2023.07.31

【開発ストーリー】『こどもオレンジページ』初の付録 マジックBOXはこうして生まれた!

7月6日に発売になった『こどもオレンジページNo.5』には、付録がついています。
中にものを入れて、ふたを閉めるとあら不思議! 中のものが消えちゃった!
また閉めて再び開けると……あれ? 消えたはずのものが現れる!



不思議でおもしろい、魔法の小箱、マジックBOX。

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開発者は、全国で、こどものためのクラフトワークショップなどを開催している、「あそびの学校」を主宰する二見さん。
編集部とタッグを組んで、初の付録作りに至るまでのお話をお聞きしました。

開発者は、「あそびの学校」を主宰する二見さん


二見さん(以下敬称略) この箱、何かを入れて、消えて……というマジック遊びはもちろんのこと、物語の装置にもなってしまうんです。この絵はうちの娘が描いたんですが、うさぎさんが水やりをしていたと思ったら、(スライドさせて中を開ける)にんじんを収穫してる。

編集・和田 紙芝居みたいで楽しいですね! 今回、二見さんが主宰されている「あそびの学校」が作っていらっしゃるたくさんのオリジナル教材の中から、「『こどもオレンジページ』といっしょに何かできませんか?」ということで、この魔法のボックスにたどり着いたわけですが、こちらは「あそびの学校」でもとても人気があるものだとか。
 
二見 はい。ぱっと見はただの箱なので、見た目だけで魅力を伝えるのはむずかしいですよね。でも、実際に何かを入れて、消してみせると、この箱の魅力がものすごくよく伝わります。こどもの心をひきつける魅力がありますよね。

和田 初めて見た子はびっくりしますか?

二見 はい。びっくりしますよね。「私もやってみたい!」と大騒ぎです(笑)。そのこどもたちの笑顔やしぐさというのは、私自身の生きるものさしになっています。

 
和田 この箱が誕生したきっかけは?

二見 マジックショーを見に行ったんです。ショーに引き込まれてこども心に戻り、感動して見入ってしまいました。帰り際に「この感動や驚きを伝えられる教材をこどもたちにやらせてみたいなぁ」と。作りながら仕かけも学べたら素敵だなぁと。

和田 仕かけのある箱を1枚の厚紙から切り出して折って作れるようにするには、設計図がいりますね。

二見 はい。分かりやすくシンプルにしたい。そのためにはどうしたらいいんだろう? 細かいことですが、箱の両端に指が届かず、うまく引き出すことができない小さなこどもにはどう対応したらいいのか? など、試行錯誤を重ねました。

和田 確かに、このマジックBOXには取っ手が作れるパーツがついていますね。手が小さくて箱の両脇に手が届かない子でも、取っ手をつければひっぱれる! 考え方が細かく、素晴らしいですね。


「つくるよろこび」と「つどう楽しさ」をこどもたちに届ける「あそびの学校」のワークショップ


和田 「あそびの学校」では、こども向けのワークショップを全国各地で開催されているとうかがっていますが、具体的にはどんなことをやられているんですか?

二見  「あそびの学校」というブランド名を掲げワークショップを主軸に活動しています。実施場所は主に商業施設の広場などの空きスペース。そこには家庭でもなく、学校でもない第三の環境が存在しています。つまり男女、年齢の別なく、不特定多数のかたが「これを作りたい」という目的で集まり、「一緒につどえる」環境です。あそびの学校では「つくるよろこび」と「つどう楽しさ」を主旨としています。作りながらこどもたちの意欲を引き出しているんです。 

和田 意欲はどのようにして引き出すのでしょう?

二見 たとえば作っている途中でこどもの作品をお借りし「こんな形にもなるんだね」などと皆に見せてあげると共有化され、創造性の幅が会場全体に広がります。工作の基本的な作り方はお伝えしますが、どうするかは自由。主体性を尊重し、そこにつどうかたがたの想いをつなぎ合わせることも重要です。大きな子が小さな子へ伝えてあげたり、いっしょに遊んだり、作った作品の発表会をするのも「つどう楽しさ」につながります。それらのきっかけを私たちが整えることが大事かと感じます。

和田 ワークショップというと、作り方を教えて、作って、完成、バイバイということもありますが、お話を聞いていると、ものすごく深みを感じますね。


あそびの学校が開発してきた教材の数々。木や段ボールなど、手で触ることで想像力もかきたてられる。※教材はほんの一部です。

 
二見 よく見かけますワークショップの教材は、市販品をそのまま使用していることが多いと感じています。あそびの学校ではオリジナルの教材を開発、製造して提供しています。こどもの手の大きさを考え、飽きない仕組み、そして安全性も考慮しています。その数は数百あります。

