2024.11.01

絵本のプロ&本好きが選ぶ おいしい食べ物絵本

真っ赤なりんごや、サックサクに揚がったコロッケに、もくもく湯気が上がる鍋。おいしい料理やおやつを、おいしそうに見せてくれる絵本を見ていると、おなかがグゥグゥ鳴って、食べたい! 作りたい! って気持ちになってきちゃうよね。絵本をよく知っている人たちに、おすすめのおいしい絵本を見せてもらったよ。

今回、絵本を紹介してくれるのは、鈴木潤さん。京都の「子どもの本専門店 メリーゴーランド京都」の店長さんです。

こどもはもちろん、料理のできる大人も楽しめる

まず、1冊目は

『料理しなんしょ コッペとオサジのおいしい12か月』

まるもと ただゆき/作
こがしわ かおり/絵

偕成社主人公は、料理をしたことのない女の子。おうちで留守番をしているうちにおなかがすいてきて、料理をしてみることに。いっしょに料理をするのは、なんとトカゲたち。いろんな料理の作り方を描いてくれているから、眺めているだけでもおもしろいし、これを見て作ることだってできますよ。
「読み物としておもしろいのはもちろん、『お湯を沸かしてみよう』や『キャベツをちぎったらサラダ』というように、基本的なところからやっているのがいい。料理本ではなくとも、作る楽しさもわかるし、『自分にもできる』という達成感が味わえて、自信につながるポイントがいっぱいです」

 

今日のごはんのにおいが気になってくるはず

2冊目は

『くんくん、いいにおい』

たしろ ちさと/絵
グランまま社

表紙を見ると、男の子と犬がにおいをかいでいますね。ページをめくると、焼きたてのパンや、むいたみかん、炊きたてのご飯などが登場します。どんなにおいか想像しているうちに、こちらも思わず鼻をくんくんさせちゃうほど。
「においに特化した珍しい絵本です。嗅覚と味覚ってセットになっているせいか、見ているだけでおなかがすいてくるし、食への興味をかきたてられると思います。おいしそうな食べ物が続いたあとには、生活の中にあるいろいろなにおいにつながって世界がどんどん広がります」

働いて、食べて、寝るという何気ない営みがいとおしい

最後は、

『パンやの くまさん』

フィービ・ウォージントン/作・絵
セルビ・ウォージントン/作・絵
まさき るりこ/訳
福音館書店

主人公のくまさんは「ゆうびんや」や「うえきや」など、いろいろな仕事をしています。この本では「パンや」さん。起きてから眠りにつくまで、くまさんがどんなふうに過ごしているのかがわかる絵本です。くまさんが焼くパンも、食べているごはんも、本当においしそう。
「くまさんが人間社会でしっかり働いて生活している様子が描かれています。町の人たちとの交流もあって、地域に根差しているのがいい。朝早くから生地をこねてパンを焼き、売ったあとは、暖炉であぶったマフィンに木いちごジャムを塗って、さらにゼリーまで食べちゃう。暮らしのなかにある食を伝えてくれます」

ね、おなかがすいてくるでしょう? ほかにも『こどもオレンジページ No.6』では、おにぎりの作り方がわかる絵本や、大きなリンゴが落ちてくる不思議なお話まで、いろいろな絵本を紹介していますよ。ぜひ見てくださいね。

次は、トラックで絵本を売っている三田修平さんのおすすめの絵本を紹介しますよ。お楽しみに!



選んだ人/鈴木 潤

「子どもの本専門店 メリーゴーランド京都」店長。三重県・四日市のメリーゴーランドでの企画担当後、2007年に京都店出店とともに京都へ移住。雑誌やラジオ、テレビなどでの絵本の紹介、子育てにまつわるエッセイの執筆、講演会など多方面で活躍。近著に『物語を売る小さな本屋の物語』(晶文社)がある。2人の男の子の母。

文/晴山香織

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