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2023.06.09

美術館と遊び場が合体! こどもの美術館デビューにぴったりな「PLAY!」

谷川俊太郎さんの絵本の中へ!

こんにちは。5歳と3歳のこども、にぃにとおちびを育てるライターのキヨコです。
みなさんは子連れで美術館に行くことはありますか?
こどもと行くと、飽きてぐずったりして、せっかく連れていったのに……と残念な気持ちになることもありますよね。
そこで今回は、こどもの美術館デビューにぴったりな、遊べる美術館「PLAY!」を体験レポート!

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東京・立川市にあるPLAY!は、絵とことばの美術館「PLAY! MUSEUM」と、こどものための屋内広場「PLAY! PARK」が合わさった複合文化施設。
初めに向かったのは、PLAY! MUSEUM。現在、「谷川俊太郎 絵本★百貨展」を開催中です。 詩人の谷川俊太郎さんは、これまでに200冊にも及ぶ絵本を作ってきました。『まるのおうさま』『こっぷ』など科学的な視点から世界のありようを伝える絵本や、『おならうた』『ぴよぴよ』などの言葉遊びの絵本。『もこ もこもこ』などのナンセンスに、戦争をテーマにした『へいわとせんそう』と、テーマも表現方法も縦横無尽。
この展覧会が「百貨展」と名づけられているのも納得です。

いきなり始まる「けん・けん・ぱ!」

最初の展示室の壁にはペルーの「チャクチャスチャフチャス」という民族楽器がかけられています。 そして床には色とりどりのまる。まるの中には「かっぱ かっぱ らった かっぱ らっぱ……」『ことばあそびうた』(絵・瀬川康男/福音館書店)の一節が。 まるで言葉遊びのような名前の楽器を手に持ちながら、「ことばあそびうた」を口ずさみ、けんけんぱするという趣向なんです。
じつは、PLAY!に行くのは3回目のこどもたち。遊び場があるのを知っているだけに、MUSEUMに行くより早くPARKで遊びたい! と、ややごねられていたのですが、この展示ですっかり心をつかまれていました。

あの名作絵本の表紙になりきり!

次に夢中になったのは、「こっぷはみずをつかまえる こっぷはけむりもつかまえる……」と、コップの性質をリズムのいい言葉と写真で伝える科学絵本『こっぷ』(写真・今村昌昭/福音館書店)の展示。
大きなコップの前に立って表紙を再現したり、中に入って自分の見える世界がどう変わるかを体験したり おや、この箱はなんでしょう。「こっぷは みらいへ つれていく」と書かれています。 そこには驚きの光景が! 何が見えるかは来場してからのお楽しみ!

大人が物語の解釈を話してもいい?

続いて子どもたちが夢中になったのは、『なおみ』(写真・沢渡朔/福音館書店)を講談師の神田京子さんが朗読するコーナー。「なおみはいる いつも わたしのうまれる ずっとまえから なおみはいた わたしのそばに」と始まるこの絵本は、なおみと呼ばれる等身大の日本人形と少女の交流が幻想的な写真で詩的につづられます。

展覧会に来る前、予習にと、谷川さんの絵本を図書館で借りて読み聞かせていたのですが、こどもたちがいちばん興味を持ったのがこの本。大人から見たら「ちょっと怖い」と思う世界観が、こどもたちをひきつけるようです。

物語の終盤、「そして あるあさ なおみは しんだ」と人形は棺に納められます。
にぃにに「おにんぎょうがしぬってどういうこと?」ときかれたので、「うーんと、にぃにも大切にしてるお人形やロボットのお話ししていることがわかるでしょ。でもだんだん大人になると、人形のお話が聞こえなくなってくるんだよ。それでこの女の子も大人になって、なおみのお話が聞こえなくなったのかもなあ、ママはそう思ったなあ」と話しました。

