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馬田草織の塾前じゃないごはん
塾前じゃないごはん=お夕飯のこと。ポルトガル料理研究家で文筆家の母・馬田草織さんとJKこと女子高校生の娘さん。女2人で囲む気ままな食卓の風景をお届けします。さて今晩の「塾前じゃないごはん」は?

受験終了、からの早春買い物デイズ。そしてJK弁当どうするよ問題。『ほたるいかと菜の花のパスタ』のレシピ

2024.03.19

「ほたるいかと菜の花のパスタ」のレシピ

[第24回]『受験終了、からの早春買い物デイズ。そしてJK弁当どうするよ問題』

[第23回]塾前じゃないごはん、ラストナイト(連載は終わらないけれども)。

ようやく受験が終わったと思いきや、3月前半は問答無用で買い物の日々となった。
まずはデパートの特設会場へ。春から通うK校の制服採寸、さらに体操着や通学用靴や鞄といったアイテムを次々とオーダー。ジャケットやスカート、インナーも夏冬それぞれ、普段の買い物ではあり得ない一気買いで途中から買い物ハイになった。

JC娘、念願のコンタクトデビュー

それ以外にも、この春はJC娘自身が待ちに待ったイベントが待っている。メガネを卒業しコンタクトにするのだ。眼科を訪ねて視力をチェックし、院内の小さな洗面所のようなスペースでさっそくコンタクトレンズ装着の練習。薄くて小さなレンズを目玉に指で入れるという行為は、最初はなかなかに勇気がいる。のだがJC娘、あっという間にクリア。なにその無敵感。そうだよね、本人たっての希望だったから超能動的なのだ。そのわかりやすさを愛でつつも、ついでに家の手伝いとかもそんな感じで頼む、と脳内でつぶやいていた。

翌日も友人のヘアサロンへ。晴れたけど風の強い早春の朝、駅までの道のりをいっしょに歩いていると、あの建物がくっきり見える、あの看板の小さい文字が読めると、コンタクトによる世界の見え方の違いや視界良好であることの素晴らしさ、顔まわりの軽さに感動が止まらない。こんなに喜ぶなら、もう少し早めにコンタクトデビューさせてあげてもよかったかもと思いつつ、いやでも、念願かなったいまだから装着の決まり事もしっかり守るだろうし、これでよかったのだと自分に言い聞かせる。新しいことを始めさせるタイミングの見極めは、いつもむずかしい。

ヘアサロンに着くと、さっそく美容師の友人にヘアスタイルの相談開始。隣で聞いているとなかなかにややこしい。絶対短くしたくない、でもイメージは変えたい。あと、いまどきティーン的前髪わきの長めアクセントは残したいという難注文。むむ。でも、さすが美容師の友人はティーンの最新ニーズにも慣れていて、女神的笑顔とやさしい声かけでJC娘の緊張をほぐしつつ、あっという間に2人の世界をつくり出す。その間おじゃま虫のわたしは外へ。サロン近くを散歩し、お茶を飲み戻ってくると、カットを終えたJC娘の表情が見事にトーンアップしていた。それはもう、こちらもうれしくなるほど。なんなら少し自分に自信を持てたような様子だ。しかも、要望をすべてかなえてなお大人っぽさも加わり、友人のテクニックが見事にさえわたる仕上がりだった。そして、人はおしゃれによって自己肯定感が上がるのだということをあらためて実感した。

カット後は近くのスタバでひと息ついてそのまま最寄りのZARAへ。2人で春服を試着しまくる。さらに大きな書店へ向かい、目当ての本を探した。偶然JC娘がリスペクトしてやまない水木しげるコーナーを発見し、テンションが爆上がる。おしゃれに仕上がったティーンが妖怪本に目移りしている様子がおもしろい。記念に本をプレゼント。さらにドラッグストアでメイクアイテムをさっとのぞいてからの、本日の重要案件、スマホを買い替えに家電量販店へ。週末のスマホ契約ゾーンは思った以上の混みぐあいだったが、JC娘にはそんなことは痛くもかゆくもないらしい。ややこしい手続きをして順番を待ち、硬い椅子に座りっぱなしだったが、本人は心からうれしそうだった。恐るべしスマホパワー

すっかり日も暮れてどこかで食べて帰ろうかとなったが、目当ての店はどこも混んでいてさまようパワーもなく、結局テイクアウトを家で食べることに。よくしゃべりよく買い物してよくカードを切った一日だった。そのたびに、JC娘から何回もありがとうを聞けてうれしかった。親としては、それが誇らしくもある。

