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【移住者インタビュー】150種類以上の野菜を育てる「那須高原こたろうファーム」渋江夫妻の挑戦【栃木県】

2024.05.17

東京から栃木県の那須高原へ移住し、150種類以上の野菜を育てる〈那須高原こたろうファーム〉の渋江和彦さん・陽子さん夫妻。特に種類が多く味わい豊かなトマトは大人気です。農業を始めるまでの経緯や那須高原の魅力、そして野菜の楽しみ方について話を伺いました。

東京から那須へ移住後、農業を志した理由は

二人はともに山形県出身。学生時代より東京で暮らし、長く働いていましたが、いつかは田舎に住みたいという思いがありました。

「東京は住みやすく便利ではあったけれど、やっぱり夜中でもずっと騒音がしますし、満員電車にも疲れてきて。空気のきれいなところへ行きたいねっていうのはありました。住む場所を変えたいという気持ちが大きくなってきたんです」と和彦さん。

移住先を探して全国各地を回ってみたところ、いちばんしっくりきたのが那須高原だったそうです。

「まだ東京の会社に通うつもりだったので、新幹線で通勤できる北限が那須だったんです。山形と東京のちょうど真ん中くらいに位置することもあり、どっちにも行きやすくて地の利があるなと思いました。自然が豊かでのんびりしているのと同時に、東京に負けないくらいおいしいパン屋さんやおしゃれなレストランもある。ほどよく田舎で、ほどよく都会的でもあるんです」(和彦さん)
移住者が多く溶け込みやすい雰囲気も那須高原の魅力だそう
移住者が多く、溶け込みやすい雰囲気も那須高原の魅力だそう
2009年に那須へ引っ越し、その後は結果的に会社を辞めることになり、いざこの土地で仕事をするにあたって、興味を持ったのが農業でした。

「家庭菜園を楽しんだ経験はありましたが、仕事として農業に従事するのはまったく初めてのことでした。当時40代前半でしたので、新しいことに挑戦するならこれが最後のチャンスかもしれないと思い、思い切って飛び込んでみました」(和彦さん)

料理人のリクエストにこたえるうち、育てる野菜は150種以上に

農業の技術を習得するために、1年間農家で研修を行い、独立。研修先ではトマトを中心に栽培し、そこはで直売所も運営していたため、販売のノウハウも学ぶことができたそうです。

「自分たちもトマトが好きだったので、トマト栽培からスタートしました。那須は観光地ですし、研修先がそうだったこともあり、自然の流れでまずは近くの直売所に持っていって販売するようになりました。まだ自分たちの技術も未熟でしたし、すぐ売れるわけではなく、最初は収入がなくてけっこう苦労しました。そのうち友人のカフェの店先などでも販売してもらえるようになり、そこで地元のホテルの料理長さんが目を留めてくれました」(和彦さん)
多種多様なトマトがそろうのがこたろうファームの特徴
多種多様なトマトがそろうのがこたろうファームの特徴
料理人さんとの出会いは大きかった、と和彦さんはいいます。「もっと小さいトマトはないの?」「こんな種類のトマトは作らないの?」など、料理人さんからのいろいろな要望を聞いているうちに、どんどん種類が増え、販売先も口コミで広がっていったそうです。現在はトマトだけで30種類以上、野菜全体では年間150種類以上を栽培しています。気になる野菜はとにかく種をまいてみて、本を読んだり、ネットで情報を探したり、詳しい人に教えてもらったりして、基本的には独学で、育てながら技術を習得していきました。

渋江さんご夫婦と数名のアルバイトですべての作業を行う
渋江さんご夫婦と数名のアルバイトですべての作業を行う
「種類が増えたのは料理人さんたちのおかげです。こんな野菜があるよって教えてもらうことも多かった。あとは自分たちの興味も大きいかな。そもそも二人とも食べることは大好きなんです。東京ではそんなに野菜を意識したことはなかったんですが、実際に栽培して食べてみて、野菜ってこんなにおいしいんだと実感するようになりました。おいしかったら、もっと作ってみたいと思うようになったんです」(和彦さん)

「私たちは二人とも山形出身。子どものころからわりと新鮮な野菜が身近にあって、山形で食べるものは野菜もお米もお肉も、何でも普通においしいものを食べていたので、舌が肥えて育っちゃったのかな、という気はしています」(陽子さん)

