さまざまなジャンルで活躍している「あの人」にフィーチャー。今、向き合っていることや日々の暮らしなどについて語っていただきます。 インタビューの記事はこちらもチェック
2022.12.05
みやただい/1986年、栃木県生まれ。スイスのジュネーヴ音楽院卒業、ドイツのクロンベルク・アカデミー修了。2009年のロストロポーヴィチ国際チェロコンクールで日本人初優勝を果たしたほか、これまで参加した全コンクールで優勝を果たす。その圧倒的な演奏は世界的指揮者・小澤征爾にも絶賛され、国際的に活躍。「題名のない音楽会」「徹子の部屋」など、メディア出演も多数。 公式HP Facebook
アルバムもコンサートも、
すべての演奏は一期一会。
年を重ねた今の自分だからこその表現を、
大切にしています
「数ある楽器のなかで、人間の声にいちばん近いといわれるのがチェロの音色。耳なじみがよく、テレビドラマや映画の見せどころで使われることが多いんです」
そう教えてくれたのは、日本を代表するチェリスト・宮田大さん。国内外の有名奏者や指揮者、オーケストラとの共演は数知れず。相棒のチェロは、あの名器〈ストラディヴァリウス〉!
そんな宮田さんが満を持してリリースしたのが、伝説的作曲家、セルゲイ・ラフマニノフのチェロ・ソナタを収めたアルバムです。ラフマニノフの美しく叙情的な楽曲は、クラシックファンでなくても、フィギュアスケートの演技やテレビCMなどで耳にしているはず。
「ある曲で酷評され落ち込んでいたラフマニノフが、はい上がろうと書いたのがこのソナタ。ゆううつで自問自答するような第1楽章がやがて疾走し、第4楽章は光に満ちあふれるような雰囲気に。20代のころの自分にはむずかしかった表現を、今だからこそやってみたいと思ったんです」
現在36歳の宮田さん。年を重ねて得た経験と、それに裏づけされた感情表現が自身の演奏の核になっているそう。
「たとえばサン=サーンスの〈白鳥〉を演奏するとき、若いころは湖を泳ぐ白鳥の姿を想像していました。でも今なら、白鳥がすうっと水面に降りてくる瞬間や、夕焼けで白鳥の白い翼がオレンジ色に染まっていくところなど、いろいろな情景を想像できる。練習ではさまざまなイメージで弾いて自分のパレットの色を増やし、本番ではそのパレットを全部洗い流して、真っ白な状態でその日の演奏に向き合います。アルバムのレコーディングもコンサートも、すべての演奏は一期一会です」
長いコロナ禍で、当初〈不要不急〉とされた芸術文化に救われた人も多かったのでは。「つらいとき、音楽を薬のように感じてもらえたら」と宮田さん。
「日本は海外に比べ、すばらしいコンサートホールが各地にあって、じつは音楽を楽しむのに恵まれた環境。特にチェロの音色は空間を包み込むように広がり、ホール全体が楽器のように響きます。ぜひ気負わず足を運び、生の演奏を感じてください。いいお薬を処方しますよ(笑)」。
大好きなお酒を飲みながら、とりためたバラエティ番組を見るのが宮田さん流リフレッシュ術。「最近ハマっているのが、宮崎の大麦焼酎『青鹿毛』。香ばしくてやわらか、独特の風味で濃厚な味わいがくせに。ストックしておき、炭酸割りで飲むのがお気に入りです!」。
宮田さん自身が「もっとも好きなチェロ・ソナタ」と語るラフマニノフのチェロ・ソナタを収録。注目は、10年来共演を重ねるピアニスト、ジュリアン・ジェルネとの圧倒的なアンサンブル。美しいメロディににじむ哀愁と希望に胸を打たれます。発売記念の全国ツアーも話題。
演奏:宮田大(チェロ)、ジュリアン・ジェルネ(ピアノ)/3300円/日本コロムビア
撮影/天日恵美子 取材・文/唐澤理恵
・2022年11月現在の情報です。・価格は、特に記載のない限り消費税込みの価格です。改定される場合もありますので、ご了承ください。
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