「一汁三菜は、昔から受け継がれてきた食事スタイルであるのと同時に、栄養の面から見ても非常に理にかなっています」と新谷友里江さん。主食にはエネルギー源となる糖質、主菜には筋肉や血をつくるたんぱく質や鉄、副菜には内臓の働きを正常に整えるビタミンやミネラルが多く含まれています。メニューを考える際に、一汁三菜がそろうようにすればバランスよく栄養がとれるのです。このほか、「一食で多くの食材をとることができるので低カロリーでも満足感が高く、食べすぎを防げます」(新谷さん)。
和食の基本となる〈一汁三菜〉は、ご飯、汁ものに、おかず3品から構成される献立のこと。おかずは、魚や肉、大豆、卵などの主菜1品と、野菜やきのこ、いも、海草類など副菜2品の組み合わせが一般的です。ここに、「香の物」(漬けもの)がつくことも。
和食のベースとなるご飯とみそ汁の組み合わせは、味の相性がいいだけではありません。米には、たんぱく質の構成成分であり人間の体の中では合成できない「必須アミノ酸」が含まれていますが、このうち「リジン」「スレオニン」という2種の成分が不足しています。
みそにはこのリジンが豊富なため、ご飯とみそ汁をいっしょにとることで、米に含まれるたんぱく質が体内で効率的に利用されるのです。
〈一汁三菜〉というと手間がかかるイメージがありますが、ちょっとしたコツを覚えれば簡単に献立を組み立てることができます。
「たとえば、朝食の主菜を納豆や豆腐、生卵、ちりめんじゃこにすれば調理の必要はなし。みそ汁を作る時間がないときは、市販のだし入りみそやインスタントみそ汁を上手に利用してもいいでしょう。また、料理の段取りにもひと工夫。時間があるときに野菜を塩もみした漬けものを作ったり、ほうれん草をまとめてゆでておけば、スピーディに副菜が完成します」(新谷さん)。
こんなふうに、まずは気軽にできる和食から。私たちの先祖は一汁三菜の食卓を家族で囲み、人と人との絆や健康をはぐくんできました。この貴重な伝統をあらためて見直してみませんか?