子育ての経験から生まれたレシピの数々が、作くりやすくておいしいと評判の和田明日香さん。メディアなどで見せる自然体で飾らない人柄も注目を集あつめています。そんな明日香さんが子育てを通して気づいた、食育の意味とは? 前後編インタビューの後編をお届けします。
前編「子どもの好き嫌い、どうしたらいい? 和田明日香さんちの楽しい食卓にヒントあり」を読む
実家のホットプレートは、たのしい食卓の原風景
明日香さんの食の原点は、幼少期に家族で囲んだ食卓でした。
「母の実家が大阪なので、家族でホットプレートを囲みながら、関西人の母が作るお好み焼きや焼きそばをよく食べていました。できるまでの間、ホットプレートの端で弟と余った具材で料理ごっこをしたり、両親の仕事の話を聞きながら大人の世界をかいま見たり。食べるまでの時間も含めてわくわくするひとときだったんです」
「自分も親になり毎日ごはんを作つくる立場になった今、家族で食事をする時間そのものが『おいしい』につながるということを、しみじみ感じています」
お手伝いは「自分でやりたい」気持ちを育む絶好のチャンス

仕事と両立しながら、家族5人の食事やお弁当作りをこなす明日香さん。3人のお子さんにはそれぞれ好き嫌いもあるので、さぞ大変では?
「基本的には私が作りたいものを作っています。その中で食べやすいように切り方や味つけを工夫しながら、家族みんなが好きなレシピを増やしてきました。煮込みうどんや焼きそば、タコライスは家族みんなが好きで、しかもいろんな食材を一度に食べられるので、困ったときはコレ、というくらい助けてもらっています」。
自分でやりたいという気持ちを育てる意味でも、味つけや盛りつけを子どもたちにまかせることも多々あるそう。

「自分で味つけするのって楽しいし、そのぶん食もすすみますよね。タコライスも手がかかっているように見えるけど、トッピングは子どもたちにやってもらうようにしているので、意外とラクだったりします」
和田家のキッチンでは、こどもたちが料理を手伝うのも日常の風景。「とくに好きな料理や食材の日は、自分の仕事というこどもなりのプライドがあるのか、すすんで手伝ってくれます。誕生日などお祝いの日はもちろんですが、元気がないな~という日に、がんばれの意味をこめてその子の好きな料理をいっしょに作ることもあります」

仕事柄、キッチンに立つ時間が長い両親を見ているからか、子どもたちも小さいときから自然と料理を楽しんでいます
親から子へ。料理が紡ぐ幸せの記憶
じつはこの数カ月、和田家ではある料理がブームになっているそうで……。
「夫がピザ作りにハマっていて、生地から手作りして家族にふるまってくれるんです。凝り性なので、ついには家庭用のピザ窯まで買ってしまって。『またピザ作ってる』と思うこともあるんですが、焼きたてのピザのおいしさにはあらがえません。こどもたちもピザが焼けるいいにおいにつられて、窯のまわりに集まってきます。
「私にとって実家で囲んだホットプレートのように、いつか夫が焼くピザの味と香りが、こどもたちにとって幸せな記憶のひとつになってくれたらうれしいですね」
◇和田明日香さん
料理家、食育インストラクター。東京都出身。3児の母。料理愛好家・平野レミの次男と結婚後、修業を重ね、食育インストラクターの資格を取得。まったく料理ができなかった自身の経験を生かし、生活に寄り添った手軽でおいしい料理が人気を集める。テレビや雑誌などメディアでのレシピ紹介、料理企画を通した企業とのコラボレーションなど、料理家としての仕事を中心に、〈食育〉や〈家族のコミュニケーション〉をテーマにした全国各地での講演会やイベント出演、コラム執筆、ラジオパーソナリティなど幅広く活動中。