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【編集マツコの、週末には映画を。Vol.117】『ジュゼップ 戦場の画家』

2021.08.20


こんにちは。ふだんは雑誌『オレンジページ』で料理ページを担当している編集マツコです。「アニメは子どもが見るもの」というイメージはもはや昔。むしろ、大人こそ見てほしいアニメーション映画がここ数年立て続けに公開されています(特集を組んで語りたいほど!)。
今回の映画も、間違いなくそのラインナップに加えたい作品。実在した一人の画家の姿を通して描かれた、苦しい時代を力強く生き抜いた人たちへのオマージュであり、彼らと現代の僕たちとのつながりを感じさせてくれる、バトンのような映画でもあります。アニメーションというスタイルに普段あまり触れていない人も、その美しさ、パワフルさにきっと魅了されるはずです。


旗の色や肌の色。その違いで人が線を引くのは、80年前も今もまったく変わりません。1939年、第二次世界大戦の開戦直前。内戦で難民となったスペイン人たちがフランスに渡り、収容所で暮らしていたことはこの映画を見て知りました。その中の一人だったのが、画家でイラストレーターのジュゼップ・バルトリ。フランシスコ・フランコ率いる独裁政治に対して反対し続けた、活動家でもあります。地面や建物の壁に絵を描きつづける彼に、紙とペンを差し伸べる心優しいフランス人憲兵・セルジュとの友情が、ストーリーの中心となっています。
強制収容所での憲兵による蛮行。見るに耐えないと感じながらも、人間の愚かさにどこか慣れてしまっている自分もいました。今この時代に世界で起こっていることと、何ら変わらないなあと。そんな状況でも、絵を描き続けるジュゼップ。その記録は、後に収容所の凄惨さを伝える貴重な資料となったそうです。抑圧されながらも、楽しみを探しながら生きる難民たちの姿は、戦時下における日々の小さな幸せを描いた邦画アニメーション『この世界の片隅に』を思い出しますね。


今作は時代ごとにいくつかのパートに分かれていて、それぞれタッチを変えて表現されているのが特徴。カラーの有無、線の濃淡などの違いが、そのままジュゼップの精神のありようを表しているのです。収容所での日々は心の荒涼を、その後メキシコに渡った時代は弾けるような解放感を。ときおり彼自身のスケッチや絵画もアニメ化されて登場します。


実はこの映画、現代からストーリーが始まります。年老いたセルジュが孫のヴァランタンに語る、ジュゼップと過ごした日々。リアルとフィクションが融合した74分のストーリーは、一体どこへ向かうのか。ラストは思わずジーンときてしまう、過去と未来をつなぐ心憎い展開が待っています。
銃の代わりにペンという武器を持って闘ったジュゼップ。世界中で祖国を追われる人の数が増え続ける今、僕たちはどう闘うべきなのでしょうか。


『ジュゼップ 戦場の画家』新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:ロングライド
©Les Films d'Ici Méditerranée - France 3 Cinéma - Imagic Telecom - Les Films du Poisson Rouge - Lunanime - Promenons - nous dans les bois - Tchack - Les Fées Spéciales - In Efecto - Le Mémorial du Camp de Rivesaltes - Les Films d'Ici - Upside Films 2020

【編集マツコの 週末には、映画を。】
年間150本以上を観賞する映画好きの料理編集者が、おすすめの映画を毎週1本紹介します。

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