初夏の手仕事といえば、あこがれるのは梅干し! でも「土用干し」って大変そうだし、なかなか梅干し作りに挑戦できないという人も多いのではないでしょうか。そこで、梅好きで知られるワタナベマキさんに、今の気候や暮らしに合わせた梅干し作りを教えてもらいました。ポイントを押さえれば、失敗なくおいしく作れますよ。
目次
・『しそ梅干し』のレシピ ・梅干し作りの時期や道具、梅の選び方 ・梅干しの賞味期限/保存方法は? ・もし梅干しを漬けている途中でカビが生えてしまったら? ・教えてくれたのは……ワタナベマキさん
『しそ梅干し』のレシピ
最近は、かなり塩分控えめの梅干しが多く売られていますが、初心者でも失敗なく作れるよう、塩分14%の作り方をご紹介します。しっかりした塩味が、梅の風味や酸味も引き立て、おいしくて料理にも使いやすい梅干しです。
材料(作りやすい分量)
完熟梅……1kɡ
塩(粒が粗めのもの)……140ɡ※
※梅の重量の14%。
赤じそ(葉のみ)……300ɡ
塩(粒が粗めのもの)……42ɡ※
※赤じその重量の14%。
作り方①梅の塩漬け
(1)梅のあく抜きをする 梅は水でさっと洗い、なり口のへたを竹串で取り除く。
ボールに入れてかぶるくらいの水を注ぎ、6時間以上(できれば一晩)浸してアク抜きをする。清潔なふきんやペーパータオルで水けを拭き、ざるに広げて乾かす。
(2)梅の下処理をする 梅に食品用アルコールスプレー(または焼酎を入れたスプレー)を吹きかけ、1個ずつ清潔なふきんやペーパータオルで拭いて消毒する。まな板も同様に消毒する。梅をまな板にのせ、手でかるく押しながらころがす。
Point 梅の繊維がこわれて、梅酢が出やすくなる。
(3)保存容器に梅と塩を重ねて入れる 保存容器に塩の1/3量を入れ、梅と残りの塩を2回に分けて交互に入れる。
Point 梅を入れる際、梅のなり口に塩がつくようにまぶしながら入れるとよい。
(4)ラップをぴったりとかける ラップを2枚重ねて梅の表面全体にかぶせ、側面にラップを食い込ませるようにしてしっかりとおおう。容器の内側に食品用アルコールスプレーを吹きかける。
Point 容器の内側から雑菌がつくことがあるので、ふたをする前に消毒をする。
(5)重しをのせる 1kɡ分の重しを、食品用アルコールスプレーで消毒してからのせる(平皿を重ねて重しにする場合は、大きめのビニール袋に平皿を入れて、ビニール袋の外側を食品用アルコールスプレーで消毒してからのせる)。ふたをして、直射日光の当たらない風通しのいい場所に置く。一日1回、容器を傾けてぐるりと回し、梅酢を全体にいきわたらせながら、梅酢が上がってくるのを待つ。
(6)梅酢が上がったら重しをはずす 1~2週間漬けて、梅が浸るくらいまで梅酢が上がったら、重しとラップをはずす。
Point 梅酢がなかなか上がってこなかったら、重しを少し増やし、一日1回容器を傾けるのを続けながら様子を見る。
作り方②赤じそ漬け
(1)赤じそ漬けの下準備をする 赤じそは葉を摘み、たっぷりの水で洗ってざるに上げ、水けをきる。清潔なふきんやペーパータオルでさらにしっかり水けを拭き取り、ざるに広げて乾かす。
(2)赤じそのアク抜きをして梅酢を加える 赤じそをボールに入れ、塩の1/2量を加えて、全体にまぶしながら手でよくもむ。アクが出てきたら葉をぎゅっと絞って、絞り汁を捨てる。残りの塩を加えて再びもみ、葉を絞って別のボールに入れる。梅酢1/2カップを加えてなじませる。
Point アク抜きをしっかり行うと、赤じその色がきれいに出る。これに梅酢を加えると、美しい赤紫色に。
(3)梅の塩漬けに赤じそを加える 梅の塩漬けの容器に(2)を梅酢ごと加え、赤じそを全体にのせる。容器の内側に食品用アルコールスプレーを吹きつけて消毒してからふたをし、土用干しをするまで直射日光の当たらない風通しのいい場所に置く。
Point 赤じそで梅をおおうと、殺菌効果も期待できる。
作り方③土用干し
(1)梅を干す 容器から梅を取り出し、梅酢の汁けをきってざるに並べる。赤じそはふりかけにして楽しむのがおすすめ。その場合は、赤じその汁けを絞り、ざるに広げる。日中8時間ぐらい(朝8時~16時までが目安)、風通しのいい屋外で干す。夕方取り込んだら梅を容器に戻し、梅酢に浸す。2日目も同様に、梅と赤じそを干す。
Point ざるに並べる際は梅と梅の間をあけ、風が通るようにする。蒸れないよう、ざるの下にバットなどを置くとよい。
(2)梅酢を干す 3日目も同様に梅を干し、梅酢も容器ごとふきんなどをかぶせて日光に当てる。16時くらいになったら梅酢は室内に入れ、梅はそのまま一晩外に出しておく。赤じそはカラカラになれば干し終わり。3日間でもたりなければ、さらに1〜2日干し、フードプロセッサー(なければすり鉢など)で細かくなるまで撹拌すれば、ふりかけとして楽しめる。
Point 梅は夜露に当てると、皮が柔らかくなってしっとり仕上がり、おいしくなるといわれている。
(3)梅酢にくぐらせて保存する 4日目の朝、梅を取り込む。梅酢に一度くぐらせてから、消毒した保存用の容器に移す。梅酢も清潔なびんなどに移す。すぐに食べられるが、3カ月~半年たつとよりおいしくなる。
梅干し作りの時期や道具、梅の選び方
梅を買ってくる前に、梅を漬けるための道具をそろえておきましょう。また、梅干し作りは梅を漬けておく時間を長くとる必要があります。工程を事前に確認してから、進めていきましょう。
梅干し作りの時期:干すのは土用干しや3日連続でなくてもOK!
