





日本の子どもは睡眠が足りていない
日本人は世界的に見て睡眠時間が短い傾向にあり、子どもも例外ではありません。ある調査では、子どもの睡眠時間が、主要なアジア・欧米諸国の中で最も短かかったという報告(※1)があります。1位のニュージーランドと比べると1.5時間以上も短い時間でした。また、2024年に発表された弘前市と弘前大学の研究(※2)によれば、5歳の子どもの18%が睡眠問題を抱えていると報告されています。さらに、3歳時点の睡眠時間が将来の健康に影響を及ぼす可能性があることも分かっています。富山県で行われた研究によると、3歳時点で睡眠時間が9時間未満の子どもは、中学1年生の時の肥満が多かったという結果(※3)があります。
このように、幼少期の十分な睡眠は身体的・精神的な健康の基盤となるため、保護者が子どもの睡眠環境を整えることが重要です。
「早寝」より「早起き」するほうが効果あり!?
「早く寝なさい!」と言ってもなかなか寝ない子どもにやきもき……。そんな経験をしている人も少なくないと思います。元気な子を寝かしつけるのは大変ですが、じつは早寝より「早起き」をさせていったほうが効果的。人の体のリズムを考えると、起きてからおよそ15時間後に眠くなる、というサイクル。つまり、毎朝6時に起きるようになると、夜9時には眠たくなります。本来はもう少し睡眠時間をとりたいので、これは、夜9時10時になってもなかなか眠れない子におすすめの方法です。また、ふだん寝不足だからと休日に朝寝坊させるのは逆効果。できるだけ休日も平日と同じくらいの時間に起きるほうが、早寝早起きのリズムが整います。夜はだんだん部屋を暗くしよう
夜になっても部屋の照明が明るいままだと、子どもの眠りスイッチがなかなか入らないもの。就寝時間が近づくにつれて、リビングルームの照明を暗めにしていきましょう。質のいい眠りのためには寝室を暗くし、朝はカーテンを開けて太陽の光を浴びるとしっかり目覚められます。寝る前1~2時間はスマホやテレビの画面を見ないようにするのがよいでしょう。1日のスクリーンタイムが2時間以下の子は睡眠問題が少ないという報告(※2)もあるので、スクリーンタイムについて家族で話し合うのもおすすめです。また、体の深部体温が下がると眠たくなることを考えると、お風呂の熱い湯に長く入って温まりすぎたり、お風呂の中で遊びすぎたりすると、深部体温がなかなか下がらず眠れなくなることも。子どもの寝つきをよくするためには、38~40度のぬるめの湯に短く入るようにしましょう。
(※1)Jodi A Mindell, Avi Sadeh, Benjamin Wiegand, Ti Hwei How, Daniel Y T Goh. Cross-cultural Differences in Infant and Toddler Sleep Sleep Medicine11(2010)274-280
(※2)Kuki, A., Terui, A., Sakamoto, Y., Osato, A., Mikami, T., Nakamura, K., & Saito, M. (2024). Prevalence and factors of sleep problems among Japanese children: a population-based study. Frontiers in Pediatrics, 12, Article 1332723.
(※3)関根道和、山上孝司、鏡森定信「富山出生コホート研究からみた小児の生活習慣と肥満」『日本小児循環器学会雑誌』2008年第24巻第5号、pp.589-97

監修/工藤紀子
小児科医・医学博士、保育士。 順天堂大学医学部卒業、同大学大学院 小児科思春期科博士課程修了。栄養と子どもの発達に関連する研究で博士号を取得。 現在2児の母。アメリカにて子育てを経験。「育児は楽に楽しく安全に」をモットーに、年間のべ1万人の子どもを診察しながら、子育て中の家族に向けて育児のアドバイスを行っている。 https://noriko-kudo.com/

作/(キモト)
准看護師免許を持つ漫画家。「子どもたちに健康と元気を届けたい」という思いで、子どもがかかりやすい病気や、体のことについてユーモラスなキャラクターで紹介している。「親子で一緒に学んで、病気に負けない強い体づくりを日頃から心がけてほしい」。
公式サイト:「なおせ!トリートマン」
X:https://twitter.com/136teatman
