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柚木麻子の「拝啓、小林カツ代様」~令和のジュリー&ジュリア~
人気作家・柚木麻子さんが昭和の料理研究家・小林カツ代さんを語る食エッセイ。映画「ジュリー&ジュリア」ばりに往年のカツ代さんレシピを作り、奮闘します。コロナ禍ですっかり料理嫌いになった柚木さんが、辿り着く先はーー?

【柚木麻子連載】『カルディ食材食べ比べ会』が楽しすぎ。カツ代レシピ『馬サラダ』とともに。

2024.08.24

「カルディの食材なんでも食べ比べ会」

第16回 『カルディ食材なんでも食べ比べ会』が楽しすぎ。カツ代レシピの『馬サラダ』とともに。


親友のA子ちゃんが、面白いパーティーを計画した。

「カルディの食材なんでも食べ比べ会」というものだ。『美味しんぼ』(小学館)で、主人公・山岡たちの勤め先の新聞社の催し物「文化部恒例飯の友自慢会」みたいでワクワクする。
私はかなりカルディに詳しい自信があるので、お気に入りの商品「いぶりがっこタルタルソース」「サーモン塩辛」「ブッラータチーズ」を購入。

そして当日は加工品が多いので、野菜サラダはあった方がいいかもと閃き、カツ代さんレシピ「まるで馬の餌入れのようなボールにどーんと作って、馬もびっくりするほど食べるから」で知られる「馬サラダ」を作った(ちなみにこのサラダの存在を知ったのは、大ファンのともさかりえさんのアメーバブログからである。ともさかりえさんのブログには2000年代、カツ代さんレシピがよく登場していた)。

迎えた当日、それぞれが持ち寄ったおすすめで、テーブルにカルディの店舗が現れたようになった。A子ちゃんも麺類に添えるチャーシューや薬味を用意してくれたので、彩りも豊かだ。
ここでちょっとカルディの歴史を振り返りたい。

キャメル珈琲グループの公式情報によれば、設立は1977年、カルディの1号店である下高井戸店がオープンしたのは86年だ。目玉は卸価格で販売されるコーヒー豆、あとはトマト缶やパスタが主力商品だったらしい。店頭でのコーヒーサービスが始まったのは92年。99年には酒類の輸入も開始する。ショッパーにプリントされている、井上リエさんの描く、オリジナルイラストが誕生したのは2002年である。
ここ数年だと、SNSで上がった、店舗の通路が狭くベビーカーで行き来しづらいという声をすぐに取り入れ、改善した姿勢に感動したのだが、このアップデートの速さがカルディの強みなのかもしれない。

思えば、私がカルディに行き始めたのはまさにあの山羊のイラストが定着してきた2000年代。一人暮らしを始めたばかりで、その頃は続々と店舗が増え始めていた。偶然にも、ケンタロウさんが女性誌で活躍し始めた時期とも重なる。

ケンタロウさんは親しみやすいのにどこかアメリカ映画に出てくるような洒落た料理をいつも楽しそうに作っていた。その時、海外からの食材、「スパム」とかメープルシロップなんかを贅沢に使っていた。海外のブランドのものばかりのポテトチップスの紹介も、憧れが止まらなかった。いいなあ、どこで買えるのかな、と真似したくなったのが、カルディに行くきっかけだったのは本当である。初めて訪れるカルディは、活字でしか知らないスパイスや食材に溢れ、「SATC」のオープニングを思わせるサルサをBGMに、コーヒー片手にスパイスを眺めていると、急に大人になった気がした。

袋麺を5種類は食べ、 缶詰のアヒージョに舌鼓を打ち、瓶詰のご飯のお供も白米で堪能した。野菜やタンパク質のおかげで、ちゃんと健康的である。

大盛り上がりの中、会は終了した。
そういえば。ケンタロウさんは輸入食材だけではなく、コンビニフードに一手間加えたレシピをネット以前に紙で広めた功労者でもある。市販品を否定するのでも、そのまま使うのでもなく、その特徴を学び、良さを認めてさらっと自分らしく使うケンタロウさんの特性はお母さんから受け継がれたもののようだ。