昔から梅を干すのは夏の土用(7月下旬~8月上旬)にといわれてきましたが、近年は気候変動の影響で猛暑続き。
真夏は気温が高すぎて、梅が干からびてしまいます 。
●梅酢がしっかり上がってから干す。 ●最高気温が27〜28℃くらいの日に、風通しのよい環境に置く。 この2つさえ守れれば、干すのは梅雨明けごろでも、9月や10月でもいいのです。
3日連続で干す必要もありません。合計3日間干せれば、数日あけても大丈夫です。大事なのは、風に当てること。できるだけ風通しのよい場所を選んでください。
梅干し作りの〈モデルスケジュール〉
梅の塩漬け :6月上旬~中旬 ↓ (1~2週間)赤じそ漬け :6月中旬~下旬 ↓ (2~3週間)土用干し :最高気温が27~30℃の日 ↓ (約3日間)完成 「土用干し」を終えたらすぐに食べることはできますが、半年〜1年おくと梅の実が締まってよりおいしくなります。ゆっくり待ちましょう。 ※日程はあくまで目安です。地域によって梅の入荷時期は異なるので、購入日に合わせて進めるようにしてください。
梅干し作りの道具①:保存容器は必ず消毒を
酸に強いホーローの容器や耐熱性のガラスのびん で、容量4~5ℓ のものを選んで。底が広いほうが、梅がつぶれにくくておすすめです。
消毒には食品用アルコールスプレー が便利。容器の消毒のほか、食品にも直接吹きかけて使えます。なければ、焼酎(35%以上)で代用OK。
〈保存容器の消毒のやり方〉 容器を洗って清潔なふきんで拭き、熱湯を注ぎ入れて、容器をぐるりと傾けながら全体にいきわたらせます(やけどに注意)。
湯を捨てて自然乾燥させたのち、容器やふたの内側、重しに食品用アルコールスプレーを吹きかけましょう。
梅干し作りの道具②:重しの重さは梅と同じに
重し 梅1kɡで作る場合は、梅と同じ重量の1kgの重しを用意しましょう。漬けもの用の重しが便利ですが、平皿を重ねたもの、ペットボトルに水を入れたものでも代用できます。
ざる 梅と梅の間隔をあけて、風通しをよく干すために使います。やや大きめ(写真の角盆ざるは27×30㎝、円形なら直径30㎝くらい)のもの数枚がおすすめ。
梅の選び方:変色しても堅さがあればOK
傷がついて色が変わっている場合はその部分を観察し、さわってみて、ぶよぶよと柔らかくなっているものは取り除きましょう。多少変色していても、果肉が他の部分と同じ堅さなら大丈夫です。
梅干しの賞味期限/保存方法は?
梅干しは常温で1年以上 保存できます。直射日光が当たる場所は避け、冷暗所に置きましょう。小さい保存容器に移しておくと、日々のごはんや料理に使えて便利です。清潔な箸で取り出しましょう。
もし梅干しを漬けている途中でカビが生えてしまったら?
梅の塩漬けをしている途中でカビが生えてしまっても、白い状態であればまだ大丈夫 。ふわふわした白いカビは食品用アルコールスプレーで消毒したスプーンで、ひらひらとした白い膜のようなもの(「産膜酵母」といい、カビとは別物)はペーパータオルで吸い取りながら、それぞれ取り除きます。梅は一度取り出し、食品用アルコールスプレーをかけてから梅酢に戻して 、表面に再度食品用アルコールスプレーをかけておきましょう。 自分で漬けた梅干しの味は格別!梅干し作りでできた梅酢は料理に使えますし、赤じそ漬けは細かく砕けば赤じそふりかけになるというおまけつき。ぜひ梅干し作りを楽しんでください。 (『オレンジページ』2025年6月2日号より)
教えてくれたのは……ワタナベ マキさん
グラフィックデザイナーを経て料理家に。センスあふれる食材や調味料の組み合わせで、簡単においしく作れるレシピが人気。毎年20kg以上の梅を取り寄せ、梅シロップや梅干しなどたくさんの梅仕事をしつづけている。
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