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【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.9】「メモリーズ・オブ・サマー」

2019.05.30

こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。
マツコは基本1人で映画を見るのですが、ごくたまに連れ立って行く際はどこに座るか迷います。
自分の好きなところに座りたいな~と思いつつ、良い人ぶって相手に合わせてしまう自分。
世のカップルたちはどうしているのでしょう。

明日から6月。梅雨を経て、今年も夏が始まりますね。というかもう暑いですね。今回紹介する作品『メモリーズ・オブ・サマー』は、日本ではなかなか公開されないポーランドの映画。
タイトルだけ聞くと井上陽水の「少年時代」のような、甘酸っぱい夏のイメージがわきますが、内容はもう少しビターなもの。
子どもと大人の中間地点で揺れる少年が、母親との心のつながりを失い、迷い、やがて大人へと変化していくストーリーです。


1970年代末、ポーランドの小さな町。始まったばかりの夏休みに心を躍らせるのは12歳の少年ピョトレック(マックス・ヤスチシェンプスキ)。
この年頃の男の子にしては随分母親と仲が良いようで、湖(池かも)に自転車で繰り出して水遊びを楽しみ、太陽を浴びながらチェスに興じます。
家でもチェスで対決し、音楽に合わせてダンスするなど、一緒の時間を存分に楽しむ2人。
このダンスシーンで流れる曲はポーランドの有名な歌手のもので、歌詞に出てくる〈夏の思い出〉という言葉がこの映画のタイトルにもなっているそうです
映画の中で2回流れますよ。

母親のヴィシア(ウルシュラ・グラボフスカ)は、清潔感があって質素ながらファッショナブル。優しくつつましやかで、朝ドラのヒロインのお母さんにぴったりのイメージです。
チラシやパンフレットをほぼ見ずに観賞したので、この時点で勝手に「お父さんは不慮の事故とかで亡くなったのかな」と妄想をふくらませていましたが、パパ、ちゃんと生きてます。スミマセン。


そんな朝ドラ母さんヴィシアにある変化が。職場の同僚らしき人物から電話がかかってくるようになり、夜な夜な出かける不良母さんになってしまうのです。
「女だけの集まり」「事務所の戸締りを忘れて」など、見え透いた言い訳を重ねる母親に、だんだんと不信感を覚えるピョトレック。
彼女のファッションは、ノースリーブのワンピースが夏の基本スタイル。最初は夫にもらったというお気に入りを着ていたのですが、そのうち新しい誰か(?)に買ってもらった一着を息子に自慢するようになり、着るものに彼女の心の変化が表れてゆきます

そんな中、出稼ぎで外国(多分ソ連?)にいるパパ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)から電話が入ります。
パパもヴィシアの変化を感じ取ったのか、ピョトレックとの会話で「母さんに変わりないか?」「夜は?」など、意味深な質問を浴びせるのですが、適当にはぐらかせるほど大人ではないので、12歳の少年は返答に困ってしまいます。


この一件で母と息子の関係は険悪なものに。「パパを不安にさせてどうするの!」と詰め寄る母親に対し、ピョトレックは夜出かける彼女を必死で邪魔しようと試みます。
この時点で朝ドラ母さんの面影はなく、昼ドラ系の妖艶なマダムです。
とても印象的なシーンが1つありました。ぎくしゃくしたムードの中、テーブルクロスを畳む2人。
布の端を持ち、息を合わせて互いに引っ張り合い、シワを伸ばしながら畳もうとするのですが、互いの力が均衡せずに何度も失敗してしまう。
布を畳む、それだけの行為に2人の関係性が表れていて、なぜか美しさを感じる良いシーンでした。

アバンチュールの相手との関係によって浮き沈みするこのお母さんは、自分のことで精いっぱい。
マツコの母もけっこう激情型だったので(アバンチュールはしてないと思う)、妙にピョトレック君に共感しつつ、母親との対峙によって変化していく少年の様子を感じ取ることができます


母親との関係性がお話のメインではありますが、少年は家庭外での人間関係も育みます。
親戚の家に都会から遊びにやって来たマイカ(パウリナ・アンギェルチク)という女の子と仲良くなったり、この子をめぐって地元の少年グループともめたり……。
この部分、『メモリーズ・オブ・サマー』というタイトルにふさわしいくだりで、ほろ苦い家庭環境との対比がとってもみずみずしい。
家庭の外に自分の世界を持つことは、喜びだけでなく悲しみや失望も運んできます。ですが、その健全な経験を通じ、少年が子どもっぽさを脱していく過程がこの映画の救いでもあるのです。
彼にとって初恋(なのかな?)相手となるマイカですが、彼女もやや激情型。ピョトレック君、12歳にして女性に対しての耐性はかなりのものかと……。


片や両親の間で板ばさみとなり、不本意ながらも急激に大人の世界に引きずり込まれる12歳の少年
胸の内に生まれる複雑な感情を彼はなかなか処理しきれず、これからの母親との関係に不安を覚えながら映画は終わります。
少年に課された宿題を、見ているこちら側も受け止めなければならないような、そんな気分になりました。
オレンジや黄色、ライムグリーンが多めのインテリアや、激しくももの悲しさを感じさせる、ダンスシーンでの音楽も印象的な映画です。


ポーランドに一度だけ行ったことがあります。日本でも最近人気のポーランド陶器で有名なヴォレスワヴィエツ(舌かみそう)という町へ行ったのですが、陶器のみならず、パステルカラーの建物が並ぶ街並みも素敵な場所でした。

「メモリーズ・オブ・サマー
6月1日(土)より、 YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次ロードショー

配給:マグネタイズ 配給協力:コピアポア・フィルム
© 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódź -Miasto Kultury w Łodzi


【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。
文・撮影(陶器の町のみ)/編集部・小松正和

次回6/7(金)は「旅の終わり世界のはじまり」です。お楽しみに!

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