コストコ、業務スーパー。お得かつ専門性の高い食材チェーン店情報が話題になるたび、私はいつもカツ代さんのことを考える。

カツ代さんは80年代としては感覚がとても新しく、出回り始めた市販品を光の速さで食卓に取り入れた人だ。
冷凍食品は「手抜き」と叩かれがちだった時代に、冷凍フライドポテトや、皮剥きの手間がなくそのまま使える冷凍里芋の良さを自著で力説。発売されたばかりのホットケーキミックスで即ドーナツをあげたり、缶詰のホワイトソースを残りご飯にかけてドリア、ツナ缶やシャケ缶をそのまま炊飯器に放り込んで簡単炊き込みご飯、トマトジュースでガスパチョを、あさりの水煮缶でクラムチャウダーを作ったり。今ではかなり定番になった時短アイデアだけども、パイオニアともなると、相当勇気が必要だったと思う。
今だったら、業スーを、絶対上手に活用しているであろうカツ代さんを想像するだけで楽しい。

カツ代さんは流行り物はもちろん、若い人たちともフランクに付き合ったようだ。新しいものを上手に取り入れていく姿勢は、レジェンドになってもなお、いきいきとアイデア豊富だったカツ代さんの強みだったのかもしれない。
猛暑で料理するのが面倒だが、便利なインスタントや加工品をインするだけで途端にアイデアが湧いたり、食べるのが楽しみになってくる。

ちなみに「辛ラーメン 焼きそばチーズ」とA子ちゃんが調理してくれたトルコの「ドゥルクスル」というサラダのもとが美味しかったので、また買いたい。

今回の小林カツ代さんレシピ

※「小林カツ代さんちのおいしいごはん」(1994年講談社・絶版)より一部引用

この名前はまるで馬の餌入れのようなボウルにど~んと作って、馬もびっくりするほど食べるから。うちではガーリックトーストを必ず、のサラダです。

『馬サラダ』のレシピ 

材料
玉ねぎ……1/2個
セロリ……1本
きゅうり……2本
トマト……2個
レタス……1個
キャベツ……4枚
パセリ……1茎
プロセスチーズ……適量
ゆで卵……2個
ベーコン……2枚

A
にんにく……1かけ
塩……小さじ1
砂糖……1つまみ
こしょう……少々
溶きがらし……少々
米酢……大さじ2
サラダ油……大さじ2~3


作り方
(1)玉ねぎは薄切りにする。セロリは斜め薄切りにする。きゅうりは表面をすりこ木などでたたいてから乱切りにする。トマトは皮ごと2cm角に切る。レタスとキャベツは適当にちぎり、パセリはみじん切りに、チーズは7~8mmに角に切る。ゆで卵はザクザク切る。
(2)ベーコンは7~8mm幅に切り、サラダ油少々でカリカリにいためる。
(3)大きいサラダボウルににんにくを入れてすりこ木でつぶし、油以外のAの材料を入れてよく混ぜ合わせ、サラダ油を加えてサッと混ぜる。
(4)(3)のドレッシングに野菜を(1)の順に加え、材料を加えるたびに全体を混ぜ合わせる。チーズ、ゆで卵、ベーコンも順に加えてそのつどざっと混ぜる。

カツ代ロジック

カツ代風ドレッシングの特徴は、サラダ油はササッと混ぜるのみ。ドロンとなるほどには混ぜません。野菜の種類、分量はあくまでも目安。全部そろえなければ作れないというものではありません。
にんにくはつぶすと、すりおろすよりマイルドで、風味が引き立つ。

次回は9/21(土)更新! お楽しみに。
柚木麻子(ゆずき あさこ)
2008年「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞し、10年に同作を含む『終点のあの子』でデビュー。15年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞を受賞。著書に『私にふさわしいホテル』『ランチのアッコちゃん』『伊藤くん A to E』『マジカルグランマ』『BUTTER』『らんたん』『とりあえずお湯わかせ』など多数。 毎月第4土曜日更新・過去の連載はこちら

文・写真/柚木麻子 イラスト/澁谷玲子 プロフィール写真/イナガキジュンヤ  取材協力/(株)小林カツ代キッチンスタジオ、本田明子

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