらく……。子ども部屋がなくなってしまうのは少し寂しくもありますが、老後に向けてモノを減らして、すっきり暮らしたいなと思っています。(56歳・女性) 今村翔吾さんの回答 捨てるにせよ、捨てないにせよ、自分軸でわがままに考えたらいいんです。 お悩み回答者 今村翔吾さん このところの終活ブームの影響もあってか、なんとなく世の中的には「捨てるのが正義」みたいな風潮がありますよね。でもこの件に関して僕は、「じゃまでなければ、ほっとけばええやん」という考えです。乱暴な言い方になってしまいますが、自分たちが家からいなくなったときに、子どもたちに片づけさせたらいい。そのくらい割り切って考えてもいいんじゃないかと。もちろん、ゴミ屋敷みたいなのは別ですよ。逆に、あいた部屋を何かに使いたいというのであれば、遠慮なく「取りに来なかったら、捨てるよ」と言い放てばいいんです。これからの人生は、自分たちが主体。ここまで立派に育て上げられただけでもう充分ですから、これ以上子どもに気をつかわなくてもいいと思います。みなさん、「子どもに迷惑かけたくない」って言いますけど、親が子どものためにと思ってやる領域が広がりすぎてる気がするんですよね。捨てるにしろ、捨てないにしろ、〈自分軸〉で決めていいし、もっとわがままになってもいいんじゃないかなあ。「最終的には自分たちでなんとかしよるわ」ぐらいの気持ちで(笑)。モノにあふれた時代ですから、ある程度捨てざるをえない現実もありますが、「老後の片づけ問題」だけに思考や労力を取られてしまうのはもったいない。それより、新しいことに挑戦したり、自分がやりたいことを優先したりしたほうがいいんじゃないかなと僕は思います。 今村翔吾さん 作家。1984年、京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(祥伝社文庫)でデビュー。『八本目の槍』(新潮文庫)で吉川英治文学新人賞、『じんかん』(講談社)で山田風太郎賞、『塞王の楯』(集英社)で第166回直木賞を受賞。「N スタ」(TBS系)など報道番組のコメンテーターも務める。 平野ノラさんの回答を見る「老後の4K」のお悩みをすべて見る(『オレンジページ』2023年5月2日号より)