こういうとき、いつも迷います。大人の解釈を押しつけてもいいのか、想像を広げるきっかけとして話してもいいものか……。きっと、「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」というスタンスが大切ですね。そしてオサムという名のゴリラをユーモラスに描いた『オサム』(絵・あべ弘士/童話屋)や、さまざまなおならの音が出てくる『おならうた』(絵・飯野和好/絵本館)で笑ったあとは、幕で仕切られたわくわくのスペースへ!ここは『もこ もこもこ』(絵・元永定正/文研出版)を、谷川さんの朗読とともにアニメーションで体感できる展示室。もこっとしたビーズクッションに横たわり、こどもたちはアニメーションに合わせて「もこ」「にょき」「ぱくぱく」「ぎらぎら」「ぱちん」と大合唱。保育園でよく読まれている名作絵本、その全文がこどもたちの心にしっかり刻まれていました。

シンプルに伝わる「せんそうはいや」

「まけたほうは みんな しんだ。 かったほうも みんな しんだ。 おあいこだ。 でも ぼくは しなない」(『せんそうごっこ』絵・三輪滋/ばるん舎)という垂れ幕が下がった戦争と平和を考えるコーナーでは、わが家にもある『へいわとせんそう』(絵・Noritake/ブロンズ新社)が。「へいわのチチ せんそうのチチ」「へいわのまち せんそうのまち」と、それぞれがNoritakeさんのシンプルな絵で対比して描かれます。そして後半は、「みかたのかお てきのかお」「みかたのあかちゃん てきのあかちゃん」と、味方も敵もまったく変わらない同等のものとして描かれるのです。

こどもたちが直観的にわかる「くらべっこ」を使って、こんなにもシンプルに戦争の恐ろしさ、愚かさを伝えるとは……。にぃにもおちびも読み聞かせるたび、「せんそう、やだねぇ」としみじみ言います。

そのほか『あな』(絵・和田誠/福音館書店)の穴のあいた読書スペースや、本展示のために作られた新作『すきのあいうえお』のインスタレーションなど見どころいっぱい!
PLAY!のウェブサイトでは、展示で取り上げた絵本をあらかじめチェックできるので、親子でいっしょに予習してから鑑賞するのがおすすめです。 –{おなかがすいたら併設のCAFEへ}–

おならをケーキに⁉ 充実のコラボメニュー

さて、そろそろおなかがすいてきたので併設のCAFEへ。ここでは展覧会に合わせた期間限定メニューを楽しめます。
こどもたちが食べているのは、『おならうた』ケーキセット(ドリンクつき、1650円)。
「いもくって ぶ。」と飯野和好さんの大胆な絵で登場するサツマイモくんを紫いものスイートポテトで表現。後日、突然おちびが「おならのおいもたべたねえ」と言い出し、強烈な思い出となったようです(笑)。続いてにぃにが味見しているのは、『ぴよぴよ』ラテ(660円)。この『ぴよぴよ』(絵・堀内誠一/ひかりのくに)、じつは先ほどのMUSEUMのあちこちにいたんです。 そのほか、『もこ もこもこカレー』(1680円)に『まるのおうさま』ハッシュドビーフ(サラダつき、1680円)などなどフードメニューも充実しています。

 とくに『まるのおうさま』は絵本を予習していたこともあって、こどもたちが大興奮!
帰宅後しばらくした朝、おちびが何かごそごそやってるな、と思ったら……お皿に目のシールを貼って、『まるのおうさま』のお皿を自作していました!

–{こどものための屋内広場「PLAY! PARK」へ}–

家ではできない遊びがいっぱい!

いよいよ最後は、こどもたちお待ちかねの「PLAY! PARK」へ。
まず目に飛び込んできたのはビニールテープで作られたどしゃぶりの雨!ここは「大きなお皿」と名づけられたエリア。トイレットペーパや新聞紙、ラップ、風船などの素材を使って、期間ごとにPLAY! PARKオリジナルの遊具を設置しています。取材時は平テープの雨を降らせた「ざーざーざら」という遊具(8月末まで開催予定)でした。 雨の中でかくれんぼしたり、
平テープでできたそりをひっぱったり、山にして積んでみたり。
家では決して体験させられない、素材をダイナミックに使った遊びにこどもたちは大はしゃぎです。

ちょっと風変わりな楽器で遊べる「スタジオ」エリアでは、家族で協力して鍵盤ハーモニカを演奏。カラフルな木のおもちゃで遊べるコーナーは、アート感覚を刺激しそうです。お砂場コーナーでは、本物の調理器具でおままごと。そのほか、絵の具コーナー絵本コーナー赤ちゃん用の「小さなお皿」スペースもあり、何時間いても飽きません。

クリエイティブ力が爆発!

