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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.81】「パピチャ 未来へのランウェイ」

2020.10.29


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
先日紹介した『82年生まれ、キム・ジヨン』は仲間うちでも見た人が多く(「絶対見て!」とすすめたのもありますが)、ずいぶん盛り上がりました。現代の韓国を舞台にした物語は日本人にとってもすっと理解できるものであり、男女問わず自分事として考えやすい内容だなと思います。今回の作品はどうでしょうか。アフリカ、イスラム、内戦といったキーワードだけ聞くと遠い国の遠い出来事に感じてしまいますが、不当な圧力に屈せず闘う女性たちの姿には、国や宗教を問わず心うたれるものがあります。


「ヒジャブ」「ブルカ」など、イスラムの女性がかぶる布にはさまざまな種類があり、スカーフだったりコートだったり、役割に差があるんですよね。
今作の重要なモチーフとなるのが、真っ白な「ハイク」と呼ばれる、北西アフリカ諸国の伝統的な衣装布。舞台となるアルジェリアの女性は必ず1着は持っているらしく、監督曰く「清さと気品の象徴」だそう。ファッションデザイナーを夢見る主人公のネジュマ(リナ・クードリ)は、大学の寮内でファッションショーを計画するも、さまざまな壁に直面します。彼女がショーで使おうとしているアイテムこそが、このハイク。しかし、そのアイディアにたどり着いたきっかけは、とても悲しい出来事でした。時は「暗黒の10年」と呼ばれた、1990年代のアルジェリア。経済への打撃、反体制運動に端を発するイスラム勢力の過激化、そして抑圧される女性たち……。「女の正しい服装」を啓発するポスターはどこか禍々しい雰囲気。あまり知る機会のないアルジェリアの歴史が、ドラマチックな映像で展開されていきます。


ネジュマと同じく奔放な性格ながら、彼氏の前ではおとなしくなるルームメイトのワシラ(シリン・ブティラ)。敬虔なムスリムの家で育ち、兄が決めた婚約者との結婚を控えているのは、もう1人のルームメイトであるサミラ(アミラ・イルダ・ドゥアウダ)。同じ「男性優位社会」の中でそれぞれ不満を抱えていても、みな少しずつ考え方が違うので団結するのも難しい。映画では過激なイスラム主義を振りかざす女性たちも出てきて、むしろ女どうしの間で分断が生まれるのが哀しい。
では男性なら誰でも威張っていられるのかというと、それはごく一部の人たち。その「ごく一部」に入れなかった人たちは、女性には高圧的な態度を取っていても、常に体制の動きを気にしてビクビクしている印象なのです。女性が幸せでない国は、だれも幸せじゃないのかな、そんな風に思いました。


冒頭、ナイトクラブに繰り出すためタクシーを拾い、車内でお互いにメイクを施すネジュマとワシラ。厳しい統制の中、人目を盗みクラブで踊りまくり、内密に洋服のオーダーメイドの商売をする彼女たちの姿はたくましく、そして痛快!
PAPICHA(パピチャ)はアルジェリアのスラングで、「愉快で魅力的で常識にとらわれない、自由な女性」の意味だそう。この映画の時代から20年以上が経った今、アルジェリアではまだまだ男女間の不平等に関する問題は多いようです。それでも、ネジュマのように闘った女性たちが果たした役割は小さくないはず。今も世界中で闘っているたくさんのPAPICHAたちが、その魂を受け継いでいるのですから。


「パピチャ 未来へのランウェイ」 10/30(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
©2019 HIGH SEA PRODUCTION – THE INK CONNECTION – TAYDA FILM – SCOPE PICTURES – TRIBUS P FILMS - JOUR2FETE – CREAMINAL - CALESON – CADC


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文/編集部・小松正和 


次回11/6(金)は「PLAY 25年分のラストシーン」です。お楽しみに!

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