娘との買い物で得た、気づきと喜び

わたしは日々なんのために働いているのか。それはたとえば、こういう日に気がねなくカードを切るためだ。ついでにわたしも調子に乗って、欲しかったバッグを買った。勢いがないと買えないたぐいだったので、これこそアドレナリンのなせるわざだ。そう、お金は使うために稼いでいるということを、わたしだってたまには楽しみたい。そんな機会をくれてありがとう。

思わぬ受験の副産物、それは買い物三昧の週末。親といっしょに行動する時間がめっきり減ったいまだから、たまの買い物時間は貴重だ。アイテムを選びながら、あるいはお茶を飲みながら、お互いの好みや考えや要望を言い合う。それはつまり、互いに楽しく生きていくための打ち合わせみたいなものだ。軽い話も大事な話も口にしないと伝わらない。でも、ホルモン大航海時代をさまようティーンとわたしには、これがなかなかに難しい。家ではぶつかりやすくなることも、外だとスムーズになることもある。それを実感した週末だった。

JC娘のJCデイズも残りわずか。夕ごはんも塾前、塾前じゃないのすみ分けはなくなり、のんびりと話しながら食べられる。このリラックス感はいつ以来だろう。もっかの会話は、JK弁当問題だ。たまにはカフェテラス(学食とはいわないらしい)や購買で買うとしても、基本は毎日お弁当。週の半分ぐらいは手伝うけど、できるときは自分で作ってみないかと持ちかけると案外乗り気だ。実際はK校生活が始まってみないとわからないが、自分の弁当を自分で作ることは料理が身近になるいい機会。さて、どうなることやら。

あれこれ話をしながら、とりあえずは夜タイマーセットして朝炊きたてを弁当に詰められるよう、炊飯器を買うことにした。最新鋭の炊飯器でまた少し生活が変わる予感。JC娘のおかげでわたしも思わぬ経験ができることが、とてもうれしい。

今回の塾前じゃないごはん


「ほたるいかと菜の花のパスタ」

蛍烏賊(ほたるいか)は俳句では晩春を表す季語。富山湾には毎年数百万匹のほたるいかが押し寄せ、産卵のために闇夜に浮上しては海岸に打ち上げられ、それらが青白くほたるのように輝くのだそう。一度現地に見に行ってみたいものです。ワインに合わせるなら、旬の菜の花といっしょににんにくと唐辛子をきかせた気軽なパスタで。発酵したアンチョビーのうまみをかくし味に加えます。

ほたるいかは、できれば目や軟骨、くちばし部分を取る下処理をすると口当たりが格段によくなって食べやすい。かるく洗って両わきの目をつまみ取る。足のつけ根に隠れているくちばしはかるく押し出してつまみ取る。軟骨は三角形の耳(えんぺら)の間に縦に入っているのでひっぱって取り出す。

鍋にたっぷりの湯を沸かして塩適宜を加え、ペンネ2人分を袋の表示どおりにゆでる。引き上げる30秒くらい前に食べやすく切った菜の花1束を加え、ペンネといっしょに引き上げて汁けをきる。ゆで汁はソースに加えるのでとっておく。

ペンネをゆでる間にソースを作る。にんにく1かけはみじん切りにし、唐辛子1本は種を取ってちぎる。オリーブオイル大さじ1を入れたフライパンに加え、ごく弱火で温める。シュワシュワと音がして香りがしてきたら火を止め、アンチョビーフィレ3切れを加えて木べらでつぶしながら余熱で溶かし混ぜる。アンチョビーがなじんだらパスタのゆで汁を加えて混ぜ、弱火にかけてソース状にし、ほたるいか2つかみを入れてかるく煮る。ほたるいかがふっくらしソースが煮つまってきたらペンネと菜の花を加え、火を止めてソースとペンネをよくからませる。最後に味をみて塩でととのえる。

ほたるいかのぷりっとした食感や独特の味わい、菜の花のほろ苦さに春を感じます。わたしはいつもつい具だけ先につまんじゃう。ワインもビールもすいすいすすむ、初春のけしからん一皿です。
馬田草織
馬田草織
文筆家・編集者・ポルトガル料理研究家。思春期真っ盛りの女子中学生と2人暮らし。最新刊「ムイトボン! ポルトガルを食べる旅」(産業編集センター)。料理とワインを気軽に楽しむ会「ポルトガル食堂」を主宰。開催日などはインスタグラムからどうぞ。
インスタグラム @badasaori

『馬田草織の塾前じゃないごはん』 毎月第2・第4火曜更新・過去の連載はこちら>>>

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