そして、大きなお皿に次ぐ目玉は「ファクトリー」エリア
書き損じの画用紙、ストローの袋、粘着テープの芯、卵のパックなどなど、魅力的な素材と道具が用意され、自由に工作できます。おちびは斬新な包丁形のお皿にのった「ぶるーべりぃけーき」を作っていました
こどもの集中力が続くのは、材料も道具もひと目見てどこに何があるかわかるように整理整頓されているから。おうちでも素材ごとに紙袋で分けるなどまねできそうです。

超シュールな工作で「ことば」を体感!

一方、にぃには展覧会とのコラボワークショップ「〇――――――――――」に参加(無料)。
お気に入りの1文字をワイヤの入った発泡スチロールで作って、「―」を生やし、自分だけの「〇―――――――――」を作るというもの。シュールです(笑)!

まず、どの文字を作るか考え、見本に合わせて発泡スチロールをくねくね曲げます。
次に、「―」の色を選んで、スタッフのかたに手伝ってもらいながら文字に「生やし」ます。でき上がったそれぞれの「〇――――――――――」を持ち寄って、大きなお皿へ移動。
みんなの文字を組み合わせて、なにか言葉ができないかな? と言葉遊びを楽しみます。ちなみににぃにが選んだのは「る」でした。最後に、「るーーーーーーーー!」と叫びながら、作品を飛ばします。 言葉が文字となり、文字が音となって飛んでいき、音が形になって見える……とってもおもしろい体験でした!

ほかにもポリ袋で「もこ」を作る「もこ もこもこ」など日替わりで開催。
「もっとやりたい!」「ここに住む(⁉)」というこどもたちを説得するのが大変でした。

締めは大人のおたのしみ、ミュージアムグッズ!
じつはPLAY! MUSEUMでは来場者に毎回お土産があるんです(有料チケットのみ)。今回いただいたのはなんと谷川さんの言葉入りトイレットペーパー! もったいなくて使えません……!SHOPでは、「言葉を持って帰る」をコンセプトに、押すといろんなおならの音が鳴る「おならボタン」や「もこ もこもこ」のピンズなど、どれもこれも俊太郎ワールド全開!
そのなかで私が選んだのは、谷川さんの言葉が入った「フォーチュンクッキー」(1080円)。
言葉のかわいさ、おもしろさ、奥深さを帰宅後も堪能したのでした。

【今回の学び】こどもと美術館を楽しむコツ

①   予習をしていく

展覧会に関連する絵本や動画などをあらかじめ見せておくと、「これ知ってる!」「〇〇なんだよね~」とこどもの関心がぐっと高まります。

② お勉強とお楽しみを交互に

展示物をただ眺めているだけでは飽きてしまいます。クイズを出したり、キッズコーナーで遊ばせたり、ミュージアムカフェでお茶したり、合間合間にお楽しみをはさみましょう。その点、PLAY! MUSEUMは展示物自体に遊びがあって◎。

③ 感想は遅れてやってくる

こどもの反応がそのときいまいちでも、がっかりしないで。何日もたってから見たものを工作しだしたり、「あれって、こういうことなんじゃない?」と自分の考えを話しだしたり、こどもの心にはちゃんと届いています。

その後、にぃにとおちびは「なおみ読んで!」「まるのおうさま読んで!」とすっかり谷川さんファンに。図書館に行っても「この本、たにかわしゅんたろう?」と、作家名で絵本を選ぶようになりました。

みなさんもぜひ、こどもと美術館デビュー、してみてくださいね。
ちなみにPLAY! MUSEUMの次回の展示は「エルマーのぼうけん」だそうです(2023年7月15日~10月1日予定)。

PLAY!

・東京都立川市緑町3-1  GREEN SPRINGS W3棟 2F・3F
・JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅北口より徒歩10分

入場料、利用方法は展覧会ごとに異なります。詳しくはこちらから
PLAY! 公式サイトhttps://play2020.jp/

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取材・文/キヨコ 撮影/有沙友香(kinmokusei photo)

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