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刺激に敏感で共感力が高い〈繊細さん〉。『HSP』を知っていますか?【からだのキーワード】

2023.05.15

雑誌やテレビなどでときどき耳にする、からだの不調や病気などにまつわるキーワード。気になるものをピックアップし、医師が詳しく解説します!

刺激に敏感で、他者への共感力が高い〈繊細さん〉
『HSP(エイチ エス ピー)』とは?

その生きづらさや神経の疲れ、もしかして〈HSP〉かも
ちょっとしたことに敏感に反応して疲れてしまう、人の気持ちに共感しすぎてしまって生きづらい……。最近このような〈繊細さん〉などとも呼ばれる性質を自覚する人が増えていますが、その正式な名称がHSP(Highly Sensitive Person)。日本語に訳すと〈とても敏感な人〉です。

HSPとはアメリカの心理学者、エレイン・N・アローン博士が1996年に自著で提唱した概念です。アローン博士は、国や人種を問わず全人口の15〜20%がHSPであるとしています。HSPは環境などによる後天的なものというよりは、生まれ持った気質です。HSPは、そうでない人と比べて、受け取った感覚刺激を処理する脳の神経系が過敏です。特徴的な性質は、おもに以下の4つです。

特徴的な性質

・物事を深く処理する
物事を深くとらえて考えるので、会話や作業に時間がかかる傾向があります。
・過剰に刺激を受けやすい
友達と会った後に疲れてしまう、芸術に触れると感動しやすい、人の言葉に傷つきやすいなど刺激への反応が大きく、神経が疲れやすい傾向があります。
・共感力が高い
人の感情や心の動きを機敏に感じ取り、深く共感できますが、他者に過剰に同調し、相手の気分や考えに引きずられ、自分を見失うことも。
・ささいな刺激を察知する
他の人が気づかない小さな音、わずかな光、かすかなにおいなどささいな刺激を察知します。

この4つすべてに当てはまる人は、程度の差はあれ、HSPといえます。
そのままの自分を肯定し、自分と他者の課題の分離を
ただしHSPは病気でも異常でもなく、あくまでも気質。HSPは、小さな変化に気づいて細かな心くばりができますし、感受性が強く創造性に富んでいるなどの長所があります。一方で、正義感や責任感、不安や恐怖が強すぎる面もあります。ですから自分がHSPでも、〈それでいい〉と自己肯定し、自分軸を強くもちましょう。

たとえばHSPは人との境界線が薄く、相手の気持ちに左右されやすいですが、〈人は人、自分は自分〉と他者と自分の問題をきっちり分けることです。人と違う意見を言う=嫌われるという思い込みを捨てることも大切。無理に好かれようとせず、〈嫌われるほうが自由になれる〉と思っているほうが自分を出せて楽になります。人の意見に合わせてしまいそうになったら、一度、〈それ本当に自分の考え?〉と自分に意識を向ける癖をつけましょう。

会うとなぜか疲れる人、行くと体調が悪くなる場所など、いやな人や場所からは距離をおくことです。大人数の飲み会が苦手ならあらかじめそう伝えておく、住んでいる環境の物音が気になるなら引っ越すなど、敏感さに悩まされる状況を避けてストレスを減らしましょう。

それでも刺激を受けて疲れてしまったら、心身をいたわるセルフケアを。敏感さからくる疲労感をやわらげる方法は、睡眠、入浴、アロマテラピー、ヨガ、瞑想などさまざま。自分の身体に意識を向けましょう。どうしてもつらい場合は精神科や心療内科を受診するのもおすすめ。

教えてくれたのは……長沼睦雄先生
十勝むつみのクリニック院長。北海道大学医学部卒業。道立札幌療育センター、道立緑ヶ丘病院精神科を経て、平成28年に現クリニックを開業。日本では数少ないHSPの臨床医。『敏感すぎる自分を好きになれる本(』青春出版社)など著書多数。
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『オレンジページ』2023年5月2日号より)

構成・文/和田美穂 イラスト/山中玲奈 

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