育てた野菜はほとんど、まず自分たちで日々試食し、どんな食べ方がおいしいか研究し、SNSや直売所で、できるだけお客さまに伝えるようにしているそうです。自分たちで食べて納得したものなら、お客さまにも自信を持ってすすめられる、と和彦さん。種類を多く作ることは大変ではあるけれど、いろんな野菜を食べられるから単純に楽しいね、と笑顔で話します。

地域でのつながりが深まったきっかけは東日本大震災

那須はかつていろんな地域から人が集まる、開拓民の土地だった歴史があり、もともと移住者にもオープンで、溶け込みやすい空気があった、と和彦さんはいいます。
引っ越して数年たち、ちょうど農業従事者として活動を始めたころに東日本大震災がありました。それがきっかけとなり、今まで知らなかった地元の人どうしが、最初はSNSを経由してつながり、実際に会う機会も増えました。お互いに助け合い、情報交換を行うなどして、しだいにつながりが広がっていったそうです。

「震災はもちろん大変でしたが、それがきっかけで地元の人間関係は深まったように思います。今まで個々に活動していたカフェやペンションなど自営業のかたがたが集まり、みんなで協力しあって那須を盛り上げていこうという雰囲気が生まれました」(和彦さん)
地域でのさまざまな交流も増えていった、とおふたり
地域でのさまざまな交流も増えていった、とおふたり



SNSもフル活用、今いちばんおいしい野菜を届けるために

那須に来て農業にかかわるようになってから、季節を意識することが多くなった、と陽子さん。〈那須高原こたろうファーム〉の特徴とは? と二人にきいてみると
「うーん、それはむずかしい質問だなあ」と和彦さんは困ったように考えた後「新鮮な旬のものをバラエティ豊かに提案できるってことかな」と答えます。

野菜の種類は今後もっと増やしていきたいそうですが、無理な作り方はせず、自然のままに伸び伸びと育った野菜の本当のおいしさをより多くの人に知ってもらいたい、と語ります。

「この土地の気候風土に合った、その時期その時期のいちばんおいしいものをご提供したいと思っています。野菜にも、自分たちにも無理をさせない、元気で健康的な野菜を作りたい。旬を知り、そのときのフレッシュなおいしさ、調理したおいしさ、食べたことのないおいしさなど、野菜本来のおいしさをもっと楽しんでもらいたい。うちは普通にはあまり売っていないわりと変わった野菜も多いので、そういう多様な野菜の魅力や、おいしい食べ方も伝えていきたいです」(和彦さん)

SNSの発信は主に陽子さんの担当。FacebookやX(Twitter)、Instagram、LINEなど各種SNSを駆使し、直売所オープン時は必ず並んでいる野菜の写真をUPします。畑の様子をストーリーズで紹介し、その時期の珍しい野菜やおいしい食べ方をnoteに記しています。
InstagramやFacebookで日々の情報を発信
InstagramやFacebookで日々の情報を発信

「たとえば出始めのズッキーニは、生のままでサラダにしたらおいしいんですよ。でも旬が過ぎたら焼いたほうがいいとか。おおまさりっていう品種のピーナッツはゆでるとホクホクして栗みたいに味が濃い。トマトで感動したのはプチぷよという品種で、皮がとても柔らかくさくらんぼみたいで、初めて食べた人はみんなおおって驚きます」(陽子さん)

野菜本来の魅力、旬のおいしさを伝えていきたい

最後に、これからやってみたいことについてきいてみると、まだ構想段階なんですが、と前置きして和彦さんは話します。

「いろいろとアイディアはあるのですが、その一つとして、料理人さんなどが畑に来て野菜を収穫し、その場ですぐ料理を試せるラボのようなスペースを作りたいと思っています。そのときの野菜を見て、インスピレーションで自由に試してもらって、自分のレストランに持ち帰ったときにそれをうまく生かせるしくみができたらいいなって」

また最近、地形の悪いエリアを活用してハーブ園も始めました。20種類くらいのハーブを育てているそうです。

「じつはここ1年くらいで自分でも料理を作るようになりました。レシピを見ると、フレンチでもイタリアンでもハーブをよく使うことがわかったんです。それまでは野菜の彩りしか考えていなかったんですが、料理を作り、味の組み合わせを考えることで、ハーブの大切さを大いに感じました。まだまだ勉強中ですが、お客さまにもより具体的に提供できるようになりたいと思っています」(和彦さん)

まだまだ進化を続けていきそうな〈那須高原こたろうファーム〉のこれからが楽しみです。

※ご本人以外の写真は那須高原こたろうファームのnoteよりお借りしました

文/江澤香織

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