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2023.11.19
磯村勇斗さん「〈きのう何食べた?〉の航は演じれば演じるほど、いとおしくなる人物なんです」
せりふではなく、
体の動きだからこそ伝えられるものがある
この作品でダンスに出会って、
表現の解像度が上がりました
「この舞台をきっかけに、村上作品が大好きになりました」と語る渡辺大知さん。
「一本の大きな筋を、からみ合う無数の糸で構成しているのが村上作品のイメージ。ていねいに読み進めると、気づけば糸がほどけて謎が解けている。その感覚が快感なんです」
今回出演する舞台の原作こそ、村上春樹さんの代表的長編『ねじまき鳥クロニクル』。2020年に初演され話題になりましたが、新型コロナの影響で公演期間が短縮。その作品が満を持して再演されます。渡辺さんが演じるのは、失踪した妻を捜しながら、理由を自問自答する主人公。物語は、歌と踊りを織り交ぜた独創的な世界観で紡がれます。
バンドマンとしてデビューし、映画やドラマで俳優として活躍してきた渡辺さんですが、今作で大きな挑戦となったのが〈踊り〉。
「当初は、まずなぜ〈踊る〉のか、ダンスという表現について考えるところからでした。1年間のレッスンを経てわかったのは、ダンスが〈言葉にならない言葉〉として重要なツールだということ。たとえばこの作品では、主人公と奥さんが『トイレットペーパー買った?』と何気ない会話をしながら、肉体的距離がどんどん開いていくシーンがあります。二人の距離感が、せりふや歌詞ではなく、身体表現によって一発で伝わる。ダンスはその延長線上。体の動きひとつで役柄の幅を広げられると気づけたし、表現の解像度も上がりました。今回の再演では、3年間自分の中でかみ砕いてきたものを、前回より踏み込んで出していきたいです」
公演が休止されていた期間は、「飲みに行くことと旅行が趣味」という渡辺さんにとって試練のときでもありました。
「自分の好きなこと、全部だめなんだ……って。でも最近はまた出歩くようになりました。先日は、この作品で演出を手がけるインバル・ピントさんに会いに、イスラエルにも行きました。知らない土地で人に会ったり、初めての景色を見たり、旅はテレビや映画を見るのとは違い、未体験なものを体で味わう感じ。そういう経験が、いちばんクリエイションにつながるんじゃないかなと思います」
村上春樹のベストセラーを、国内外のトップクリエイターが舞台化。2020 年の初演時、公演期間の短縮を余儀なくされた伝説のステージが再演される。演出はイスラエルの奇才インバル・ピントとアミール・クリガー。脚本・作詞は藤田貴大、音楽は大友良英。村上作品の世界観を、歌と踊りを織り交ぜた圧倒的なパフォーマンスで表現。気鋭の俳優・成河と渡辺大知が一人の主人公の多面性を演じ分けるのも話題に。
(『オレンジページ』2023年11月17日号より)
撮影/吉澤健太 取材・文/唐澤理恵 ヘア&メイク/天野誠吾(エムドルフィン)
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