
「のもの」は、東日本の食材や加工品、地酒など、
選りすぐりのものを集めたショップです。
「旬のもの」「地のもの」「縁(ゆかり)のもの」。
各地域の魅力や、生産者のぬくもりを感じられる品々は、
日々の暮らしに彩りを添えてくれるだけでなく、
その土地を訪れるきっかけにもなってくれそう!
ローカルフードを愛し、『オレンジページ』にゆかりのある
食のプロフェッショナルが選んだ
「のもの」のおいしい商品をご紹介します。
わたしが旅立つときのトランクは、いつも半分空っぽ。だって、現地でおいしいものを見つけたら、あれもこれもと思いっきり買いこみたい! 旅から帰宅してトランクを開けると、名産の大きなかぼちゃが丸ごと入っている……なんてことも、そう珍しくはありません。
ちょっとくらい足りないものがあっても、たいていの日用品は現地で買える時代。なるべく身軽に出かけて、「その土地のもの」でトランクをいっぱいにして帰るのが、わたしの旅のスタイルです。
十数年前、初めて秋田を訪れたときのこと。JR秋田駅前に大きな市民市場があると聞き、わたしの買い物ゴコロが騒ぎました。地元の人が日常的に買い物をしていて、旬の食材がずらりと並ぶローカル市場。きっと、秋田ならではのおいしいものがあるに違いない!
ただし、その日は前夜から雪が降り積もり、視界もあやしいほどの吹雪。雪だるまのようになりながら、やっとの思いで市場にたどり着きました。さ、寒い……あまりにも寒い! ぶるぶる震えつつ、ロビーの椅子へ倒れこんだわたしの前に、近くのテーブル席のおばあちゃんがやってきたのはその直後のこと。
「お茶っこ、飲まねが?」。手に持っていたのは、大きな湯呑みに入ったお茶と山盛りの豆かき餅。……わー、湯気の出た飲み物! ありがたくいただきますとも!
素朴だけれども薫り高いほうじ茶は、ひとくち飲めば冷え切った体がじわじわ解凍されていくかのよう。ホッとしながらかじったかき餅も、米自体の味がしっかりと感じられ、たまに当たる豆がカリッと香ばしい。少し強めの塩気もぴったりで、一気に食べきってしまいました。ふと見渡せば、周りの人も、みかんを食べていたり、自家製らしきお饅頭や漬物を交換し合っていたり。市場のロビーは地元のおばあちゃんたちの社交場だったんですね。
おばあちゃんに「これ、おいしいです!」と伝えると、クシャッと笑い「オラが作ったんだよー。まんず、さみいからね。紐でくくって、外に干しとけば自然とうまくなんのさ」。聞けば、寒ければ寒いほど乾燥して、よいかき餅ができるのだそう。へー、知らなかった!
あまりに未知でおもしろい秋田郷土菓子の話を聞くこと2時間(!)。お礼を言って、いざ市場へ買い物に行こうとすると、「これもってけ」と渡されたのが紐でくくられた干しかき餅でした。ありがたくトランクに入れて持ち帰り、しばらくの間は自宅のリビングの壁飾りとして鑑賞。「おばあちゃん、元気かなあ」と少しずつ食べたのを覚えています。
その後、秋田へは何度も行ったけれど、あのとき凍えながら食べたものよりおいしいかき餅には出会えていません。でもきっと、違うおいしい出会いが待っている。そう思いながら、またトランク片手にわたしは旅に出るのです。
編集者。酒とつまみと旅に関する著作多数。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『ツレヅレハナコの薬味づくしおつまみ帖』(PHP研究所)、『ツレヅレハナコの食いしん坊な台所』(洋泉社)ほか。
写真/有賀 傑 取材・文/中村 円 スタイリング/久保田加奈子 盛りつけ/髙山かづえ
東京駅構内地下1階改札外
03-5224-6033
7:00~22:00
(日曜・連休最終日の祝日~21:00)
上野駅中央改札外グランドコンコース
(ガレリア内)
03-5806-0680
SHOP/11:00~22:00
(土・日曜、祝日10:00~21:00)
カフェ/7:00~22:00
(土・日曜、祝日7:00~21:00)
秋葉原駅中央改札横
03-5256-7231
SHOP/11:00~21:00
キッチン/7:00~22:00
(土・日曜、祝日8:00~21:00)
※商品のお問い合わせ先:ジェイアール東日本商事 ☎03-3299-1942
協力/東日本旅客鉄道(株)