12月は、小国町とオレンジページ本社をつないでオンラインツアーを開催。東京から移住し、つる細工作家として活躍されている『kegoya(けごや)』の熊谷茜さんや、地元出身で、自身の育てた食材を使ったおやつ屋さん『Naëbaco(なえばこ)』を営む川崎ひかりさんに、小国町の暮らしや、季節ごとの楽しみ方、自然との向き合い方などをうかがいました。 また、今でも現役のマタギとして活躍しつつ、民宿『越後屋』を営む本間さん親子が、マタギの歴史や暮らし、小国の食文化をご紹介。最後には、事前にツアー参加者に送ったやまがた地鶏で作った地鶏鍋を、それぞれの場所で楽しみながら、おなかも心も温まるオンライン交流会を行いました。
雪深い小国の冬を越すのに欠かせないのが保存食。春にとれた山菜を塩漬けや乾物にしたり、魚を寒風干しにしたりと、さまざまな工夫で長い冬を乗り切ります。そんな小国の保存食文化を紹介するためご登場いただいたのは、地元で暮らす「小国町シスターズ」こと木村さん・舟山さん・高野さんの仲よし3人組。小国の保存食を使ったおいしい料理を作って、その食文化について語ってもらいました。 乾燥させたぜんまいをもどし、くるみと少量の豆腐などをすり混ぜて作ったあえごろもであえた一品。ふっくらと柔らかなぜんまいに、くるみが香る濃厚なあえごろもがからんで絶品です。今回は、山で採った山ぐるみを使いました。
じつはこの乾燥ぜんまい、かなりの高級品。ぜんまいは、山の中の急斜面に生えるため、とりに行くのもひと苦労なんです。また、乾燥させるのもかなりの手間が。綿を除き、さっとゆでたのちに、天日干しにする→手でもんで水分を出す、という作業を何度も繰り返し、完全に乾くまでには1週間ほどかかります。
たかきびは、スーパーフードといわれるほど栄養価の高い雑穀。食物繊維が豊富で、腸内環境を整える効果や、美肌効果も期待できる食材です。ピンク色の見た目が美しく、粉にしてパスタやうどんなどの麺類にも加工されます。食べるときは、ゆでる・炊くなどの下ごしらえが必要ですが、一度にたくさん作って冷凍しておけば便利ですよ。
料理に使う山椒は粉でもいいと思いますが、ぜひ実を食べてみてほしい! 今回使った山椒の実は、しょうゆ漬けにして保存しておいたものです。また、小国では、ソフトにしんなどの魚の加工品を冬によく食べます。棒だら、ます、鮭などの加工品も多く、そのなかでも野菜と魚をいっしょに麹に漬けた『いいずし』という料理は絶品です。今回は紹介していませんが、機会があればぜひ一度食べてみて!
豪雪地帯・小国町ならではの冬の楽しみ方や遊びもご紹介。民宿『越後屋』を営む本間さんが作った巨大かまくらは、なんと8mもの高さ! 中をのぞくと、雪で作ったおひなさまや、内壁に施された数々の彫刻、ウェルカムドリンク(!)が冷やされている秘密の貯蔵庫などがあり、遊び心満載! また、中央にはスピーカーが。本間さんいわく、かまくらの中は音の反響がとてもすばらしく、ここで聴くジャズは最高なのだそう。 中継でつないだ『kegoya』では、2日間限定『雪のお城カフェ ~snow castle in oguni~』が開催中でした。雪で作られた幻想的なお城で、手作りスイーツを楽しみながらお茶会ができるイベントで、今年初めての試みなのだそう。4日間かけて作ったという雪のお城はもちろん、草花を閉じこめた氷の器やキャンドル、作家でこのイベントの企画者でもある熊谷茜さんが作った、つる細工のポットカバーなど、細かいところにまで、こだわりが詰まった素敵なカフェでした。
壮大な自然と雪深い冬、その中でよりよく暮らそうと生まれた数々の文化。昔から受け継がれてきたものや、今まさに生まれようとしている新しい文化に触れ、小国町のことをもっともっと知りたくなる旅でした。今回のオンラインツアーは、主に小国町の冬の暮らしをお届けしましたが、雪解けとともにいっせいに草花や山菜が芽吹く春、真っ白なブナの木肌が美しい神秘的な夏、ブナの森が赤く色づく秋など、冬以外の小国町も非常に彩り豊かで魅力的。ぜひ、気軽に旅に出かけられるようになったら、山形県・小国町を訪れてみてください。 協力/山形県小国町 取材・文/オレンジページnet編集部・持田 撮影/sono