「工作を紹介したい」という声からひらめき、マジックBOXを付録に


二見 『こどもオレンジページ』さんとの出会いはとある展示会で、「『こどもオレンジページ』という雑誌がありまして、工作のページを作りたいんです」とお声がけをいただいたのがきっかけです。でも、「これを作ろう」と工作の紹介ページを設けても、読者のかたの手もとには材料がないわけです。「ものがないので、自分で調達して作ってもらえるのは、ごくわずかでしょうね」と、印象を正直に伝えました。でも同時にひらめきまして、「付録をつけるのはどうですか? このマジックBOXなんかは適していると思いますよ」と。

和田 これまで付録をつける雑誌ではなかったのですが、私も現物を見てすごくおもしろいと思いました。ただ、実現にはいろいろハードルもあると思ったのですが、上司に箱を実際に見せて、(閉じたり、開けたり)はいっ、はいっ、ってやってみたら、「どうなってるの!?」ってすごく盛り上がって。トントン拍子に付録にしましょう、しましょうと。

二見 本来であれば「あそびの学校」のワークショップでいっしょに作る教材ですが、文字や動画での作り方の説明も作りました。普段お届けできないかたがたへ、体験していただけるきっかけができたことに、何よりもうれしさを感じています。

インタビューの途中では、マジックBOX以外の教材の一部も見せていただいて、仕かけがわかるたびに驚きの声が。

 
和田 ところで、こどもを取り巻く遊びの環境は変わってきていますか?

二見 はい。特に新型コロナが流行してからは、外で遊ぶ、誰かと一緒になって遊ぶということが極端に抑止されました。その影響もあってのことかと思いますが、こどもにデジタル機器を与えすぎていると感じています。実際に作って、「なるほどなあ」と思うアナログ感覚って大事だと思うんですよ。たとえばピンク色を作るにしても、最初にデジタルから入ると、ピンク色を選んで終わり。アナログなら白と赤をどれだけ混ぜるとピンク色になるかな? と想像したり、試行錯誤が生まれるのですが。

発想が柔軟な学齢期までに育てたい、アナログの感性


和田 そういうアナログの感性はどうやって育てますか?

二見 まず基準となる感性の幅を探る方法の1つをご紹介します。誰でもいいので、人の顔を描いてもらいます。その完成した顔を見た時に個人の能力の違いもありますが、はっきりと目、口、耳など各部分がきちんと明確に描けていたら、幼少期における頭の柔軟性が次の段階に切り替わっているかと思います。これは第一段階の分岐点の話ですので、その先も感性を育むことができるのですが、はっきり描けない時期があります。たとえば大人の方が見たら「え~とどこが鼻?」とか「鼻は書かないの?」「眉毛は?」など聞くかと思います。子どもからは「ここが鼻だよ」と(笑)。

和田 確かに、最初は大人からすると目も鼻も区別がつかない絵を描きますね。

二見 「なんでこれが鼻なの?」と思うかもしれないのですが、それはその子が感じて思ったままの鼻を描いていますので、素晴らしいことです。年齢が上がるにつれて、髪の毛や細かなほくろなども描けるようになります。そしていつしか「きちんと描かなきゃ」「うまく描こう」って思ってしまう。大人がその「顔」を見た時に、「どこが鼻なの?」と思う時期に、デジタルではなくアナログに触れさせてあげるかがとても大切だと思っています。

和田 こどもの感性や目線、大人のありかたも大事ですね。

二見 目の高さや見える世界を意識しながら、こどもといっしょに歩いてみたらどうでしょう? 当たり前ですが背の高さが違います。子どもの目の高さだと見えるものが全然違います。低い位置は、こどもには見えるけど大人は見えない。逆に高い位置は、大人には見えるけどこどもは見えない。自動販売機の飲みものも、上の方になればなるほど見えていないことでしょう。さらに大人は漢字や英語が読めますが、こどもは読めません。字が読めないこどもには色や飲んだ経験と合わせて、不思議そうに眺めて考えていることでしょう。そんな状況で「早く選びなさい」などいわれても、こどもは困りますよね(笑)。これに限らずですが、大人がこども目線で考えなければならないことは多々あるかと思います。


和田 こどもメガネがあるといいですね! さて、今回の付録、どうやって使ってもらいましょうか?

二見 『こどもオレンジページ』を読む子なら、クッキーを作るかもしれない。そしたらこの箱に入れてプレゼントしてみてはいかがでしょうか。作る、贈る、消える、出てくるなどいろんな楽しみかたがあります。絵を描けばさらにオリジナルとなります。たとえば新幹線描いて箱を伸ばしたら続きの車両が出てきたり、なぞなぞを書いて、再びなかを開けると答えが書いてあるクイズボックスにするのもおもしろいですね。ポケットティッシュを入れればティッシュボックスにもなります。何をするかは自由です。ぜひ皆さんで楽しんでもらえたら幸いです。


 
What‘s?  あそびの学校
累計参加者数450万人の実績を誇る日本最大のワークショップ。
こどもたちに「つくる喜び」と「つどう楽しさ」を伝える工作活動を
日本全国の商業施設などで開催
http://www.asobinogakkou.org/



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インタビュー/和田有可(『こどもオレンジページ』編集長) 撮影/有賀 傑 取材・文/中村 円

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